[No.004-2]パンドラの箱
No.004-2
「あっ・・・雨」
“天気予報”は当った。占い師ではなくても、私だって当てることはできる。
と、同時に携帯の着信音が鳴った。こんな時間に会社から電話だ。
「あ・・・はい、水島です」
「何やってんだ!吉田商事様からサンプルが届いていないと苦情が入っているぞ!」
夜の街に響かんばかりの佐々木部長の怒鳴り声だ。
(あっ!しまった)
「申し訳ございません。うっかり・・・」
「ばかやろう!言い訳する暇があったら、今すぐにサンプルを届けてこい!」
それからも、占いで告げられた“悪いこと”が2、3日続いた。
さすがに、占いの結果を信じずにはいられない。私はあの占い師が居た、商店街の片隅へ向かった。
そこに占い師の姿はなかった。
「そんなに都合よくいかないか」
期待していただけに、ショックも大きい。
「いぃ、い、居ないのか・・・?」
見知らぬ男性が息を切らせながら、つぶやいた。直感的に、占い師を探しているように見えた。
「占い師をお探しですか?」
私は声を掛けてみた。彼は多少、驚きの表情で小さくうなづいた。
(水に注意と出ています)
「え!」
「どうした・・・今日子?」
「うんん・・・聞き覚えのあるセリフが耳に入ったから、ちょっとね」
道の片隅で占い師が女性を相手にしている。
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