カテゴリー「(017)小説No.401~425」の50件の記事

[No.425-2]うれしい一言

No.425-2

「しばらくは、ゆっくりできそうだよ」

2週間続いた出張もひと段落した。

「でも、ほんと今回は疲れたよ」

風邪こそひいていないが、喉の調子が悪い。
仕事柄、四六時中、しゃべらないといけなかったからだ。
そのせいで、喉がガラガラになっている。

「大丈夫?」
「1年分しゃべった感じがするよ」

しばらくは、寡黙を続けたい気分だ。

「でも、土産話をお楽しみに!」

仕事とは言え、土産話はこと欠かない。

「楽しみにしていますね!」

そうこうしている内に、新神戸に到着した。

「今、新神戸に到着したから、大阪までは後僅かだよ」
「そうなんだ、早く家に着くといいね」

とは言え、新大阪に着いてから、自宅までは小一時間は掛かる。
それに、そろそろ22時になろうとしている。
自宅に到着するのは、23時頃になりそうだ。

「後、少し頑張りますね」
「うん、一分でも一秒でも早く帰って温かい布団で休んでください」No425_2
(No.425完)
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[No.425-1]うれしい一言

No.425-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------

「22日は大丈夫ですか?」

優衣(ゆい)からのメールだ。

「僕もその日しかないと考えていたよ」

話を合わせたわけじゃない。
スケジュール上、本当にその日しか空いていない。

「今、出張の帰りなんだ」
「もうすぐ、新神戸だよ」

追加のメールを送った。

「多分、帰りかな~、なんて思ってた」

相変わらず、気配りがうまい。
出張帰りは行きと違って、ある意味、暇をもてあそんでいる。
一仕事終えて、肩の荷が降りた状態だ。
あれだけ張り詰めていた緊張感も今は、ゼロに等しい。

「ありがとう、メール貰えてホッとするよ」

事前に大まかなスケジュールを教えていた。
だからこそ、気を遣ってくれたのだろう。

「風邪とかひいていませんか?」
「うん、大丈夫だよ」

でも、行った先々はどこも寒かった。
冬だから、当たり前と言えば当たり前だが・・・。

(No.425-2へ続く)

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[No.424-2]LINE POP

No.424-2

(へぇ~、こんな機能なんだ)

LINE POP自体はプヨプヨのようなパズル系ゲームだ。
でも、スコアのランキングに知った名前が表示されている。

「これが、みんなが話していたことなんだ」

飲み会の夜、抜かれたとか抜き返したとか・・・そんな話をしていた。
どうやら、スマホの電話帳に登録している人が出てくるようだ。
もちろん、相手もLINEを利用している必要があるのだろうが。

「彼女・・・すごいな」

ランキングが1位だけでなく、その得点がハンパなく凄い。

「どうやったらこんな点、取れるんだよ!?」

しばらく、悪戦苦闘が続いた。
点が思うように上がらない。
それに、夢中になり過ぎてすぐにハートが底をつく。
・・・そんな時だった。

“・・・さんからハートが・・・・”

「ん?なんだろう・・・」

メールのようなメールじゃないような内容がスマホに表示された。

「よ~し、やるぞ!」
「がんばれ~」

いつしか、LINEでメッセージを交換するようになった。
これが案外、楽しかったりして・・・。
Image_2
(No.424完)
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[No.424-1]LINE POP

No.424-1

登場人物
=牽引役(男性)相手(女性)
-----------------------------
出張先の職場の人達が飲み会を開いてくれた。
その中にかつての教え子の女子社員が居た。

