[No.475-2]食堂の匂い
No.475-2
私が今住んでいる家の最寄り駅は親戚の最寄駅と似ている。
改札を抜けた辺りから匂いがしてくることも同じだ。
「今のようにね」
それを子供心に“食堂の匂い”と表現した。
匂いの具体的な“手本”があったわけではない。
何となく、それに落ち着いた。
「だからと言って、何か具体的な想い出があるわけじゃないの」
「体が反応しているというか・・・」
大げさだが一瞬、タイムスリップした気分になる。
「こんな気分になるのは、ここだけと言うか、これだけ」
懐かしさがこみ上げてくる。
同時に、だんだんと足が遠のいて行ったことも想い出す。
「足が遠のいた原因は?」
「特別何もない」
別にこの親戚に限ったことではなかった。
成長と共にどこに対しても足が遠のいた。
「なんか、締まりのない話でごめん・・・」
結局、私は何が言いたかったんだろう。
昭和の雰囲気を残す商店街は今日も活気で溢れている。
(No.475完)
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