[No.02-1]非常階段のシンデレラ
No.02-1
彼女は教室の窓から見える非常階段にいた。
屋上から数えて2段下がった、いつもの場所に座っている。
その彼女が同じクラスだと言うことを、入学してから随分後になってから知った。
僕が知る限り、彼女は一度も教室に来たことはない。
登校すると、そのまま非常階段に直行し、いつも12時頃に消えてしまう。
“非常階段のシンデレラ”
いつしか彼女は、皮肉めいたあだ名で、そう呼ばれるようになった。
「退学した」
担任は、たった一言だけ告げた。一瞬、教室の時が止まる。だが、再び動き出すのにそう長い時間を必要としなかった。
(向こうからは何が見えていたんだろうか・・・)
担任の一言は僕を非常階段へと向かわせた。
彼女と同じ場所に座る。
僕の教室が見える。いや・・・正確には僕の教室しか見えない。
階段を一歩下がっても上がっても、周りが邪魔をして向こうがよく見えない。
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