「LINE POPって知ってますか?」

LINEは何となく知ってはいるが、LINE POPは全く知らない。

「もちろん、知ってるよ」

お酒が入っていることも手伝って、口が軽やかになる。
・・・と言うより、知ったかぶりが過ぎるのかもしれない。

「じゃあ、LINE POPはしてますか?」
「ううん、してないけど」

とりあえず無難に答えた。

「じゃ、スマホ貸してください」
「・・・えっ!?あ、はい・・・」

その昔、新入社員だった彼女たちの教育係りをしていた。
だから、彼女が入社した当時からお互い気心は知れている。

「・・・え・・・えぇー!?」

この世のものとは思えないスピードで、違和感なく操作を始めた。
それもそのはずだ。
僕のスマホと彼女のスマホは同じ機種だからだ。

「はい!私のメアドと電話番号入れておいたから・・・」
「後でLINE POPをインストールしてくださいね」
「あ、はい・・・」

彼女が積極的なだけだろうか?
それとも、単に知らない仲じゃないからだろうか・・・。
LINE POPをインストールしたのは、出張先から戻った2日後だった。

(No.424-2へ続く)

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[No.423-2]崩れた壁

No.423-2

「どんな人が住んでたのかしら?」
「な、なによ、急に!?」

どのような理由で、あの家がこうなったのか知る由もない。
ただ、そうなる前に、きっと温かい家庭がそこにはあったはずだ。

「随分、こだわるわね?」
「そうね・・・ある意味、人ごとだと思えなくて」

崩れた壁・・・私の場合は物理的な壁じゃない。
家族という壁が崩壊していた。

「ごめん・・・そんな深い意味があったなんて知らなかったから」
「気にしないで・・・誰にも話していないことだもん」

中学生の頃から、その壁が崩れ始めた。
そして、高校生1年生の時に、両親が離婚した。
その時、壁に大きな穴が開いた。

「同時に家を飛び出しちゃったの」

母親とは連絡を取りながらも、一人暮らしを始めた。

「連絡って・・・親は何も言わなかったの?」
「だから、崩壊してるの」

怒られるわけでもなく、帰って来いとも言われなかった。

「でも、あの家はまだ穴が開いてない」

このままだと、穴が開いてしまうのは時間の問題だろう。
でも、しばらくは持ちこたえて欲しい。
私が大学を卒業するまでは。

(No.423完)
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[No.423-1]崩れた壁

No.423-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
-----------------------------

「なに見てんの?」
「ほら、あれ・・・」

通学路に壁が崩れかけている家がある。

「ほんとだ・・・全然気付かなかった」
「気付かないって・・・」

こんなものなんだろうか?
自分に関係がないこととは言え、ほぼ毎日目にしている光景だ。

「だってぇ、通学途中はスマホタイムなんだもん」

どうやら、その家の壁だけではないらしい。
通学路から見える全ての光景が目に入っていないようだ。

「それより、あの家がどうかした?」
「あ、うん・・・ちょっと気になってて」

日を追うごとに、その崩れ具合が大きくなっている。
恐らく、随分前から廃墟になっているのだろう。

「ねぇねぇ!そんなことより、昨日、あのドラマ見た?」
「やっぱ、最高よねぇ・・・」

お気に入りの俳優の演技をほめ始めた。
分ってはいたものの、あの家には全く興味がないようだ。

「でさぁ、春からの連ドラにも出演するんだって!」

今の私たちとは対照的に、崩れかけた壁が寂しく映る。

「・・・ちょ、ちょっと!聞いてる!?」

つんざくような友人の声が、耳に入ってきた。

(No.423-2へ続く)

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[No.422-2]鍵

No.422-2

「ふ~ん・・・で、この“安物”がお目に叶ったわけね」
「そう!このフィット感がいいのよね」

しばらくぶりにキーホルダーを替える気になった。

「ねぇ・・・どうかしら?」
「どうって言われても・・・」

(これはどうしよう・・・)

感想を求めながらも前のキーホルダーのことが脳裏をよぎる。

「どうしたの・・・考え込んじゃって?」

キーホルダーを付け替えるということは前のが余る。
余る上に、もう使い道は残されていない。

「もう、時計としても機能してないわけでしょ?」
「そんなの捨てちゃえばいいじゃん」

確かに言う通りではある。
この鍵に付いていたからこそ、ここまで長く使うことができた。
そうでもなければ、とっくの昔に捨てていただろう。

「そうなんだけど・・・」

言うほど愛着があるわけではない。
ただ、捨てるのには忍びない。

「じゃあ、使ってあげるから私に頂戴!」
「えっ!?」

以前もこんなことがあった気がする。
ただし、それは鍵ではなく・・・。
No422
(No.422完)
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[No.422-1]鍵

