[No.069-1]カウンターパンチ
No.069-1
「そうそう!」
「あった、あった!」
さっきから何度となく、この言葉を口にし、聞こえてもくる。
年代を問わず、昔話には花が咲く。
「あれから、10年たったんだ・・・」
冴子の言葉に、急に会話が止まった。
「あれれ・・・テンション下げちゃった?」
冴子が焦っている。
「違うよ。みんなもそう思っただけだよ」
千恵の言葉に、みんながうなづく。
入社当時のメンバーが研修のために集まった。
こんな機会は滅多にないし、最初で最後になるかもしれない。
その想いと時の流れが何とも感慨深い。
「でも、ちょっと残念よね・・・」
千恵のトーンが下がる。
理由は見当が付く。
今回の研修は、同期の女性社員のみの研修だ。
従って、男性の姿はない。
「伊藤君に逢いたかった?」
「ちょ、ちょっと!」
私の言葉に千恵が過敏に反応する。
同期は性別問わず、仲良くなることが多い。
ただ、千恵の場合、彼を見つめる目が完全に“乙女”だった。
昔話に花が咲くと、その内、恋バナに発展する。
そして“誰と誰が”の話題から、第1ラウンドが始まる。
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