カテゴリー「(018)小説No.426~450」の50件の記事

[No.450-2]ハトのフン

No.450-2

「ほら、SF映画とかであるじゃない?」
「ほんの少し先の未来が見えたりするやつ」

確かそんな映画があった・・・はずだ。

「その時は、ほんと当たる!って感じたのよね」

ハトが私の近くを飛び回ることなんて、よくあることだ。
けど、今まで一度もそんな気配を感じたことはない。

「理屈では説明できないけど、あるんじゃない?そんなこと」
「やけにあっさり、同調するじゃない?」

この手の話にはあまり興味を示さない同僚だ。

「珍しいわね・・・同じような経験があるとか?」
「そうね・・・なくもない」

この流れは、聞けと言うことだろうか?

「でも、ハトのアレの話じゃないわよ」

ランチ中ということもあって、さっきから言葉を選んでいる。

「じゃぁ、どんな?」
「そのうち、わかるわよ」

それから1週間後、その答えを知ることになった。
目の前で、お酒に酔った同僚が延々と失恋話を続けている。

「見えたのは失恋?それともこのお酒の席?」

(No.450完)
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[No.450-1]ハトのフン

No.450-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
SFっぽく言えば、数秒先の未来が見えた。

「もぉ・・・朝から最低よ!」
「なにそんなに怒ってるのよ!?」

会社へ向かうために交差点で信号待ちをしている時だった。
数羽のハトが私の方へ飛んで来るのが見えた。

「その展開って・・・」
「そう!考えてる通り」

その時、嫌な予感がした。
普段、あまりそんなことを感じないタチだ。
けど、その時は強く感じた。
感じた・・・と言うより、そうなる先が見えた気がした。

「でもね・・・見えたわりには避けきれなくて」

巨大な塊が当たったわけじゃないのに、それなりの衝撃があった。

「ドーン!って感じで」
「もちろん・・・アレだよね?」

私の左肩にソレは当たった。
完全に避けきれなかったけど、それでも少しはかわしたつもりだ。

「何もしなかったら、それこそ頭に・・・」
「それは無理!」

でも、あの時の感覚は何だったんだろう・・・。

(No.450-2へ続く)

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[No.449-2]制服

No.449-2

「そうかな?別に悪くないと思うけど・・・」
「デザイン的なことじゃなくて」
「ほら・・・髪型のこともあるし、全体的なイメージが・・・ね」

色々なことが重なり、学校自体そんなに印象が良くなかった。

「だから、あの制服を着ているだけで・・・」

なにとか男子から、からかわれたりした。
制服は当時の私たちを憂鬱にさせる象徴でもあった。

「でもね、私はそれでも良かったんだ」
「私は?」
「当時ね、付き合っていた彼が居たの」

クラブ活動を通じて、他校のとある男子と知り合った。
もちろん、私がどこの学校に通っていたか知っていた。

「週1くらいで一緒に帰っていたんだけど・・・」

からかわれる対象が私に加えて彼にも及んだ。

「聞こえはしないけど・・・」
「コソコソこちらを見ながら何かしゃべってるんだよね」

彼も気付いていたけど、特に何も言わなかった。
見てみぬふり・・・ではなく、私を気遣ってのことだった。

「ただ、それが私には辛くて」

私と付き合っているだけで、陰口を叩かれる。
それがだんだんと重荷に感じるようになった。

「・・・で、それで別れたんだ?」
「ううん・・・卒業までちゃんとお付き合いしたわよ」
「!?」

おかしな話に聞こえるけど、別れる理由は他にあった。

「“少なくても制服が原因で別れたくなかった”って」
「・・・だから、卒業まで?」

それが彼なりのやさしさだったのか、今となっては分らない。
ただ、目の前を歩く彼女の隣の男子が彼と重なって見えた。S449
(No.449完)
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[No.449-1]制服

No.449-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
友人と少しだけ遠出することになった。
目指している先は美術館だ。

