カテゴリー「(036)小説No.876~900」の50件の記事

[No.900-2]暖かくなると・・・

No.900-2

「遠回りする?」

手で払いながら、通れないことはない。
けど、まれに見る大群だ。

「も、もちろん!」

来た道を引き返す。

「何とかしてほしいよね?」
「あぁ・・・」

とは言え、あいつらの発生を抑えることは難しい。

「まぁ、こんな日はおとなしくしてることだな」

出歩くから遭遇する。
ならば、出歩かなければいい。

「予想もできるわけだからさ」

気温の変化が大きいと出てくるのは分かっている。

「それに川のそばを通らなければいい」

やつらは水辺を好むみたいだ。

「そう言えば、何で急に出掛けようなんて・・・」
「だって、朝から暖かかったでしょ?」

なんだよ・・・同じじゃん。
S900
(No.900完)
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[No.900-1]暖かくなると・・・

No.900-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁー!!」
「もぉ!ちょっと早くなぃ?」

彼女が隣でもがいている。
原因はアレらしい。

「確かに」
「多分、今日が暖かいからだろ?」

専門家じゃないから、正しいとは言えない。
ただ、経験的にそう言える。

「こいつらさぁ、季節の変わり目に出てくるだろ?」

ある意味、分かりやすいやつだ。

「いい迷惑よ!」
「服や髪にも・・・ほら・・・」

蚊のような小さな虫が、点々とくっ付いている。
名前は特に知ろうとは思わない。

「取ってあげるからさぁ」
「機嫌直せよ・・・」

気持ちは分かる。
口や目に入り、その気持ち悪さは半端ではない。

「それにしてもやけに多いな」

視線の先に、群れを成しているのが分かる。

(No.900-2へ続く)

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[No.899-2]YATAI

No.899-2

「初めてみた・・・」
「・・・俺も」

昔のテレビドラマに出てくる定番中の定番の屋台だ。
土台がリアカーゆえに、もちろん人力で動いている。

「でも・・・すごくうまそうに見えるよな」
「それは言えてる」

少し離れた位置からでも、湯気が上がっているのが見える。
それだけでも食欲をそそる。

「雰囲気がそうさせてるんだろうな」

多分、“本当の味”自体はそう期待できない。
けど、雰囲気という魔法の調味料が加われば・・・。

「そして、年老いた主人が・・・」

会話に割り込むでもなく、聞き流すのでもない。
そこに、独特の時間が流れて行く。

「・・・まぁ、ドラマ・・・ではね」
「だな」

期待がどんどんと膨らんでくる。
加えて、一人前の大人になった気もする。

「じゃ、入るぞ!」

勢いよく、かざり程度の、のれんをくぐる。
そこにはファンキーな若者が一人立っていた。
S899_2
(No.899完)
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[No.899-1]YATAI

No.899-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「・・・近くない?」
「みたいだな」

久しぶりに、あの定番のメロディを聞いた。
今も昔も変わらないようだ。

「どうする?」
「なによ、誘ってるの?」

会社帰り、偶然、違う部署の同期と出会った。

「腹が減っただけだよ!?」
「あら・・・そぉ?」

あからさまに言われるとそれはそれで寂しい。
相変わらず、乙女心を分かっていない。

「で、どうする?」
「そうね・・・」

そうこう話している内に、どんどん音が近づいて来る。
仕方ない・・・。

「まぁ、その誘いにのってあげるわ」
「だから、そうじゃなくて・・・」

あの頃と変わらない、青臭い会話が続く。

「ほら、見えてきたわよ」
「ほんとだ!」

驚くほど、ノスタルジックな屋台が少し先で停まっていた。

(No.899-2へ続く)

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[No.898-2]見送る背中

No.898-2

「じゃぁ、俺も行くわ」

仕事の都合で今日から遠距離恋愛が始まる。

「見送りはいいから」
「・・・うん、分かった」

どこで見送られようが、場所は関係ない。
一秒でも一緒に・・・という時期は良い意味で過ぎている。

「向こうに着いたら連絡するよ」
「気をつけてね」

シチュエーションは違うが見送られるとはこういうことだ。
さっきの母親と同じように彼女もきっと・・・。

(もう少し歩いてから振り向いてみるか・・)

期待を膨らませて、さりげなく振り返る。

「・・・え・・・えぇ~!!」

そこに彼女の姿はなかった。
悲しいけど現実はこうなのかもしれない。

「いってらっしゃいぃ!!」

どこからともなく彼女の声が聞こえてきた。

「ここよ、ここ!」

マンションの廊下から彼女が手を振っている。

「ここからなら、遠くまで見送れるでしょ!」
S898
(No.898完)
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[No.898-1]見送る背中

