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[No.63-2]傘

No.63-2

私達は、1年ほど付き合った。

出逢ってから彼の仕事は日を追うごとに忙しくなった。
(こんなに近くに居るのに・・・)
逢えない日々が続いた。
いつしか、ふたりの心は離れていった。

時を同じくして、プロジェクトチームはその役目を終え、彼は元の部署へ戻ることになった。

「出逢った時と同じね」
皮肉にも、急な雨はふたりの距離を一瞬縮めた。
「ごめん、もう行くよ」
彼は雨の中をひとりで走り出した。
残された私は、ただ行き交う人を眺めていた。

「ゆい・・・ゆいったら!」

良子の声に、現実に引き戻された。

「どうしたの・・・考えごと?」
「ごめん・・・うん・・・そんなとこかな」
雨は相変わらず降り続いていた。
「しばらく止みそうにないわね」
良子はあきらめ顔で、空を見上げていた。

「仕方ない・・・走ろうか?」
良子の提案に、私はうなづいた。

(今なら、泣いてもいいよね?)

走り出した私に、傘はいらない。

(No.63完)

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