[No.070-1]素顔のままで
No.070-1
「うわぁ!何だよそれ」
おそらく・・・化粧の途中と思う知美が視野に飛び込んできた。
「そんなに、おどろかへんでええやん」
「ごめん、びっくりしたから」
知美は普段、化粧はしていない。
本人は特に意識していないようだけど、素顔で十分イケている。
と言うより、素顔の方がいい。
これを口に出して、意識させるのも悪い。
同性から羨ましがられるだけで済まないこともある。
「化粧なんて珍しいな」
「これから仕事で人と逢うねん」
「それにしても、顔・・・真っ白だね」
(下地なのかな?)
「友達が、これがええねんってゆうから」
「せやけど、うち、化粧品に興味あらへんし」
それにしても、笑える。
真っ白な顔よりも、その顔のままウロウロしていることに・・・だ。
鏡を何度も覗き込んだり、何とも落ち着かない。
「あかん、全然似合わへん!」
「無理しなくてもいいんじゃない?」
「せやかて、撮影の時は化粧させられるんやもん」
(考えてみれば確かにそうだよなぁ・・・)
素顔は僕と逢う時だけのようだ。
| 固定リンク | 0
「(004)小説No.050~100」カテゴリの記事
- [No.080-2]暗闇からの目覚め(2009.09.06)
- [No.080-1]暗闇からの目覚め(2009.09.05)
- [No.079-2]心のスケッチ(2009.09.04)
- [No.079-1]心のスケッチ(2009.09.02)
- [No.078-2]上を向いて(2009.09.01)
コメント