No.898-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「いい光景ね」
「・・・そうだな」

とある母親が玄関先で、遠くを見つめている。
その視線の先は、多分、歩いている女の子だろう。

「中学生かしら?」
「そんな感じだね」

女の子は振り向きもせず、前を向いて歩いている。
母親のことは気付いているのだろうか・・・。

「難しい年頃だからね」
「逆に“ウザイ”って感じてるかも」

何となく自分の経験を重ねているように聞こえる。

「君もそうだった?」
「・・・どうだろうね」

女の子が曲がり角を曲がる。
それを見届けてから、母親は家に入っていった。

「いいお母さんね」

いつかその女の子も気付くだろう・・・。
そう言いたげな表情が印象的だ。

「あぁ・・・」

見守られているとは、まさにこんなことを言うのだろう。

「ふぅ~」

なぜだか、一度深呼吸したくなった。
今朝はやけに冷え込む・・・吐く息がいつにも増して白い。

(No.898-2へ続く)

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[No.897-2]とぼけた顔して

No.897-2

「じゃぁ、どんなところ?」

やんわりと詰め寄ってくる。
こうなるともう話題を変えられない。

「そ、そうだなぁ・・・」

ただ幸いなことに、好きなところは山ほどある。
問題は何を選ぶかだ。

「早く言いなさいよ」

まず、気が強いところが挙げられる。
そのせいか良くも悪くも毎日にぎやかだ。

「そう、せかすなよ」

そんな性格でも、ユーモアに溢れている。
そこが一番好きなところかもしれない。

「じゃあ、言うけど・・・」

ちょっと古めだけど、有名な歌で試してみよう。

「とぼけた顔してババンバ~ン!」
「バンバンババババ・・・」

思った通り、僕の“フリ”に乗っかってきた。

「なによ!急に?」
「言ったよ、好きなところ」

僕が歌うと続けて歌い始める・・・そんなノリが好きだ。

「ケンカ売ってる?“とぼけた顔”が好きだなんて!」
S897
(No.897完)
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[No.897-1]とぼけた顔して

No.897-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「付き合って、もう5年になるわね」
「そ、そうだな・・・」

いずれ来るかとは思っていたが、今・・・来たようだ。
覚悟を決めよう。

「僕もそろそろかな・・・と」
「バカね・・・違うわよ」

どうやら、僕が考えているような話ではないらしい。

「てっきり、アノ話しかと・・・」
「その気なら、してもいいけど?」

いじわるく返してきた。

「勘弁してくれよ」
「まぁ、いいわ、今回は」

勘違いから思わぬ展開に発展しそうになった。
でも、いずれキチンと話したいとは思っている。

「ねぇ、私のどんなところが好き?」
「なんだよ・・・急に」

やましいことは何もないが、心の準備も必要だ。
男にとってこの手の質問は。

「何か問題でも?」
「そうじゃないけど・・・」

果たして、彼女が望んでいる答えになるのだろうか?
答えによっては面倒なことになる。

(No.897-2へ続く)

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[No.896-2]グライコ

No.896-2

「・・・何よ?」
「鳩が豆鉄砲・・・みたいな顔をして」

(今、“グライコ”の話をしているよな?)

自分で自分に問い掛けてみた。

「い、いや・・・今さぁ・・・」
「グライコの話、してるよな?」

今度は口に出して確認してみた。

「最初から、そうでしょ?」
「・・・そ、そうだな」

何がなんだか分からなくなってきた。

「父親から譲り受けて」
「インテリアとして使ってたわ」

レトロ好きな彼女らしい。
必要以上の重厚感がいかにも“昔”だ。

「グライコ、知ってたんだ・・・」
「知らないと思ってたんでしょ?」

僕の思い込みが、話をややこしくしてしまった。

「で、そのグライコがなに?」
「・・・何だっけ・・・な」
S896
(No.896完)
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[No.896-1]グライコ

No.896-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なぁ、グライコって知ってる?」
「もちろん!」

彼女が元気よく答えた。
けど・・・多分、勘違いしているだろう。

「・・・どう思う?」

どうとでもとれる質問で確認してみた。

「どう・・・って、私は好きよ」
「あなたは?」

やはりそうだ。
ファストフードのアレと勘違いしている。

「僕も好きだよ」

今の時代、音楽はスマホで聴く時代だ。
ミニコンポどころかラジカセすら見かけない。

「同じでよかった!」

僕らの時代、“グライコ”は憧れの的だった。
特にバーが表示されるタイプはワクワクした。

「懐かしいね!」
「・・・懐かしい?」

確かアレは毎冬、販売していたと思うが・・・。

(No.896-2へ続く)

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