カテゴリー「(026)小説No.626~650」の50件の記事

[No.650-2]私の経験

No.650-2

「だって・・・私も経験あるから」

それもつい数日前の出来事だった。

「ほんと迷惑な話だよね」
「う、うん・・・」

ただ、私は迷惑を掛けられたのではなく、掛けた方だ。

「掛けた方?」
「うん、私もこれと同じことしちゃったの」

ゴミ箱を見つけて、これ幸いと思い、コップを捨てた。
けど・・・。

「取り出そうと思っても取れなくて・・・」

強引に押し込んだら余計にどうにも出来なくなった。

「だから、人のこと言えないね」

たかが・・・と思う以上に、罪悪感が残る。

「そんなことないさ」
「だって、黙ってたら分からなかったことだろ?」

そう・・・不思議と正直に話したくなった。

「とにかく・・・まずはこれを何とかするか!」
S650
(No.650完)
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[No.650-1]私の経験

No.650-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「何だよ、これ・・・」

空き缶専用のゴミ箱がある物でふさがれている。

「・・・コーヒーのコップ?」

流行のカフェで使われている透明のコップだ。
最近は、コンビニでもよく見かける。

「みたいだね」
「これじゃ、捨てられないだろ!」

空き缶を入れる穴に、引っ掛かっている状態だ。

「最後まで入れられなかったんだよ」
「・・・最初は入るんだけどね」

簡単に言えば、コップは台形を逆さにした形だ。
底の方から穴に入れるとスンナリ入る。

「で、もう一息の所で引っ掛かるんだよね」

そうなる押すに押されず、引くに引けず・・・。
結果、どうしようもなくなる。

「・・・やけに詳しくない?」
「というより、なんか話がリアルじゃない?」

そう言われるのも当然だ。

(No.650-2へ続く)

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[No.649-2]○○が結んだ縁

No.649-2

単なるハプニングだったはずだ。
そこに、隠し事などが入り込む余地はない。

「・・・えっ、なに!?」
「言っとくけど、ワザとやったわけじゃないからね!」

言い放ったのには理由がある。
結果的に、これがきっかけで彼と付き合うようになったからだ。

「それは分かってるさ」

一応、告白は彼がしてきた。

「それで、話してないことって?」
「そもそもさぁ・・・変だと思わない?」
「えっ・・・やだぁ・・・そんな季節は終わったよ・・・」

何となくホラーっぽい展開だ。
彼の表情も怪しげだ。

「いくら横を通り過ぎたからって、手が当たると思う?」
「・・・言われてみれば・・・」

小川沿いの道は十分過ぎるほど道幅がある。
それに、人通りだってたかが知れている。

「ど、どういうこと!?」
「・・・あの日な・・・」

彼があの日のことを話し始めた。

「・・・私の目の前に行こうとしてた!?」
「あぁ、今日こそは告白しようと思って」

聞けばその瞬間に私の手が飛んできたらしい。

「だから、告白する前にフラれたのかと思ったよ」
S649
(No.649完)
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[No.649-1]○○が結んだ縁

No.649-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「うっとおしいけど、思い出すよね」

その言葉通りのことが一年前に起きた。

「・・・これ?」

一見すると何も居ない空中を指差す。
正確に言えば“こいつら”だ。
何百匹・・・いや、それ以上の数かもしれない。

「うん・・・一応、こいつらが結んだ縁じゃない?」

一年前、いつも通り、学校に続く小川沿いの道を歩いていた。
そして今と同じように、こいつらが飛び交っていた。

「ハプニングの産物だけどね」

こいつらの正体は春と秋に大量発生する、蚊のような虫だ。

「・・・痛かったでしょ?」

その虫をはらうために、手を振り回していた。

「まぁ・・・それなりに」

その手が、通り過ぎようとしていた彼の顔を直撃した。

「ほんとゴメンネ」

お互い徒歩だったので、幸いにもケガには至らなかった。

「でも、すごくビックリしたんだから」

まさかそんなことになろうとは思っても見なかったからだ。

「それは僕だって同じだよ」
「ただ・・・そのことで話してないことがあるんだ」

(No.649-2へ続く)

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[No.648-2]月の欠片

No.648-2

「そうだけど・・・来年はふたりで見ることもないでしょ?」
「あっ・・・」

確かにそうだ。
来年の春にはふたりとも卒業してしまう。

「部活でいつも遅かったから・・・」
「・・・太陽よりも見ていたはずよ」

3年間、それこそ1日も休まずに部活を続けた。
それは友達も同じだった。

「それはそうね」
「だけど、私たち下ばっかり、向いてなかった?」

不甲斐なさに涙に暮れる日が少なくなかった。

「それは、あんたじゃん!」
「なに言ってんのよ!そっちこ・・・あはは」

言い終える前に笑い声に変わった。

「あはは・・・」

どちらでもない・・・お互いさまだ。

「知らないうちに、時間は流れてたのね」

苦しくも楽しい時間が永遠に続くと思っていた。

「ちょっと遠回りして帰らない?」

月の欠片を探しに・・・。
S648
(No.648完)
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[No.648-1]月の欠片

