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[No.035-1]ルナの涙

No.035-1

休日の午後、海辺のカフェテリアへむかった。

潮の香りが私を向かえてくれる。
海風が私の中を、何度も通り過ぎていく。
遠くに聞こえる人のざわめきに、フォーカスは合わない。
でも、今の私には何もかも心地よい。

(お客様・・・お客様・・・)

「お客様・・・そろそろ閉店になりますが?」
「うぅん?あぁ・・・す、すみません!」
急に現実に引き戻された。
風は止み、海はいつの間にか、オレンジ色の穏やかな表情を見せていた。
「あまりにも、気持ちよく眠られていましたので」
店員の男性はそう言うと、温かいコーヒーを運んで来てくれた。
「これ・・・?」
「初夏とは言え、これからの時間帯は肌寒いですから」
彼は、そう告げると店の奥へ消えていった。

見渡すと、もう他にはお客さんは居ないようだ。
(ヤダ・・・悪いことしちゃったかなぁ)
それでも、コーヒーの香りが私をここに引き止める。

「あったかい・・・」
押さえていた気持ちが、涙となってあふれでた。

(No.035-2へ続く)

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