[No.003-2]過去へのゴミ箱
No.003-2
(誰なの・・・!?)
会場内を目だけで追う。
試験会場に知り合いは居ないはずだ。
でも、その伝言は、頬の痛みとは裏腹に、私の心を刺激した。
(そうだ、私には夢があったんだ!)
『もし、タイムマシンがあったら、未来の自分にお疲れ様と言ってあげたい。きっと、イベントプランナーとして、成功していると想う。幼くして、母を亡くし、父の苦労も相当だった。
そんな父のためにも、一人前の社会人として頑張っている自分にエールを送りに行きたい・・・』
何とか、終了時間の11時までに、書き上げることができた。
皮肉なことに入社試験に落ちたことで、私の夢は叶った。
こうして、イベントプランナーとして活躍している。時々、あの時を思い出し、“夢は何?”と、同じ伝言を書いてしまう。
「陽子・・・陽子ったら!何、ボケッとしてるのよ!会議に遅れるよ」
「ごめん、亜紀。今、行くから」
私は、その紙の切れ端を丸めて、ごみ箱へ投げつけた。
「ん?入ったような、外れたような・・・まぁ、いっか」
(もうすぐ11時になっちゃう・・・急がないと)
私は足早に会議室へ向かった。
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