カテゴリー「(015)小説No.351~375」の50件の記事

[No.375-2]出せないメール

No.375-2

「それで、どうしようと考えているの?」

彼と連絡が取れない以上、唯一可能性があるとすれば・・・。

「・・・もしかして、彼女に!?」
「うん、アプローチしてみようかと」

ただ、あれから1年ほど経過している。
だから、アドレスが変わっている可能性だって十分ある。

「そこまでしなくても・・・」
「でも、はっきりさせたいの」

彼女と暮らしているなら、それでもいい。
もし、彼女と別れていたとしても、改めて付き合う気は無い。

「どうやって彼女にアプローチする?万一・・・」

そう・・・もし彼女が今も彼と付き合っていたとする。
加えて、彼が二股していたことを知らなかったとする。

「そうね、もめる可能性は否定できない」

もちろん、そんなことは望んでいない。
それは、うそじゃない。

「それでもするの?」
「ごめんね、頑固者で」
「いいよ・・・今に始まったことじゃないし」

幸か不幸か、彼女にメールが届くことはなかった。
送信した瞬間に、宛先不明を知らせるメールが届いたからだ。

「もう・・・忘れることにする!」
「そうね・・・ところでメールには何て書いたの?」
「何も書かなかったよ」

同じ人を好きになった者同士だ・・・多分、感じてくれると信じた。

(No.375完)
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[No.375-1]出せないメール

No.375-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
中途半端な状態で分かれてしまった彼が居る。
ケンカしたわけでもないのに、ある日突然、連絡が途絶えた。

「でも、予兆くらいあったんでしょ?」
「まぁ・・・無かったとは言えない」

確かに順風満帆なつきあいではなかった。

「それはそれとして“彼女のアドレス”ってなに?」
「彼と付き合っていた彼女のアドレスよ」
「・・・それって・・・」

私とその彼女からすれば、彼は二股していたことになる。

「思ってる通りよ、でも知ってたし」

正確に言えば、彼女が居ることを承知で付き合った。

「とにかく、その彼女のアドレスってことね?」
「そう・・・以前彼から送られてきたメールに・・・」

彼が彼女とケンカした時だった。
彼が彼女から送られた来たメールを私に転送してきた。

「えっ、と・・・話がややこしいわね」

彼から転送されて来たメールに、彼女のアドレスが載っていた。

「あえて載せたんじゃないと思う・・・転送ならそうなっちゃうし」
「多分、彼女のメールを私に見せて」
「“どう思う”的なコメントが欲しかったんじゃない?」

ただ、友人に相談したかったのは、メールの内容ではない。

「彼女のアドレス・・・私のケータイに入ってるんだ」

電話帳としては登録していない。
彼からのメールを保存している関係で、それも残っている。

(No.375-2へ続く)

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[No.374-2]by せいじゅうろう

No.374-2

必ずとは言いたくないが、仕事にミスはつきものだ。

「どないしたん?元気ないやん」
「あのな、昨・・・いや、なんでもない」

女性・・・それも年下相手に愚痴るのは止めておこう。
男のプライドとしてではなく、少なくとも楽しい話ではないからだ。

(・・・そうだ!こんな時こそ)

「格言にでも頼ってみようかな?」
「菜緒(なお)も随分、見ただろ」

この際、開き直ってクイズっぽくしてしまおう。

「今の俺にピッタリな格言・・・紹介してくれよ」
「なんか、わくわくする展開やん!」

・・・と言ってはいるが、一向に探す気配がない。

「探さないの?」

(もしかして、熟読して覚えてしまったとか!?)

「ちょうど、ぴったしの格言あるよ」
「そ、そうなんだ」

やはり、覚えてしまったらしい。
さすがと言うか、若いと言うか・・・とにかく、羨ましい記憶力だ。

「で、どんなの?」
「このページを見てみ?」

開けたページには、菜緒の手書きで何か書かれていた。

“なやんでも・・・・・” by せいじゅうろうう

また、菜緒とこいつらに助けられた気がした。
Sn3p0075
(No.374完)
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[No.374-1]by せいじゅうろう

No.374-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
仕事で使っているシステム手帳。
1ページごとに、格言が掲載されている。
どれもこれも、心に響く。

「だから、格言なんやろ?」

菜緒(なお)にしては、すごくまともな突っ込みだ。

「そうなんだけど、ほら・・・なんていうか」

時に、自分にピッタリな格言が見つかる。
悩みごとを和らげてくれたり、吹き飛ばしてくれることさえある。

「綺麗ごとを並べただけじゃないからな」

単に格好良い言葉を並べたわけじゃない。
むしろ、人間のドロドロした部分に迫っている。

「だから、今でも生きているというか・・・」

それこそ、何十年、何百年もその言葉は生き続けている。

「なんか、話が壮大やな~」

長年、人間を見つめ、そして戒め・・・。
でも、本質はとても温かい。

「ええこと言うやん!」
「・・・そ、そうかな?」
「うちにも見せて、その格言」

仕事用とは言え、別に社外秘が書いてあるわけではない。
スケジュール管理が主な手帳だ。

「日曜日に、返してくれればいいよ」

2日間もあれば十分、格言を堪能できるだろう。

(No.374-2へ続く)

