[No.043-1]モノクロ-ム
No.043-1
その絵画は、モノクロで描かれていた。
それも黒一色でだ。
上側は薄く、下側は濃く塗られている。
それぞれに若干の濃淡が付けられているが、一見すると何が描かれているのか、分からない。
『雲のない空と穏やかな海』
絵画のタイトルを見て、ようやくそう見えてくる。
雲のない空・・・。
青く澄み切った空には、雲の欠片さえ見当たらない。
だから、薄い青一色なのだろうか。
穏やかな海・・・。
風がやんだ海には、波の鼓動が聞こえない。
だから、濃い青一色なのだろうか。
作者の心には、その景色がどのように届いたのだろう。
そして何を感じたのか・・・。
この絵には、静寂を感じる。
とても長い一秒を刻みながら、ゆっくり時が流れているかのようだ。
(それにしても・・・なぜ、モノクロなんだろう?)
「そんなに気になりますか?」
突然、一人の女性が話しかけてきた。
| 固定リンク | 0
「(001)小説No.001~050」カテゴリの記事
- [No.050-2]オレンジ色の明日へ(2009.06.17)
- [No.050-1]オレンジ色の明日へ(2009.06.16)
- [No.049-2]上手な恋の忘れ方(2009.06.15)
- [No.049-1]上手な恋の忘れ方(2009.06.14)
- [No.048-2]昨日のセンチメンタル(2009.06.12)
コメント