[No.24-1]一人だけの入学式
No.24-1
「今から、駅に向かうよ」
「分かった、僕もすぐに向かう」
「私ね、つらいことがあると、ここに来るの」
美紀の目は赤く、腫れている。
明らかに泣いた跡だ。
つらいことを聞くべきか、ここに来る理由を聞くべきか迷う。
(でも、“ここ”とは何処なんだろうか?)
駅は単なる待ち合わせ場所に過ぎない。
「この周辺に何か想い出でも?」
美紀に聞いてみた。
「小さい頃、住んでいたことがあるの」
でも、その言葉になぜかノスタルジーを感じない。
「この近くにね・・・音大があるの」
美紀はそう言って、寂しそうな表情を浮かべた。
でも、そもそも、夜の学校で何をしていたんだろう。
その涙に、さまざまな想いが駆け巡る。
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