No.422-1

登場人物
=牽引役(女性)相手(女性)
-----------------------------
きっかけは友人から貰った安物のキーホルダーだった。

「安物って・・・はっきり言うわね」
「だって、100円でしょ?」

かろうじて女の子を形どった人形だとわかる。
もちろん、見たことがないキャラクターだ。

「よく値段が分かったわね?」
「100均・・・って言ってたじゃない」

その何の変哲もないキーホルダーが案外、しっくりきた。

「丁度、大きさ的に扱いやすいのよね」
「そんなものなの?」

かれこれ10年ほど使っているキーホルダーがある。
手の中にすっぽり収まる大きさのデジタル式の時計だ。
ただ、しばらく前からその機能を失っている。

「失ってるって・・・それなら意味ないじゃん?」
「・・・じゃなくて」

私が求めているのは機能ではない。
邪魔にならずに、鍵をさりげなくアピールする。
そんな微妙な存在感・・・つまり大きさ、フィット感を求めている。

「大袈裟じゃない?」
「そう?大事なことよ」

ある意味、長い付き合いになる。
だから、長く付き合える物が必要になる。

(No.422-2へ続く)

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[No.421-2]名誉の傷

No.421-2

「血は出たの?」
「いや・・・そうでもなかったな」
「保健室でしばらく寝てはいたけど」

本当にそうだろうか・・・。
傷跡を見る限り、決してそうだとは思えない。
一瞬、血まみれの彼の顔が脳裏に浮かんだ。
さながら、ホラー映画のようだった。

「ただ、俺以上にその子がびっくりしちゃって」
「そりゃ、そうでしょ・・・」

その子もそうなるとは考えていなかったのだろう。
あくまでも日常の延長線だったに違いない。

「それで・・・目覚めたら、その子が傍らで泣いてるし」
「もともと原因を作ったのは俺の方なんで、逆に申し訳なくて」

「その子とはそれ以来どうなったの?」

今の時代なら、それこそ大問題になる。
学校、そして親のしつけがどうとかこうとか・・・。

「しばらくして転校したよ、でも・・・」
「これが原因じゃなくて、以前から転校することは決まってたんだ」

「・・・じゃ、お互い好都合って感じ?」

色んな意味を込めて、彼に問い掛けた。

「どうだろう・・・ただ、ちゃんと謝れていないことが心残りだけど」

自分の傷より、その子の心の傷ってことか・・・彼らしい。

(No.421完)
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[No.421-1]名誉の傷

No.421-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「ねぇ、その額の傷・・・」

前から気にはなっていたが聞けずにいた。

「これか?小学生の頃にな・・・」

彼と付き合いだして、丁度1年が過ぎようとしていた。
だから、思い切って聞いた。

「前の席の女子の筆箱が当たったんだよ」
「当たった?」

どんなシチュエーションだったのだろうか?
後ろの席ならまだしも前の席となると、イメージし難い。

「あぁ、振り向きざまに筆箱を投げつけられたんだ」
「そうなんだ・・・って、え~!?」

まさしく当たったのではなく“投げつけられた”が正しい。
その時、何があったというのか・・・気になる。

「その日もいつもの通り、ちょっかいかけてたら・・・」
「振り向きざまに、筆箱が飛んで来て」

小学生の男子と女子の関係はそんなものだろう。
好きな女子ほど、からかってしまうとか・・・。

「好きだったの?その女の子?」
「今思えばそうだったかもしれない」

額の傷は2cm程度だろうか・・・そこそこ大きく見える。
でも、幸に髪を下ろしてしまえば全く見えない。

(No.421-2へ続く)

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