[No.012-2]卒業
No.012-2
高校中退の事実、どうしてもこれが重くのしかかる。
それも、経済的な理由だったから余計に辛い。
「みんなは・・・卒業したんだろうな」
つい声に出てしまった。
でも、それをかき消すかのように、電車の音が響いている。
窓に映った自分の顔が、妙に寂しそうに見えた。
「ねぇ、私の卒業ソングってあるかな?」
窓に映った自分に話しかけてみた。
(その顔は・・・そうよね、やっぱり、無いよね)
「奈美も来ない?」
短い高校時代の唯一の友達から連絡が入った。卒業以来の同窓会の誘いだった。
「ねぇ、奈美の卒業ソングってなに?」
一年前に聞いたセリフと同じだ。
「たくさん、あるよ」
「えっ!たくさん?」
寛子は少しびっくりしたような表情を見せた。
「そ、たくさんあるの」
同窓会のあの日、かつてのクラスメート達が、私のために卒業ソングを歌ってくれた。
自分が想う、それぞれの卒業ソングだ。
私はそれらをつなぎあわせて、その日、卒業した。
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