[No.047-2]若葉の頃
No.047-2
そのうち、私が居てもお構い無しにやってくるようになった。
お互いが、無関心を装っている。
その空気がなんとも愉快だ。
ほどなくして、ヒナの鳴き声が聞こえるようになった。
見てみたいけど、私の存在が子育てに影響してはまずい。
多少、迷惑とも言える鳴き声が、逆に嬉しい。
風が心地よい。
ベランダなんて、最も近くて遠い場所なのかもしれない。
相変わらず、親鳥はせっせとエサを運んで来ている。
やがて若葉の頃、彼らは巣立って行った。
ベランダは急に静かになった。
「あれ?巣がない・・・」
「立つ鳥跡を濁さず・・・そんなわけないか」
そう思わせるほど、ベランダの隅は綺麗になっていた。
そう言えば、昨日、めずらしく強風が吹いていた。
主を失った巣が、飛ばされても不思議ではない。
『プルップゥゥ・・・』
次の日、ハトの鳴き声が聞こえた。
急いでベランダに出てみると、一輪の花が落ちていた。
「カスミソウ・・・だよね?」
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