カテゴリー「(022)小説No.526~550」の50件の記事

[No.550-2]下流のごみ

No.550-2

「ただ、川を眺めながら歩いてるだけよ」

お世辞にも清流とは言い難い川でも、生き物であふれている。

「鳥とか、カメとか、得体の知れない大きな魚とか」
「得体のしれない!?」

特に夏場は生き物でにぎわっている。

「それと、ついでにゴミもね」

下流になればなるほど、ゴミが多い。

「そりゃそうでしょ、上流から流れてくるんだから」

いつものルートなら、さほどゴミを見掛けることはない。

「二駅前から歩くようになって気付いたんだ」

言いようのない、虚しさを覚えた。

「そんなにエコを気にするタイプだっけ?」
「ううん・・・そうじゃないけど」

例え目の前でゴミを捨てたとしても、数分もすれば視界から消える。

「そんなことでいいのかな?って思うんだ」

物思いにふける季節ではない。
けど、にぎやかな季節ほど、少し考えたくなるときがある。
S550
(No.550完)
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[No.550-1]下流のごみ

No.550-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
会社へ足が向かない日は、あえて通勤経路を変える。
そんな時は遠回りになるくらいが丁度良い。

「今日、ギリだったじゃない?」
「合コンからの・・・寝坊?」

“それはあなたでしょ!”と突っ込みたく気持ちを抑えた。

「単に遅くなっただけよ」
「でもさぁ、時々、ギリに来るよね?」

寝坊でも通勤途中のトラブルでもない。
二駅も前から下車すれば、必然的にそんな時間になる。

「色々あってね・・・」
「心配しなくても、遅刻はしないから」

時間は読めている。

「会社の近くに、小さな川が流れてるでしょ?」

会社は、その川の下流に位置している。
今日、私はさらに下流から歩いてきた。
二駅も前から下車するのは、それが目的だからだ。

「それが目的って!?」

友人がキョトンとしている。

(No.550-2へ続く)

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[No.549-2]犬の遠吠え

No.549-2

「でも、何でも答えがあるって、つまらなくないか?」
「それはあるけど・・・」

犬の遠吠えもそうだ。
想像通りとは言え、なんだか急につまらなくなった。

「だろ?アレコレ考えている時の方が楽しいこともある」
「手軽だけど、得られるものは少ない・・・か」

プレゼントを貰うと嬉しい。
けど、自分で苦労して手に入れる方が何倍も嬉しい。

「・・・まぁ、そうも言えるかな」
「何でも検索!も時には考えものね」

これからは多少、考えて行動することにしよう。

「突然だけど、私も遠吠えしていい?」
「ものまねでもするつもり?」

それには答えず、朝、聞いた遠吠えを真似てみた。

「い、いがいに上手いじゃないか!」

遠吠えには様々な意味があるらしい。

「そう?それよりも・・・」
「遠吠えする理由調べてみて」

そのセリフと共に彼の腕へ巻き付いた。
S549
(No.549完)
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[No.549-1]犬の遠吠え

No.549-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
つくづく便利な世の中になったと思う。

「・・・そこまで言うのは大袈裟じゃない?」
「でもさぁ、すぐに手元で調べられるのよ?」

ネット社会になってから検索すれば、何らかの答えがそこにある。
スマホが登場したことで、それが加速したように思える。

「朝から評論家みたいなこと言うよな」
「たかが、犬の遠吠えだろ?」

会社前の横断歩道は、小学校への通り道でもある。
そこに、交通安全のおじさんが立っている。

「そうだけど、一昔前ならせめて本屋や図書館でしょ?」

おじさんの傍らには、一匹の犬がいる。
もちろん、おじさんと目的は同じだ。

「それが今なら疑問に思ったら、即、検索!」

ただ、犬の遠吠えだけに限ったことではない。
気になることがあれば、すぐ調べている。

「それで、結果は?」
「あ、うん・・・」

何かを裏切るわけでもなく、想像通りの答えがそこにあった。

(No.549-2へ続く)

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[No.548-2]財布を忘れた !

No.548-2

「思わず、サザエさんかっ!と突っ込みそうになったよ」

一言発した後、そそくさと逃げるように駅を後にした。

「・・・なんで助けてあげなかったのよ?」

確かにその時は一瞬、そうも考えた。
でも、声を掛ける間もなく、彼女は去って行った。

「大事な時に気が利かないんだから!」

もっともだと思いながらも、もし声を掛けていたらいたで・・・。

「それでその一連の動きが何とも可愛く見えたんだ」
「決して不幸を“笑った”わけじゃないからね」

今でもその光景を思い出すと、つい口元が緩んでしまう。

「彼女、大丈夫だったのかな?」

大事な用事に遅れたかもしれない。

「・・・で、あなたはなんで遅刻したの?」
「そ、それは・・・」

自分が遅れたことを棚に上げて、話を進めていた。

「ごめん・・・彼女を見てたら、指輪を忘れたことに気付いたんだ」
S548
(No.548完)
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[No.548-1]財布を忘れた !