No.648-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あれ?」

友達が不思議そうな声を上げる。

「どうしたの?」
「ほら、見て・・・」

そう言うと視線の先を指差した。
それが何であるか、言わずとも分かる。

「わぁ・・・なんか幻想的な三日月ね」

いつも目にしている色とは明らかに異なる。
ある意味、神々しくもあり、妖艶でもある。

「見方によっては恐くも見えるね」

それこそ、天変地異の前触れのようにも見えなくもない。

「ううん、違うの・・・月は月なんだけど・・・・」
「違うの!?」

友達が状況を説明し始めた。

「ほら、少し前まではこっちにあったじゃん、月が」
「・・・確かに」

正門を正面だとすると、左手側にあった。
それが今は右手側にある。

「けど、月ってそんなものよね?」

天体には詳しくないけど、その程度なら知っている。

(No.648-2へ続く)

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[No.647-2]カピカピ

No.647-2

「それにしても・・・」
「なに?」

時より感心することがある。
これ以上ないと思えるほど、ピッタリの擬音があることだ。

「ほら、カピカピって言葉」

擬音はあえて説明を加えないほうが良い。
言葉の響き自体が大切だからだ。

「乾いた鼻水をうまく表現してるよな」
「・・・そう言えばそうね」

カサカサでもピカピカでもない。
言葉的にも見た目的にも丁度、その中間を行く。

「まさしく、このために生まれて来・・・」
「どうしたの?話の途中で」

フッと気付いたことがある。

「でもさぁ、普通、鼻水がどうこう・・・って言う?」
「言わないと、かわいそうじゃん」

そうは言っても、見て見ぬふりがほとんどだろう。

「なんか、ひょうひょうと言うよね?」
S647
(No.647完)
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[No.647-1]カピカピ

No.647-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
その言葉に漢字があるとは知らなかった。
単に擬音だと思い込んでいた。

「やだぁ・・・カピカピになってるじゃん!」
「・・・えっ!?」

同僚の女子社員が僕の顔を指差した。

「な、なにが?」
「鼻水・・・」

言われて気付いた。
そう言えば、ここ数日鼻水が止まらない。

「ご、ごめん!風をひいてて・・・」

熱っぽさもなくはない。

「・・・が乾いて、カピカピになっているわよ」
「そうなの!?」

思わず、鼻を手で擦った。
確かに・・・そんな感触がある。

「鼻水が出てるのに、そのままにしてるからよ」
「・・・そうみたい」

でも、知っててそうしたわけじゃない。
あくまでも無意識であり、気付けなかっただけだ。

(No.647-2へ続く)

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[No.646-2]もがく先には

No.646-2

「しばらくは寮に住んでたんやけど」

専門学校に通っていた時期もあるらしい。

「けど、そこも居づらくなって」
「だから、あの人のところへ転がり込んだ」

もちろん“あの人”を知っている。
面識はないが、少なくとも良い印象は持っていない。

「家に戻ることは?」
「もう・・・二度とないやろな」

ただ、不思議と母親を憎む言葉を聞いたことはない。

「まぁ、ウチは生きてるわけでもなし・・・」
「死んでるわけでもなし・・・中途半端な存在やね」

すぐには彼女の言っていることが理解できなかった。
けど、後からジワジワと込み上げてくるものがあった。

「そっか・・・」

適当な言葉が見当たらない。
彼女の前ではどんなに気の利いた言葉でも軽く感じられるからだ。

「そんなウチでも幸せになれるんかなぁ・・・」

誰に向かって言ったわけでもないセリフだった。

その記事を読めば読むほど彼女と境遇が似ている。

「彼女も懸命にもがいてたよな・・・」

その先に決して光が見えなくとも・・・そして、この僕も。S646
(No.646完)
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[No.646-1]もがく先には

No.646-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
とある新聞記事に目が留まった。
その記事の内容が他人事とは思えなかったからだ。

「それって、家を飛び出したってこと?」
「そやね」

特に表情を変えずにサラッと言われた。

「もう、かれこれ5年になるかな」
「・・・」

つい逆算してしまう。

(そうなると・・・)

「そう・・・高校を卒業したら、すぐって感じやね」

どうやら見透かされていたようだった。

「家に居場所なんかなかったし、それに・・・」
「・・・それに?」

彼女の表情がこわばる。
でも、ほどなくして穏やかな表情に変わった。

「母親の・・・罵声も耐えがたかったし」

“罵声”の前に、少しだけ間があった。
恐らく言葉を選んだのだろう。

「そうなんだ・・・」

彼女が育った家庭環境は薄々知っていた。
会話の端々に、それを匂わせるキーワードがあったからだ。
そう考えると、罵声以上のものがそこにはあったはずだ。

(No.646-2へ続く)

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