[No.675-2]忘れてたから思い出す
No.675-2
「“忘れてた”ってことよね?」
「あっ・・・」
友人も驚きを隠せないようだ。
「今まで考えたこともなかったよ」
「私もよ」
思い出すのは、忘れていた証拠でもある。
あえて“悪者”にしようとは思わないけど事実だ。
「だから、忘れちゃいけないこともあるよね・・・きっと」
「でも、忘れなきゃいけないこともあるよね?」
どれくらいの時間だろうか・・・しばらく沈黙が続いた。
「仕方ないよ・・・引き出しの数はたくさんあっても」
「常に開けていられるのは僅かしかないんだもん」
何かを開けたら、何かを引っ込めなきゃならない。
思い出はそんなものだと思ってる。
「そうね、忘れてたんじゃなくて、ただ閉まってるだけ」
「それを開ける鍵が、例えば“卒業証書”というわけね?」
いつになく真面目な会話をしている。
「そう!思い出の鍵はみんな持っている」
だから、決して忘れていたわけじゃない。
「けどさ、あえて捨てた鍵もあるでしょ?」
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