(この制服・・・)

駅に着くやいなや、ひとりの学生に視線が移った。
思い入れのある制服を着ていたからだ。

「どうしたの?」
「・・・私が通った女子高の制服なんだ」

私たちの前を歩く学生に、目立たないように指をさした。

「そうなんだ・・・懐かしい?」

返事に困る。
決して懐かしくないわけじゃない。
でも、どちらかと言えば苦い想い出ばかり記憶に残っている。

「もしかして・・・いじめ・・・とか?」
「ううん、そうじゃなくて」

私の通った学校は、いわゆる“すべり止め”の学校だった。
もちろん、もともとそのつもりで入学した人も居る。

「私はね、前者のほうだったの」

ある意味、レベルが高い学校でもあった。
ただ・・・。

「校則が厳しかったんだよね」
「・・・どんな?」
「例えば・・・髪型」

今で言うボブカットだ。

「・・・なら、別に変じゃないでしょ?」
「今・・・ならね」

当時は、単なる“おかっぱ”としてしか見られていない。
世間ではアイドルを真似た髪型が人気だったことも影響した。

「それにね」

加えて、目の前の制服だ。
すこぶる男子のうけが良くなかった。

(No.449-2へ続く)

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[No.448-2]悩んでいても腹は減る

No.448-2

あれから更に1週間が経過した。
相変わらず、解決の糸口は見えない。
それどころか、余計に酷くなっている。

「・・・やつれてるわよ」

それもそのはずだ。
食欲は更に落ちるし、眠れぬ日々も続いた。

「わかるけど、まずは食べなきゃ!」
「・・・そうなんだけど、喉を通らなくて」

それこそ、綺麗な話ではないが、ちょっと“もどし”そうになる。
心と言うか・・・気持ちがそれを受け付けていない気がする。

「もうすぐ、昼休みだし、ランチおごるからさ」
「ありがとう・・・でも、食べれないよ、多分」

その時だった。
“グゥ~キュルキュル”と言う擬音が似合う音がした。
俗に言う“腹の虫”だ。

「あっ・・・ごめん」

鳴ったのは私ではなく、同僚の方だった。

「悩んでいてもお腹は減るみたいね」

(No.448完)
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[No.448-1]悩んでいても腹は減る

No.448-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
確かに恋愛の悩みほど辛いものはない。
けど、仕事も案外・・・。

「どうしたの!?深刻な顔しちゃって・・・」
「・・・うん、実は・・・」

大きな仕事を任されて意気揚々としていた。
1ヶ月前までは。

「何か問題でも発生したの?」
「それが大有りなんだ・・・」

一言で言えば、机上の論理だったと言うことになる。
正確に言えば机ではなく、“企画書”にはなるが・・・。

「考えていた通りにことが運ばなくて」
「進まないし、だからと言って戻れないし・・・」

今の所、解決の糸口は言えない。
それが影響してか、ここ1週間ほど何も手に付かない状態だ。

「食欲も全然ないし・・・」
「あなたがそう言うくらいなら、よっぽどね」

普段なら、ここでつっこみ返す会話の流れだ。
でも、今はそんな気持ちには到底なれない。

「あ~!本当にどうしよう・・・」

どうこうしても無常に時間は流れて行く。

(No.448-2へ続く)

