[No.009-2]リグレット
No.009-2
「僕も同じです」
そう言って彼は色褪せた一枚の色紙を見せてくれた。
「あ!これは・・・」
色紙にはさっきの歌詞が書いてある。彼はこの色紙を、露天商から貰ったものだと話してくれた。
話によれば、色々な格言めいた自作の言葉を売っていたらしい。
「この一枚が妙に気になってね。それに・・・」
「それに?」
「これをきっかけに、夢だったミュージシャンを目指したんだよ」
彼は、照れくさそうに話した。
「私ね、ずっと自分にうそをついていたことがあるの」
彼の話に呼応するかのように自分の夢を語った。
「君にあげるよ」
別れ際、彼からあの歌をもらった。どれくらいしてからだろうか、彼をテレビの中で見かけるようになった。
「ココロのしおり」は、大人向けの絵本としては異例のベストセラーを記録した。あの歌詞が私の夢を後押し、人生を変えた。
(なんだろう・・・この感覚・・・)
何となく手にした話題の本に、こころが揺れた。
(私の言葉が、まだ生きているのね)
本をゆっくり閉じた。
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