[No.033-1]夕焼けは晴れ
No.033-1
夕焼けは晴れ、朝焼けは雨・・・。
いつからだろうか。
夕焼けを見ると、最初に頭の中に浮かぶ言葉だ。
「あした、晴れるね」
美沙も同じことをよく口にする。
ある日、美沙に聞いた。
「どうして晴れるのか、知ってる?」
「ううん、知らないけど」
美沙の目が、その答えを求めているように見えた。
「実は、僕も知らないだ」
「な~んだ、頼りにならないわね」
言葉とは裏腹に、笑顔で応えてくれた。
気象的に、確立はそんなに高くないらしい。
本当は、晴れる理由も、雨になる理由も知っている。
「夕焼けを見るとね、元気になるんだ」
「どうして?」
「だって、明日、絶対晴れるんだもん!」
美沙が以前、話してくれた。
彼女にとって、“明日”はそんなに簡単に訪れるものではない。
明日を予感させる、今日の終わりに一喜一憂する。
「ごめん、ごめん。理由は調べておくよ」
「約束ね!」
「分かった。じゃ、また明日来るね」
僕は病室を後にした。
| 固定リンク | 0
「(001)小説No.001~050」カテゴリの記事
- [No.050-2]オレンジ色の明日へ(2009.06.17)
- [No.050-1]オレンジ色の明日へ(2009.06.16)
- [No.049-2]上手な恋の忘れ方(2009.06.15)
- [No.049-1]上手な恋の忘れ方(2009.06.14)
- [No.048-2]昨日のセンチメンタル(2009.06.12)
コメント