[No.59-1]見えない文字
No.59-1
由美には、不定期に過去の亡霊が訪れる。
その亡霊は時として、彼女に“死”を口にさせる。
「きれいごとよ!」
彼女に罵倒されたこともあった。
でも、“死”だけは否定し続けた。
そんな僕に、彼女は告げた。
『死ぬのはこわくない、でも悲しいよね』
死を覚悟する彼女に、否定できない何かを感じた。
メールの文字は、嫌になるぐらい冷静だ。
由美は分かっている。
死よりも、もっと辛いこと。
幸せになりたい・・・でも、幸せになれない・・・?
どうして・・・今でも・・・。
由美は、心の叫びを“悲しい”の一言にまとめた。
このまま死を選ぶことを、彼女自身も望んではいない。
”死を絶対に認めない”この気持ちに揺るぎはない。
でも、彼女自身は認めてあげたい。
『死を覚悟すること、すごいことだと思う・・・』
メールを打つ手が震えた。
| 固定リンク | 0
「(003)小説No.51~75」カテゴリの記事
- [No.75-2]追いつけない自転車(2009.08.25)
- [No.75-1]追いつけない自転車(2009.08.23)
- [No.74-2]シャボン玉(2009.08.22)
- [No.74-1]シャボン玉(2009.08.21)
- [No.73-2]Sensitivity(2009.08.20)
コメント