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[No.447-2]折れない心

No.447-2

「ねぇ、順調?」
「もちろん、この通り、順・・・」
「違うわよ!あなたのことじゃなくて」

どうやら、トマトのことを聞いているらしい。
両手で双葉を作ってみせてきたからだ。

「それが・・・」
「えっ!枯れちゃったの?」
「そうじゃないんだけど」

4つ蒔いた種全てに芽が出た。
けど、それが2cmほど成長した時だった。

「ほら、一昨日、風が強かっただろ?」

一応、風が当たらない場所にプランターを置いたつもりだった。

「一本、折れてたんだ」

倒れているのではなく折れていた。

「え~!?それでダメになっ・・・」
「それがな・・・そうでもないんだ」

今でも折れたままだ。
でも、今でも成長は続いている。

「まぁ・・・他の3本よりかなり成長は遅れてるけど」

あの時、もうダメだと思い引き抜こうとした。
ただ、何かがそれを思いとどまらせた。

「毎日、心配だけど楽しみでもあるな」

頑張れよ!
在り来たりな言葉だけど、そう声を掛けずにはいられない。
そこに、今の自分を重ねながら・・・。
S447
(No.447完)
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[No.447-1]折れない心

No.447-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「ん!?これは・・・」

なんだか、芽のようなものが生えてきた。
もちろん、そのつもりで植えたものではあるが・・・。

「ようやく、芽が出たんだね!」

種を蒔く時期が早かったせいなのかもしれない。
なかなか芽が顔を出さなかった。

「昨日、ようやく、ヒョロヒョロっと・・・」

まさしくこの擬音の通りだった。
シャープペンの芯のような細さの茎に申し訳なさそうな双葉。
その弱弱しさといったら・・・。

「そりゃそうよ、生まれたてなんだもん!」
「そうか?きゅうりの時はもっとしっかりしてたけどな」

今年はトマトの種を蒔いた。
もちろん、初めての試みだ。
だから、どんな芽が出るのかは、出てからのお楽しみだった。

「とにかく線が細いから、心配だな」
「ふ~ん、やけにやさしいじゃない?」

別にトマトに限ったことじゃない。
だからといって、きゅうり・・・ということでもない。

「単に僕がお節介なだけだよ、何に対しても」

そのせいで、随分しんどい想いをしたこともあった。
ただ、今回は人じゃなくてある意味、良かった。

(No.447-2へ続く)

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[No.446-2]桜散る

No.446-2

「話は戻るけど、思ったほどじゃない・・・って?」
「それがね、思ったほど散ってなかったんだよね」

あの風の勢いからすれば、全ての桜が散ってもおかしくない。
実際、そんな木もあった。
でも、そうではない木の方が多かった。

「生命力と言えばいいのかな?」
「たくましさを感じたの」

こちらの心配をよそに、自然は自然なりに生きている。

「そうね・・・傘でさえ曲がってしまうくらいだもんね」

“桜散る”どころか、桜は散らなかった。
不吉な言葉から、一気に縁起物に変わった気がした。

「受験生にうけそうな話題ね!」
「言ってなかったけど、私も受験生なのよ?」
「先週、資格をとるために試験受けたんだ」

資格のことは話していたが、試験の時期は知らせていなかった。
結果は、もう少し先になる。

「そうだったんだ・・・で、桜はどうなりそう?」

そう言うと、歩道の花びらと頭上の花びらを交互に指差した。

「なかなか、粋なことするわね」
S446
(No.446完)
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[No.446-1]桜散る

No.446-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
桜散る・・・軽々しく口に出来ない言葉だ。
特に受験や就職を控えた学生に対しては・・・。

「昨日、風・・・凄かったよね!」

予報通り、台風並みの春の嵐が通り過ぎた。

「でも、思ったほどじゃなかったね」
「うそ!?かなり凄かったと思うけど」
「私なんて、傘が裏返って・・・」
「ごめん!風のことじゃなくって」

思ったほどではなかったのは、桜だ。
正確に言えば、桜の散り具合だ。

「桜?・・・」
「ほら、前日まで満開だったじゃない」

満開の一言に尽きる、咲きっぷりだった。

「だから、予報を聞いた時、真っ先に心配になって」

まさしく、“桜散る”にならないか不安だった。
それは見た目であり、言葉の響き・・・でもある。
桜散る・・・決して、良い意味では使われない。
特に学業の世界では。

「だから、気をつけなきゃね」

気遣いは必要だ。
誰が聞いているか分らない。

(No.446-2へ続く)

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