[No.059-2]見えない文字
No.059-2
最初の一行を打ち終えた後、一気に文字を打ち込んだ。
彼女の悔しさを、文字に託した。
うまく言えない、うまく書けない。
ましてや、自分の物差しで彼女を量ることはできない。
彼女の決意に、胸が熱くなる。
『死ぬな・・・』
理由なんかいらない。
ただ、こうやって締めくくるしか僕にはできなかった。
(辛かったよね、悔しかったよね)
なぜだろう・・・。
大粒の涙と文字を打つ手が止まらない。
改行だけが、ただ打ち込まれて行った。
文字にできない想い・・・。
『あなたらしいね』
ほどなくしてから、由美から返事が来た。
たった一言だけの返事だった・・・あえてそうしたんだ。
そこには生きようとする力が溢れていた。
見えない文字に託して。
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