No.067-1
夜、繁華街を歩いている時、突然の閃光に襲われた。
「わ・・・」
驚きの声をあげる前に、閃光が続いた。
ただ、さっきより、光はやや上向きにそれている
何度目かで、ようやく状況が飲み込めた。
夜空にカメラを向け、シャッターを切っている。
その場所に私が重なっただけのようだ。
悪気はないけど、突然のフラッシュは誰もが驚くだろう。
それより・・・何を撮影しているんだろうか。
夜空なんて、珍しくもない。
驚きよりもそっちのほうが気になる。
次第に数人で空を見上げ、はしゃぎ声も聞こえ始めた。
『わぁ・・・すごいね!』
気になったので後で調べてみた。
それでようやく分かった。
あのフラッシュは、流星群に向けられていたんだと。
「あれから、もう三年たったのね」
突然の閃光は今日と同じ、帰省中でのワンシーンだ。
(No.067-2へ続く)
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No.066-2
私と彼との出逢いは奇跡じゃない・・・。
友人はそう言った。
「地球以外に生命体っていると思う?」
「今、答えないといけないこと?」
(恋愛の話なのに、どんな意味があるというの?)
友人の目は真剣だ。
「そ、そうね・・・いると想う・・・星は無限にあるから」
友人の気迫に負けた。
「地球を“奇跡の星”と呼ぶ人もいるわ・・・でも」
「本当にそうなんだろうか」
友人の言葉の意味を、何となくだけど感じる。
出逢いは奇跡でも、偶然でもない。
そう想える人と出逢えている事実・・・。
「いくらでも出逢いなんてあるのよ・・・それ・・・」
「・・・が、運命の人であっても・・・でしょ?」
友人の代わりに答えた。
(No.066完)
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No.066-1 [No.017-1]出逢いの歯車
出逢いは、偶然の積み重ね・・・。
短編のブログ小説にはそう書かれている。
そのサイトは、友人が教えてくれた。
もう二度と現れない運命の人・・・。
小説と同じように出逢い、そして歯車は約二年の後、外れた。
だからこそ、この小説に共感できる。
出逢いは奇跡に近い。
その気持は今でも変わらない。
そうなら、奇跡はもう起きない。
いつしか、恋を諦めている私に気付いた。
「そうじゃない」
その友人が、私を強い口調で責める。
「“出逢いの歯車”は間違っている」
友人から意外な言葉を聞いた。
「それに気付いて欲しかったの」
(No.066-2へ続く)
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No.065-2
「その前に“あなた”のことをいくつか当ててみましょうか?」
「面白そうね」
少し意地悪く答えた。
(新手のナンパ?)
例えそうであっても、暇つぶしには丁度いい。
その男性は、見事に“わたし”を言い当てた。
(何なの・・・この人・・・)
「どうして、私が地元の人だと分かったの?」
「この場所で写真を撮らない観光客は居ないよ」
なるほど・・・よく観察している。
「でも、私ひとりなのに、彼氏が居ると言ったよね?」
指輪はしていない。
ましてこんな所に、ひとりで来ている。
「“彼氏は居ない”と答えたら・・・口説くつもりだった?」
「それも良いですね」
男性は笑みを浮かべて答えた。
「でも、それじゃ、当たっていない」
確かにそうだ。
「じゃ、どうするつもりだったの?」
答えが気になる。
「“そんなことはない”と言います」
(どう言う意味・・・?)
