カテゴリー「(033)小説No.801~825」の50件の記事

[No.825-2]ペパーミントグリーン

No.825-2

「そんなに気になる?」
「だって・・・」

彼女がパラパラとアルバムをめくり始めた。

「ほら・・・他にも結構、写ってるのよ?」
「・・・ほんとうだ」

程度の差はあれど、結構、それが写っている。
さっきの一枚はその代表だ。

「男の子では珍しくない?」

寝る時も一緒だった。、
むしろ一緒じゃないと眠りにつけなかった記憶がある。

「けど・・・だんだんと減ってくるのよね」

小学校に入学してからは、それが全く写っていないと言う。

「確かに・・・」

興味の先が変わったのか、単に飽きたのか・・・。
それにもう、ぬいぐるみの歳でもないだろう。

「で、そのロバ君はどうなったの?」
「・・・ごめん、さすがに覚えてない」

気付けば無くなっていた。
いや、無くなったことさえ、意識したこともなかった。

「そうなんだ・・・でも、だからなんだ?」
「・・・なにがだよ?」

彼女が、ドヤ顔で質問してきた。

「ペパーミントグリーンが好きな原点はここにあったのね」S825
(No.825完)
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[No.825-1]ペパーミントグリーン

No.825-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ちょっと聞いていい?」

昔のアルバムを見ていた彼女が、話し掛けてきた。

「いいよ、なに?」

一枚の写真を指差す。

「あぁ・・・これね、3歳くらいかな?」

姉と一緒に撮った写真だ。

「これがどうしたの?」

ペパーミントグリーンのぬいぐるみを片手に、僕は満面の笑みだ。

「ほら、ここに・・・」
「まさか・・・そうなの!?」

まだそんな季節ではない。
けど、それは季節に関係なくやってくる。

「あのね・・・」
「これよ、こ・れっ!」

ぬいぐるみを指差す。

「なんだぁ・・・ぬいぐるみだよ、ロバの」
「馬じゃなくてロバなの!?」

当時、子供向けの番組にロバのキャラクターが居た。
その影響で、ロバを好きになった。

「とは言え、これが本当にロバどうかは分からないけどね」

正直、今見てもロバかどうか、分からない。

(No.825-2へ続く)

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[No.824-2]恋の残骸

No.824-2

「ただ、今回は・・・」

落ちる瞬間を目撃し、それを手にとってしまった。

「口は悪いけど、事故に巻き込まれた気分」

とにかく、どう処理すれば良いのか分からない。

「けど・・・さぁ・・・」
「・・・なに?」

友人が何やら考えている。

「“わざと落とした”ってことない?」
「それって・・・」

友人が言いたいことは何となく想像できる。
少女マンガにでも出てきそうな展開だろう。

「あなたの気を引こうとして・・・」
「そんなことあるわけないでしょ!?」

否定しつつも、多少の期待を抱いてしまった。

「明日あたり、声を掛けられるんじゃない?」

確かに、落とし方が不自然だったようにも思える。

「そう考えると・・・さぁ・・・」

アチコチで落ちている片方の手袋。
報われなかった恋の残骸かもしれない。
S824
(No.824完)
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[No.824-1]恋の残骸

No.824-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あっ!ちょ、ちょっと・・・落としましたよ!!」

通り過ぎた自転車から手袋が落ちてきた。

「これがその手袋ね?」

私の叫びは、むなしく空を切った。
多分、ヘットフォンで音楽でも聞いていたのだろう。

「うん・・・捨てるわけにもいかなくて」

“仕方なく”持ってきてしまったのが本音だ。

「ある意味、大変なものを拾ったわね」
「・・・かもしれない」

落し物だから交番に届ければ済むことだ。
けど、そう簡単ではない。

「届けるのが嫌なんじゃなくて・・・」

これを届けたら、アレもコレもなってしまう。

「手袋、たくさん落ちてるんだもん!」

大袈裟に言えば、今時期、一日一回は手袋に出会う。

「確かに多いわよね」

今までは、落ちていても当然のごとく無視していた。

(No.824-2へ続く)

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[No.823-2]ヒイラギとイワシ

No.823-2

「いや、だから・・・ヒイラギは?」

間違って、イワシを二匹買ってきたのかもしれない。

「ヒイラギって魚、見たことないからさぁ」
「えっ!?」

彼女が驚いた表情を見せた。
けど、すぐに笑いに変わった。

「ぷっ・・・そういうこと!?」

吹きだしそうな笑いを、何とか抑えている感じだ。

「悪かったな!見たことなくて・・・」

もちろん、食べたこともない。

「そんなことないわよ」
「今、見てるじゃん!」

あらためて、イワシがのっているお皿を指差す。

「これがヒイラギよ」
「だから、それは・・・イワ・・・」

言い掛けて気付いた。

「もしかして・・・ヒイラギって魚じゃない!?」
「確かに、似たような名前の魚は居たと思うけど」

そう言うと、ヒイラギをそっと手に取る。

「ほら、これがヒイラギよ」
「・・・」

思い込みが招いた大きな勘違いだった。

「ほら、持ってみてよ」
「・・・痛っ!!」

鬼が嫌う理由が、身をもって分かった気がした。
S823
(No.823完)
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[No.823-1]ヒイラギとイワシ

