[No.040-2]転校生
No.040-2
放課後、部活が終了し、なにげなく立ち寄った教室に矢島が居た。
(こんな時間に何しているんだろう?)
いつもは、授業が終われば、さっさと帰ってしまう。
当然、クラブ活動はしていない。
茜色の空が、教室いっぱいに広がっている。
彼女は、それに包まれるかのように、自分の席から外を見ている。
「なぁ、矢島・・・」
つい口に出てしまった。
これから何を話せばよいのか、考えもしていないのに。
「なぁに?」
「えっ!」
彼女が返事をした。それも、やさしい笑顔で。
「あ・・・うん、綺麗な夕焼けだね」
「そうね」
会話は途絶えた。
でも、何とも言えない幸せな時間が、僕だけに流れた。
それから、先に彼女が教室を後にした。
校庭を歩く彼女の影は、僕に届きそうな位、長く伸びている。
(そう言えば、矢島は何してたんだろう?)
結局、肝心なことは分からずじまいだった。
クラスに一人とは言わないけど、学年に一人は居ると想う。
彼女のように、浮いた存在の女の子。
そして、そんな彼女を好きになる男子が。
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