[No.002-2]非常階段のシンデレラ
No.002-2
「僕らを見ていたんだ・・・」
うなだれるように、視線を足元に落とした。
(何か書いてある?)
階段に彫ったような跡がある。それを目で追う。
「・・・0・・・8・・・0・・・6・・・」
この後に7桁の数字が続いている。
「ケータイの番号!?」
なぜだか分からないが、この数字は彼女のケータイの番号だと決め付けた。
そう思い込むと、行動を起こさずにはいられない。
5度目のコールの後、電話がつながった。
「・・・。・・・」
言葉に詰まる。それ以前に彼女のケータイかどうかもわからない。
不安が強まり、ますます言葉がでない。
「あなたを見ていた」
先に向こうから、話かけてきた。
「えっ!・・・」
返事を返す間もなく、電話は切れてしまった。これ以降、2度と電話が繋がることはなかった。
卒業式の帰り、僕はもう一度この場所に座った。
「あの時・・・以来だな」
2年前と何も変わらない景色が広がる。
ただ・・・ただ一つ“卒業おめでとう”と彫られた文字が増えたのを除いて。
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