「今、この瞬間に、彼氏が出来たでしょ!ってね」
「なに、それーって、もう!」
怒る気になれない・・・逆に、笑ってしまった。
「今なら、夜景を素直に見れるはずだよ」
(No.065完)
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No.065-1
歓喜の声が溢れている。
多分、ここに来れば誰もがそうなると思う。
ただ、少し条件が必要だ。
カップル・・・そして、夜・・・。
夜景を一望できるこの場所は、観光名所として有名だ。
街の灯りだけでなく、海には漁火が点々としている。
そのバランスが絶妙だ。
雑踏は全く聞こえない。
その静かさは、宇宙と一体化したような感覚だ。
私は、素直じゃない。
街を黒く塗りつぶして、偽りの輝きを見せる。
夜景なんてそんなものだ。
うそを隠して、見るものを騙している。
だから、昼間は、誰もここには来ない。
(本当は知ってるんでしょ?偽りだってこと・・・)
何度となく聞こえる歓喜の声に、問い掛ける。
誰もが役者なんだ。
“素直に喜ぶ”ことが台本に書かれている。
それをただ、演じているだけだ。
「何か、言いたそうな顔ですね?」
男性が声を掛けてきた。
私と同じ・・・ひとりのようだ。
「そうね、当ててみたら?」
苛立つ気持ちを、口にした。
(No.065-2へ続く)
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No.064-2
「おっはよぉー!」
「わっ!美佳・・・驚かすなよ」
背後から、急に声を掛けられた。
「朝のあいさつでしょ?そんな顔しないでよ」
「それより、はい。これ」
美佳から小さな紙袋を手渡された。
「何だよ、これ?」
「幹事のお礼よ、じゃあね」
そう言うと美佳は自分のデスクに戻って行った。
(へぇ・・・珍しいな・・・気を遣うなんて)
皆を飲み会に誘ったのは、僕だ。
そのお礼と言ったところだろうか・・・。
「わっ!」
朝から二度目の驚きだ。
紙袋の中には、見慣れたものが入っていた。
見慣れたものだけど、予想していなかっただけに驚く。
昨日、しゃべった記憶はある。
ただ、聞き流される程度の会話だった。
最近のお気に入りは、これだと・・・。
「美佳のやつ・・・ありがとうな」
紙袋の中には、きのこの山が入っていた。
(No.064完)
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No.064-1
たまには、いつもと違うメンバーで飲むのもいい。
仕事の話でさえ、違って聞こえる。
「ようやく、1年だよ」
僕を含めて、今日集まった3人は同じ職場で働いていた。
その内、それぞれが違う職場へと異動して行った。
「こんなこともあるんだね」
「そうだなぁ、まさか美佳がここに来るとはね」
自分が今の職場に異動した半年後に、美佳が続いた。
「で、俺がその2ヵ月後だったよな」
祐二が話を繋げた。
本社部門ともなれば、同じフロアであっても話す機会が少ない。
まして、フロアが異なれば、もはや別の勤務地とも言える。
「まぁ、とにかく再会に乾杯しようか」
一番年下の祐二が音頭をとった。
「でも、痩せたなぁ・・・苦労した?」
祐二が僕を見ながら、笑っている。
「おいおい、言葉と表情が合ってないぞ」
「まぁまぁそう言わずに・・・美佳もそう思うだろ?」
「どうせ、私は太りましたよ!」
それなりに苦労したから、痩せたのかもしれない。
考える仕事が増えたせいか、脳が疲れる・・・そんな感じだ。
甘いものが無性に欲しくなる。
「女子はね、甘いものは別腹なんだよ」
ひとりだけ、話が別方向へと進んだ。
(No.064-2へ続く)
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No.063-2
私達は、1年ほど付き合った。
出逢ってから彼の仕事は日を追うごとに忙しくなった。
(こんなに近くに居るのに・・・)
逢えない日々が続いた。
いつしか、ふたりの心は離れていった。
時を同じくして、プロジェクトチームはその役目を終え、彼は元の部署へ戻ることになった。
「出逢った時と同じね」
皮肉にも、急な雨はふたりの距離を一瞬縮めた。
「ごめん、もう行くよ」
彼は雨の中をひとりで走り出した。
残された私は、ただ行き交う人を眺めていた。
「ゆい・・・ゆいったら!」
良子の声に、現実に引き戻された。
「どうしたの・・・考えごと?」
「ごめん・・・うん・・・そんなとこかな」
雨は相変わらず降り続いていた。
「しばらく止みそうにないわね」
良子はあきらめ顔で、空を見上げていた。
「仕方ない・・・走ろうか?」
良子の提案に、私はうなづいた。
(今なら、泣いてもいいよね?)