No.823-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どっちも・・・イワシだよな?」

送られてきた写真には、焼き魚が二匹、写っていた。

「おかえり!」
「ただいま・・・」

挨拶もそこそこに、あれが気になって仕方がない。

「写真送ってくれただろ?」
「節分だからね!」

節分に、ヒイラギとイワシを用意する。
彼女から聞かされて初めて知った。

「節分と言えば、豆まきしか知らなかったよ」
「実は、私も最近まで知らなかったの」

聞けば、買い物に出掛けた時に、たまたま耳にしたらしい。

「鬼が嫌いなんだって、この組み合わせが」

そういうと、あらためて、それを指差す。
もちろん、さっきから視界には入っていた。

「でもさぁ・・・どっちも同じに見えるんだけど?」
「・・・ん?」

話が通じていない雰囲気だ。

「だから、どっちもイワシだろ?」
「・・・そうよ?」

それでもまだ話が通じない。

(No.823-2へ続く)

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[No.822-2]携帯を持ったら

No.822-2

今なら当たり前すぎて、誰もそんなことを思わない。
けど、当時はそんな雰囲気が少なからずあった。

「・・・そう言われて見ればそうね」

笑い飛ばされるかと思っていた。

「彼女には相当、怪しまれたなぁ・・・」

もちろん、そんな事実はなかった。
それに、それを期待して携帯を持ったわけでもない。

「スマホを見てたら、ふと思い出しちゃって」
「全員、浮気予備軍に見える?」

思わず電車の中で、ふき出しそうになった。

「とにかく、昔々の話だよ」

携帯はいつしかスマホにとって代わられた。

「ふ~ん・・・」
「なんだよ?」

話の流れで、何らかの疑いの目を向けてきた。

「おいおい・・・浮気なんかしてないぞ!」
「冗談でしょ、冗談!」

何だか試されたようで気持ちが悪い。

「結論を言えば、その人の使い方次第でしょ?」

僕の場合、これで彼女と知り合うことができた。S822
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[No.822-1]携帯を持ったら

No.822-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」

「なに?」

何もしゃべっていないのに、伝わったらしい。
表情にでも出ていたのだろうか?

「ほら、全員、スマホ片手に・・・」

よく見る光景と言えばそれまでだ。
でも、今は“見事”と言っても良いくらいだ。

「ほんと、全員、いじってるね」

正しくは僕達を除いて全員だ。
数名立ってはいるが、彼らさえもいじっている。

「けど、それが?」
「今じゃ、別に珍しくもないでしょ?」

ふとあることを思い出したからだ。

「昔、携帯が世の中に出始めた頃・・・」

当時の彼女にあることを言われた。

「興味深いわね」

それが今でも心の片隅に残っている。

「“浮気でもするつもり?”と言われたよ」

爆発的に普及する前の話だ。

(No.822-2へ続く)

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[No.821-2]笑われる漢字

No.821-2

「あなたって、文学少女だったの?」
「まさか!見ての通りよ」

もう、何年も本らしい本を読んでいない。
別に嫌いじゃないけど、好んで読んだりはしない。

「世間ではそれを“本嫌い”っていうんじゃない?」
「・・・まぁまぁ、それはそれとして」

よからぬ方向に話が進む前に、さっさと話をしてしまおう。

「小さい頃、私も読めない漢字を聞きに行ったことがあって」

たいていの人は経験があると思う。

「・・・まぁ、私もそうね」

何の本だったかまでは、さすがに記憶はない。
ただ、児童書ではないことは確かだ。

「それで、この字なに?って聞いたの」
「そしたら・・・」

親にクスクスと笑われたのを今でも覚えている。

「・・・笑われた?」
「そんな愉快な漢字ってあったっけ?」

漢字自体に、ユーモアがあるわけじゃない。
それを聞きに行くから、笑われてしまう。

「えっーなになに!?早く教えなさいよ!」
「もう、答えは出てるよ」

数秒前に。
S821
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[No.821-1]笑われる漢字

No.821-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
テレビで、何らかの再現ドラマが放送されていた。
そこに登場する子供の行動から、あることを思い出した。

「・・・それなら、私も見たわよ?」

それなら話も早い。

「でも、内容まではあまり覚えてないなぁ~」
「スマホいじってたし」

活字離れならぬ、テレビ離れの実体がここにあった。

「大袈裟ね!それなりに見てたわよ」
「それなら・・・」

例の再現ドラマの話を持ち出した。

「あぁ・・・アレね?」
「ホント、分かってる!?」

適当にあいづちを打っているように見えなくもない。

「失礼ね!読書好きな子供の話でしょ?」
「そうそう!ちゃんと見てるじゃん」

一応、“さすが友人!”と心の中で褒めておこう。

「で、それがなにか?」
「ほら、その子供がさぁ・・・」

読めない漢字を親に聞きにくるシーンがあった。
結構、難しい本を読んでいるようだった。

「それを見た瞬間、思い出しちゃって」

きっとそれは、私だけじゃないと思う。

(No.821-2へ続く)

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