[No.043-2]モノクロ-ム
No.043-2
「奇抜さを狙ったのかしら?」
その女性が続ける。
「僕にはそう見えませんが、あなたは? 」
「どうかしら」
問いかけた本人が、答えを濁している。
単なるギャラリーではない、そう直感した。
この絵に何か想いを持っている・・・瞳の奥がそう物語っている。
僕の考えを察したのか、
「私がこの絵の作者だとお考えですか?」
と、女性が聞いてきた。
「どうでしょうか」
いたずらっぽく答えた後に、僕はこう続けた。
「作者は男性だと思いますよ」
「それに・・・その方は、もう・・・」
「・・・」
僕はあえて、その先を答えなかった。
女性の沈黙は、僕の答えが正しいことを証明したのかもしれない。
雲のない空と穏やかな海。
作者はそれを色褪せることなく、永遠に絵に残そうとした。
だから、あえて黒一色で描いたのだ。
見る者が、見る度に色鮮やかな青を重ねることを願って。
「お二人で見た、空と海はどうでしたか?」
「そうね、今でも胸に焼き付いているわ」
どうやら、僕の考えは正しいようだ。
「そして、彼はこの絵を送った・・・」
「えぇ、そうよ。この絵を見る度に思い出すわ」
女性の瞳には空が、溢れる涙には海が見えた気がした。
そう、真っ青な空と海が。
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突然、失礼しました。
hRzNIgMy
投稿: hikaku | 2009年5月30日 (土) 23時49分