走り出した私に、傘はいらない。
(No.063完)
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No.063-1
走り出し先を急ぐ人、立ち止まり雨宿りする人。
気にせず、そのまま歩き続けている人。
突然の雨に、街は様々な表情を見せる。
私はこうやって雨を避け、行き交う人を眺めている。
あの時と同じように・・・。
出逢った瞬間は、見ず知らずの人だった。
「秘書課の人ですよね?」
「えっ、はい」
仕事を終え、会社を後にした直後に雨に降られた。
私は、近くの建物に逃げ込んだ。
「Aプロジェクトチームの永田と言います」
(Aプロにこんな人、居たっけ?)
「誰、この人・・・って顔ですね」
「あっ、すみません」
「冗談ですよ、昨日赴任してきたばかりなんですから」
「でも、どうして私を知っているのですか?」
「社長に着任の挨拶に行った時に、チラッとね」
「そうなんですか」
「でも・・・名前は知らないよ」
「えっ!」
「一度も名前で呼んでないでしょ?」
確かに“秘書課の人”としか言われていない。
「ご、ごめんなさい・・・私、神崎ゆいです」
気が付けば雨の中、ひとつの傘で歩き始めた。
(No.063-2へ続く)
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No.062-2
六段のホットケーキを前に、せいじゅうろうがリラックスしている。
それぞれのシールを菜緒が組み合わせた。
「落としたんかな・・・」
あの粘着力では、その可能性もある。
「同じシールあったよね?」
「あるには、あるんやけど・・・」
確か、まだ同じシールを持っていたはずだ。
「ちょっと、顔が違うねん」
「同じシールだよね?」
「そうなんやけど・・・」
歯切れの悪い菜緒に、あることを思い出した。
手作りのせいもあるのだろう。
ストラップのせいじゅうろうも、微妙に顔の表情が違う。
これで、随分話が盛り上がった。
だから、菜緒にとっては、厳選された大切な一枚だったに違いない。
「見つかるといいね」
その矢先だった。
「おったぁ!こんなとこにおったで!」
どうやら、バックの中のポケットに落ちていたようだ。
でも、ホットケーキのシールは見つからなかった。
「お腹へったから、食べてしもうたんやね」
(そんなことは・・・・あるかもしれないな)
菜緒はせいじゅうろうを、ケータイの元の場所に戻した。
そして、新しいホットケーキのシールも貼った。
(No.062完)
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No.062-1 [No.007-1]せいじゅうろう
「あれ・・・どっか行ってしもうた」
菜緒はスクールバッグの中をゴソゴソと探し始めた。
「何か探しもの?」
「せやねん。せいじゅうろうがおらへんねん」
「これかい?」
俺は、菜緒と同じストラップをぶら下げている。
「ちゃうよ、それは付いてるし」
菜緒がケータイを見せた。
「それなら、ロフトで買ったもの?」
以前、プレゼントした手のひらよりもやや大きい、せいじゅうろうだ。
「それは・・ほら、ちゃんとあるねん」
「ほんとだ・・・って、えっ!持ち歩いてるの!」
(そう言えば「今度連れてくる」と言ってたな)
「で、どのせいじゅうろうが居なくなったの?」
「ここのやで。ほら同じやつ貼ったやん」
そう言うと、菜緒はケータイのキャビネットを指差した。
(ほんとだ・・・)
ケータイの上面部分に、リラックマのシールを貼り付けた。
多少膨らみがあるシールで、おそろいにした。
「確かに、粘着力は弱かったよな」
自分のケータイのせいじゅうろうも、よくズレていた。
今は強力なボンドで接着し直した。
「旅に出てしもうたかもしれへんなぁ」
(そんなことは・・・ないぞ)
一応、心の中で突っ込んでおいた。
(No.062-2へ続く)
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No.061-2
今から、夏までに“それなり”の彼氏を作ることは難しい。
(優奈に“秘策”があるとも思えないけど・・・)
「聞いたい?」
優奈の自信有りげな発言に、皆で顔を見合わせた。
「そ、そ、それはねぇ・・・」
(なんで私が、あたふたするのよ!)