No.548-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「さっきから、なにニヤニヤしてるのよ?」
「そ、そうかな・・・」

(まずい・・・)

自分としては微笑んでいるつもりだった。
でも、他人にはそう見えるようだ。

「また、とびきりの美人でも見掛けたわけ?」
「それは以前の話だろ・・・」

まだ、根に持っているところがこわい。

「じゃあ、なによ?」
「ここに来る前にな・・・」

最寄駅の券売機で切符を買っている時だった。
ひとりの女性が、となりの券売機に並んだ。

「・・・で、その人が美人?・・・それとも可愛かった?」
「じゃなくて!」

状況的に、財布を取り出そうとしていたと思う。
カバンの中をゴソゴソし始めた。

「そしたら、一言こんなことを言ったんだ」
「“財布忘れた!”」

その言い方がなんとも可愛く聞こえた。

(No.548-2へ続く)

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[No.547-2]あきらめた雨男

No.547-2

「これでも、雨男じゃないと言える?」
「すっかり、“雪男”の部類の発言ね・・・ったく」

どう考えても、雨男と言わざるを得ない状況だ。
事実を受け入れず、運命に立ち向かうべきか・・・。

「相変わらず、大げさなんだから!」

それとも、事実を受け入れ、雨男として生きるべきか・・・。

「ドラマか何かの見過ぎじゃないの!?」
「じゃあ、どう生きろと?」

つい、熱く応えてしまった。

「ご、ごめん・・・」
「気にしないで・・・状況的にはそう思わざるを得ないもんね」

ここにきて、今まで見たこともない反応だった。

「だ、だろ?」
「じゃぁ、もうあきらめる・・・」
「それもいいな」

あきらめて、成り行きに身を任せることにした。

「勘違いしてると思う・・・あきらめるのはあなたじゃない」
「えっ?じゃぁ、誰だよ」

・・・と言いながらも、答えは目の前の人しかいない。

「そんなあなたでも、私があきらめて結婚してあげるってこと!」S547
(No.547完)
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[No.547-1]あきらめた雨男

No.547-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・あっ)

やはりと言うか・・・案の定、雨が降り出してきた。

「・・・また雨男の話?」
「もう間違いないだろ?」

昨日、外出して数分も経たないうちに、雨が降ってきた。

「何度も言うけど、ただの偶然なの!」

何度も聞いたそのセリフも、今は到底納得できない。

「特に最近は・・・ずっとそうなんだよな」

確かにいつも怪しい空模様ではある。
けど、自分が外出するまでは雨が降った形跡はない。
それは乾いている道路を見れば分かる。

「なのに・・・だよ、ポツリ、ポツリ・・・」

僕を待っていたかのように、雨粒が落ちてくる。

「それを世間では偶然と言うんじゃないの?」
「偶然にもほどがあるだろ?」

それに、その偶然には続きがある。

「続き?」
「あぁ・・・今まで話してなかったけど」

僕が目的地に着いたら、狙ったように雨が止む。

(No.547-2へ続く)

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[No.546-2]やるじゃん!

No.546-2

(・・・後、15分くらいで終わるかな)

終了時刻の読みは慣れている。
それに合わせて会場に戻ってくるのはお手の物だ。

「・・・ん?」

入口近くの柱の陰に人影が見える。
それに、どうやら曲にあわせて動いているようだ。
防音に優れているからといっても、そこそこ音楽は聞こえている。

(・・・チケット、取れなかったんだろうな)

風貌からも、チケット代をケチッたようには到底見えない。
誰よりもそのアーティストのファンであることが伝わってくる。

「アーティスト冥利に尽きるよな」

もし、自分がアーティストなら・・・。
それでも会場に足を運んでくれたファンのことを大切に思いたい。
そんな気持ちにさせられた。

「あ・・・そろそろかな」

アンコールも終わり、どうやら“締め”に入ったようだ。 
帰りにあわせてドアが開けられたことで、より鮮明に聞こえてくる。
1階席、2階席・・・順番にお礼を言っているようだった。

“そして最後に・・・会場の外、ありがとう!!”

「やるじゃん!」
S546_2
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[No.546-1]やるじゃん!

No.546-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「す、すごい列だな・・・」

予想以上の長蛇の列に圧倒される。

「そりゃそうでしょ!」

今はコンサートではなく、ライブと言うのだろうか?
とにかく、とあるアーティストのライブ会場に来ている。
会場の大きさに比例して来場者も多い。

「それだけ人気があるってこと」
「だけどさ・・・並ぶ意味ってあるわけ?」

座席は全席指定だ。
列車で言えば自由席を確保するのに、早くから並ぶ必要はない。

「わかってないなぁ~」
「そ・う・い・う・ものなの!」

ライブには行ったことがないので、そんな心境を理解し難い。
ただ、正確には言えば少し違う。
かなり行ってはいるけど、会場内に入ったことがない。

「とにかく、もうすぐ入口だから、列から抜けるぞ」

入口を目の前にして、いつもの通り戦線離脱する。
僕はいつも彼女の“お伴”として、会場に足を運ぶだけに過ぎない。

「じゃあ、後で!」

いつもの通り、しばらく暇をつぶすべく、会場を後にした。

(No.546-2へ続く)

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