[No.005-2]堕天使
No.005-2
「知ってるよ」
「えっ・・・」
「何となく気づいてた」
彼は笑顔でこちらを見た。
「愛ちゃんが、自分の過去を話し始めたころからね」
彼は続けた。
「生きていてくれて、ありがとう。それだけで十分だよ。他に何が必要なんだい?」
それっきり、彼は何も話さず、ただ黙って私を抱き寄せた。
頬に涙が落ちた・・・私より早く、彼の涙だった。
「私ね、堕天使なんだって」
「天使は天使でも、地に落ちた天使なんだよ。前の彼に言われた・・お前は・・・お前は堕天使だって・・・」
声が震えた。
過去の辛い経験がフラッシュバックして行く。
「生きる場所が変わっただけじゃないか・・・空を舞う天使が、地上に降りただけだよ」
彼は私を真っ直ぐの瞳でみつめた。
「例え、堕天使として地上に落ちたとしても、自分の足で歩き、そして生きている。そうだろう、愛?」
「うん」
私は小さくうなずいた。
「これからは二人で歩いていこう」
彼はまた笑顔を返してくれた。
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