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[No.005-1]堕天使

No.005-1

「おまえは堕天使だよ」
前の彼は、私をこう呼んだ。結果的に、これが別れの言葉となった。

私が風俗嬢として、この世界に飛び込んでから、2年が経とうとしている。
両親は私が小さい頃に離婚した。それから母親は何度となく離婚と再婚を繰り返した。
産みの父親の記憶はない。

高校は経済的な理由で1年で中退し、その後、家を飛び出した。
様々な仕事をしながら、必死の思いで前向きに生きてきた。
でも、中学時代のいじめと母からの言われ無き虐待の記憶は、そう簡単に私を開放してくれなかった。
その苦しみから逃げるために、何度か手首を切った。
手首の傷もまた、今でも私を苦しめる。
それでも、通信制高校を卒業し、専門学校へ通った。
この頃、スカウトされモデルの仕事を始めた。ただ、学校に通いながら生活するためには、仕事は選べなかった。

「私、今はモデルじゃないの」

いつか彼に言わなきゃいけない言葉を今、口にした。
言い寄る男性は多かったが、本当の私を受け入れてくれる人は誰もいなかった。
私の仕事だけでなく、私自身を否定され、その度に別れを経験した。

(No.005-2に続く)

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