[No.008-2]銀河鉄道の夜
No.008-2
(聞くんじゃなかった)
会社の女子社員達はそれは旅行だとか、宝飾品だとか、ここぞとばかりに無責任な発言を繰り返す。
(それって自分達の希望だろ?)
「あ、ありがとう。参考にするよ」
とにかく、この場は退散したほうが良さそうだ。
(あと、2日か)
行きつけのバーで一人グラスを傾けながらも、あせる気持ちがグラスに伝わる。
ここ数日、奈々子との出逢いから今日までを何度も振り返った。
“銀河鉄道の夜”につながるキーワードが隠されていると信じたからだ
様々な二人だけのイベントを想い出す。
(そう言えば、よくケンカもしたよな)
「あの時、奈々子に平手打ち喰らったよな、アハハ」
(おい、おい!今は懐かしんでるときじゃないだろ!)
自分で自分に突っ込みを入れた。
「ご飯、美味しかったね!」
「そうだね」
いつも通りの会話が続く。
「21歳の誕生日おめでとう、奈々子。プレゼントはもう渡したから」
「うん、もらったよ」
それっきり、僕と奈々子は無口になった。気まずいわけではない。
奈々子にプレゼントを渡すことができたからだ。
奈々子もそれに気付いてくれた。
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