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[No.031-1]もしも、あの時

No.031-1

『もしも、あの時』

週刊誌の見出しに興味をそそる文字が並ぶ。
これが主題のドラマや小説は少なくない。
誰にでも戻りたいと思う、瞬間があるだろう。
それも、一つや二つではないはずだ。

もしも、あの時・・・。

考え始めたらきりがない。
それに、自分に都合良く考えてしまう。
(きっと・・・こうなんだ、こうなったんだ!)
現実が辛ければ辛いほど、妄想は美化されて行く。

「由紀子はどうなの?」
「なによ!唐突に・・・主語がないわよ」
(いけない・・・)
「ごめん、ごめん。主語は頭の中だったわ」
「もう、早苗らしいけど・・・考えごと?」
由紀子に“もしも”を話した。

「そうね・・・」
「私だって、戻りたい瞬間はいくらでもあるわ。でも・・・・」

由紀子はしばらく黙ったままになった。
「なにか・・・思い出させてしまった?」
「ううん、そうじゃないけど」

否定とも肯定とも言えない返事が帰ってきた。

(No.031-2へ続く)

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