「夏、我慢すれば、冬がくるじゃん」
「・・・」
「・・・終了しようか、この話?」
私の提案に、なぜか3人とも小さくうなづいた。
(優奈、あんたも・・・)
「仕方ないか、優奈だもんね」
夏は、容赦なくやってくる。
優奈の言うとおり、彼が居ない夏・・・確かに、そうなのかもしれない。
だけど、この4人には関係ない。
こうやって集まれるだけでも楽しい。
「こらぁ!優奈ぁ!」
全く怒っていない、友人の声が聞こえる。
夏・・・来るなら、来て見ろ!
(No.061完)
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No.061-1
20代後半を過ぎると、自由に集まれる友人が少なくなる。
結婚という第1便に、乗り遅れた私たち・・・。
「違うわよ、あえて乗らなかったの!」
私を含めて今日集まった4人に彼氏は居ない。
それなのに、集まれば彼氏の話が中心になる。
「これから夏だけど・・・」
「彼氏が居ないとしたら、夏と冬、どっちが寂しい?」
“不思議ちゃん”の優奈が話を切り出した。
「それだけじゃわかんないよ」
勘違いする前に聞いておいた方が良いみたいだ。
優奈曰く・・・。
冬になれば木々の葉は落ち、人々は寒さに凍える。
だから季節そのものが寂しい。
逆に夏は活動的だ。
街の雑踏、輝く海、青い空、白い雲・・・。
だからこそ、ひとりなら・・・孤独感が際立つ。
「まぁ・・・間違いじゃないわよね」
ただ、こんな前振りがあると、夏は俄然、不利だ。
(それでも、ここは話に乗ってみよう・・・)
「それで・・・夏をどう乗り切れと言いたいわけ?」
答えのその先を優奈に返した。
(No.061-2へ続く)
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No.060-2
「ねぇ、ねぇ・・・」
(来た・・・)
「男子から見た女子の“もてポイント”ってなに?」
男にとっては、面倒な話の展開だ。
美咲の目は興味津々で、瞳の奥に“乙女”が見える。
何か答えないと、長引きそうな雰囲気だ。
「そ、そ、そうだな・・・」
予想していたとは言え、答えに困る。
「明るくて、元気な所かな?」
「あかんよ、答えはひとつずつやで」
美咲がこちらを睨み付ける。
(まずい・・・本気のようだ)
「それに、それ自分の好みやろ?」
(完全に見抜かれている・・・)
とは言え、世間の男子を代表できるような意見は持っていない。
でも、何か答えないと、終わりそうにない。
「えっ・・・と、時間に正確な人・・・かな」
「ほら、待ち合わせに堂々と遅れる人、居るよね?」
美咲の顔色を伺う。
「まぁ、そやね・・・」
ようやく、美咲のツボは押えることができたようだ。
だけど、美咲は気付いているだろうか・・・。
結局、どれも美咲のことなんだと。
(No.060完)
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No.060-1
「身長はやっぱり高い方がええよ」
すっかり一般的になった、いわゆる“三高”のひとつだ。
美咲に言われるまでもない。
「もてポイントなんよ」
(モ・テ・ポ・イ・ン・ト?)
