[No.046-2]誰にも染まらずに
No.046-2
一人の男性と知り合った。
こんな私を隠し通すことができないのは分かっていた。
だから、正直に全てを話した。
彼は結婚しているので、さすがに一緒には住めない。
ましてやそんな関係も望んでいない。
私は、何でも相談した。
その度に、温かく応えてくれた。
彼は決して、自分の意見を私に押し付けようとはしなかった。
弱気だからじゃない。
「答えは自分の中にあるんだよ」
以前、彼が話してくれた。
自分を見つめ直すこと・・・。
自分を捨てることよりも、辛くて苦しい・・・。
「一緒に答えを見つけよう」
私の中の私を、彼も探してくれている。
でも、随分と彼を苦しめた。
定期的に襲ってくる感情の起伏を、時として抑えることができない。
それを彼にぶつけた。
その度に、私と一緒に泣いてくれた。
仕事の都合で離れてしまった彼から月に一度、はがきが届くようになった。
いつも、裏面は白紙のままで、何も書かれていない。
そこに、私は“今の自分”を書き込むことにした。
なんとなく、そうしたい気持ちに駆られる。
そして、年に一度、そのはがきを読みに来てくれる人がいる。
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