「なんだよ、そのモテ・・・なんとかは?」
「もてる、ポイント。略して、もてポイントやね」
なるほど・・・。
略して減った文字がひとつだけなのは、そっとしておこう。
それにしても、造語の作り方は現代っ子だ。
難なく、さらりと思い付く。
「あまり、実感したことないけどな」
確かに身長は高い方だろう。
だからと言って、それで“もてた”ことはない。
それ以外の要素も・・・と言うより、それ以外が重要なのかもしれない。
美咲は、いくつか“もてポイント”を話してくれた。
彼女がごく普通の女子代表なら、信憑性が高い話になる。
逆に、個性的すぎるなら、少し考えものだ
「じゃ、こんなのは?」
思い付く、もてポイントを美咲に話した。
「それ、ポイント高いやん!」
こんな話で盛り上がるのも、女の子らしい。
ただ・・・そろそろ、言われそうな気がする。
多分、そろそろ・・・。
(No.060-2へ続く)
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No.059-2
最初の一行を打ち終えた後、一気に文字を打ち込んだ。
彼女の悔しさを、文字に託した。
うまく言えない、うまく書けない。
ましてや、自分の物差しで彼女を量ることはできない。
彼女の決意に、胸が熱くなる。
『死ぬな・・・』
理由なんかいらない。
ただ、こうやって締めくくるしか僕にはできなかった。
(辛かったよね、悔しかったよね)
なぜだろう・・・。
大粒の涙と文字を打つ手が止まらない。
改行だけが、ただ打ち込まれて行った。
文字にできない想い・・・。
『あなたらしいね』
ほどなくしてから、由美から返事が来た。
たった一言だけの返事だった・・・あえてそうしたんだ。
そこには生きようとする力が溢れていた。
見えない文字に託して。
(No.059完)
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No.059-1
由美には、不定期に過去の亡霊が訪れる。
その亡霊は時として、彼女に“死”を口にさせる。
「きれいごとよ!」
彼女に罵倒されたこともあった。
でも、“死”だけは否定し続けた。
そんな僕に、彼女は告げた。
『死ぬのはこわくない、でも悲しいよね』
死を覚悟する彼女に、否定できない何かを感じた。
メールの文字は、嫌になるぐらい冷静だ。
由美は分かっている。
死よりも、もっと辛いこと。
幸せになりたい・・・でも、幸せになれない・・・?
どうして・・・今でも・・・。
由美は、心の叫びを“悲しい”の一言にまとめた。
このまま死を選ぶことを、彼女自身も望んではいない。
”死を絶対に認めない”この気持ちに揺るぎはない。
でも、彼女自身は認めてあげたい。
『死を覚悟すること、すごいことだと思う・・・』
メールを打つ手が震えた。
(No.059-2へ続く)
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No.058-2
「幸せになろうな・・・・」
後姿に声を出して、語りかけた。
その瞬間、彼女の右手がスッと上がり、Vサインを出した。
まるで、声が届いたかのようなタイミングだ。
そして、振り返り、僕を真っ直ぐに見つめた。
人ごみが、そして時間が止まった。
舞台のワンシーンが目の前に広がる。
真っ暗なステージで彼女だけに、スポットライトが当たっている。
「あ・り・が・と・う」
口がそう動いたように見えた。
そのまま、少し後ずさりしてから、やがて階段を駆け上った。
彼女とは“運命の赤い糸”で結ばれてる特別な仲じゃない。
あの日、見えない糸が絡んだ。
その糸は今でも解けない。
それに、二人とも解こうともしていないだけだ。
(No.058完)
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No.058-1
「じゃ、帰るね」
彼女を改札まで見送る。
改札に入る前に一度手を振り、入った後にもう一度手を振る。
別に決めたわけじゃない。
気付けばそれが見送りのスタイルになっていた。
人ごみの中でも、彼女は消えない。
ミニスカートに、スラッと伸びた素足が映える。
スクールバックを肩に掛け、ポニーテールで髪をまとめている。
歩くたびに、ポニーテールとミニスカートが小刻みに揺れる。
若い彼女が更に幼く見える。
僕は、いつもその後姿を見送る。
小さな背中で、大きな荷物を背負いながら生きてきた。
その力強さは今でも変わらない。
でも、どうしてだろう・・・。
表情の見えないはずの後姿に、言い知れぬ寂しさも感じる。
(No.058-2へ続く)
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No.057-2
『ごめん。言い過ぎた』
勇二から社内メールが届いた。
直接交渉がダメなら・・・彼のいつもの謝りパターンだ。
同じ職場と言うことを利用した作戦だ。
『今、仕事中だから後にしてくれる?』
これもお決まりの返事だ。
『分かった。本当に、ごめんYO』
(な、なによ・・・ごめんYOって?)
「変換ミスしてんじゃん」
(ごめんYO・・・って、ラップじゃないんだから!)
思わず、噴き出しそうになった。
狙って書いたなら、悔しいけど笑いのセンスは抜群だ。
『もぉー、許してあげるYO』
仲直りのチャンスは、今しかない。
(No.057完)
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No.057-1
「もぉー、許してあげるYO」
仲直りのきっかけは難しい。
意地を張れば長引いてしまう。
だけど、あっさり許してしまうのもしゃくだ。
「勇二はいつもそうなんだから!」
「いつも?そうじゃないだろ」
喧嘩の原因はいつも不明だ。
気が付けば、あることないこと・・・過去の出来事に触れることも多い。
でも、大変なのはその後だ。
いつも勇二の方から、折れてくれる。
それなのに、素直になれない私がいる。
仲直りのきっかけを失えば、気まずいだけなのに。
「ごめん・・・機嫌直せよ」
やっぱり、素直になれない。
結局、彼を許すことは出来なかった。
(また、やっちゃった・・・)
分かってはいるものの、いつもこうなる。
でも、仲直りのチャンスも不思議と巡ってくる。
(No.057-2へ続く)
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No.056-2
結局、何もイベントは発生しなかった。
怪しんだ彼がコンタクトしてくるかもしれない・・・そんな期待もあった。
けど、ただの“奇妙な行動”として終わった。
今考えれば、恥ずかしい気もする。
勢いに駆られたとは言え、他の手段もあったはずなのに。
「でも、分かる気がする」
珍しく静香が同意した。
「さっき、見た映画あるでしょ?」
もともと、この恋愛映画が話の発端だ。
「でも、全然話が違うわよ」
私は異議を唱えた。
「中身じゃなくて、アレよ、アレ」
「アレ?」
「エンドロールよ」
エンドロールが流れ終わった後に、後日談のようなシーンが流れた。
完全に終わった・・・でも、何かを期待せずにいられない。
恋愛はそんなもんだと思う。
逆転劇、うれしいサプライズ・・・。
あの時、私はそれを望む心境だったのだろうか。
「エンドロールか・・・」
私の行動に始めて理由ができたような気がした。
(No.056完)
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No.056-1
ポインセチアの花を置いた。
なぜ、そんなことをしたのか自分でも分からない。
当時、好きだったアーティストの歌詞に出てきた花だ。
名前の響きが良かった・・・ただ、それだけだ。
「それ、どこに置いたの?」
話の流れで高校時代の恋バナになった。
「彼のバイト先・・・ファストフード店の入り口よ」
「なんでそんなことしたの?」
「さぁ・・・今でもわかんないよ」
別に何かを隠しているわけではない。
なぜ、あんな行動に出たのか、今でも理由が見つからない。
花を置いた時、彼とはもう別れていた。
少しでも、自分の痕跡を残したかったのだろうか・・・。
「手紙とか付けた?」
「付けたよ。でも・・・」
「名無し・・・ってことね?」
「それに・・・」
私の名前は書かなかった。
それに、彼の名前も書かなかった。
「みんな悩んだんじゃない?」
誰から誰に対しての贈り物なのか・・・。
花言葉を考えた人も居たかもしれない。
(No.056-2へ続く)
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