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[No.373-2]笑顔に逢いたい

No.373-2

とりあえず、物陰に隠れようと思った。

(どこがいいかな・・・)

再び辺りをキョロキョロする。

「ナイスな場所、発見!」

エレベータに向かう通路が丁度、周りから死角になりそうだ。

(とりあえず、急・・・あっ!)

目があった。
それにお互い、一歩も動けないくらい硬直した。

「・・・居たの!?そこに」

その誰か、つまり親猫がそこに居た。
親猫とは言っても、断言はできないが・・・。
でも、硬直しながらも耳が子猫の泣き声を探っている。

「じゃぁ・・・私が姿を消すから」

(・・・と見せかけて)

数秒、親猫の死角に入ったが、再び顔を覗かせた。
すると、さっきよりは距離が進んだ位置で再び目が合い硬直した。

「ごめん、ごめん!もうしないから」

親子の再会を邪魔する、たちの悪い人間として映っているだろう。

「ほら、もう行って」

気持ちと言葉が分ったと言うのだろうか?
目の前を疾走して行った。
・・・と同時に、あれほどうるさかった子猫の鳴き声が止んだ。

「良かったね!」

(何だか、私も逢いたくなってきちゃった)

まだ見ぬ母を思い出した瞬間だった。
No373
(No.373完)
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[No.373-1]笑顔に逢いたい

No.373-1

登場人物
=牽引役(女性)
-----------------------------
(・・・ん?)

近くで猫の鳴き声が聞こえる。
猫が好きでも専門家でもないが、恐らく子猫の鳴き声だろう。
声が、か細いことに加えて・・・。

「えっ・・・と、どこかな?」

泣き声が聞こえる辺りをキョロキョロと見渡した。
すると、数メートル離れた先に、それは居た。
思った通り・・・子猫だった。
大きさからすれば、生まれたばかりのような気もする。

「鳴いてないで、こっちにいらっしゃい!」

つい、雰囲気で子猫を呼んでしまった。
もちろん、通じるなんて思っていない。

「あっ・・・ちょっと待ってよ!」

逆に私の声に驚いて、姿を隠してしまった。
でも、遠くには逃げてはいない。
まだ、泣き声が近くで聞こえるからだ。

(やっぱり・・・そうか!)

泣き声だけで子猫だと思った理由はふたつある。
ひとつは泣き声が、か細かったこと。
もうひとつは、誰かに呼びかけているような泣き声だったからだ。
もちろん、その“誰か”も想像はできていた。

「・・・と言うことは・・・・」

きっとその誰かは近くに居るはずだ。
そう直感した。

(そうなると・・・私がここに居ると、警戒して近寄れないわね)

まずは少なくともこの場所から立ち去らなくてはならない。

(・・・と見せかけて)

意地悪いが、完全にここから立ち去るわけではない。

(No.373-2へ続く)

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[No.372-2]誘った夜

No.372-2

『ごめんなさい、今は無理』

予想通りでも、予想外でもない。
この場合、なんと言えば良いのだろう・・・。

『そうなんだ、じゃあ、またの機会に』

文字を打ち込んだものの、送信ボタンを押すのをためらっている。
今は無理・・・その言葉をどう捉えて良いか、迷っているからだ。

次の機会がすぐに訪れるものなのか、それとも二度と・・・。
もちろん、後者ということも十分考えられる。
・・・と言うより、今は後者の匂いがする。

つまり・・・。

「これ、断られた・・・よな」

真意を確かめることなく、作ったメールを削除した。
しつこく誘うつもりはないが、潔く諦めた方が良いだろう。

『そっか、分かった』

結果が聞けただけでも、良しとしよう。
少なくとも彼女がしびれを切らしている訳ではなかったからだ。

メールはこれで途切れた。
逆に途切れて良かったと思っている。
これ以上続くと、返す言葉も続けていく話題も見当たらないからだ。

『今日、来れますか?』

今でも、この言葉の真意が分からずにいる。

(あの日、何もなかったのがダメだったのかな?)

そんな自意識過剰な考えも脳裏に浮かぶ。
誘われた夜、そして・・・誘った夜。
ちょっとほろ苦い、それぞれの夜。
No372
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[No.372-1]誘った夜

No.372-1    [No.371-1]誘われた夜

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
1週間が経過した。
あれから色々と考えてしまう、特に・・・。

(僕から送った方が良いのだろうか?)

前回は彼女から誘われた格好だ。
でも、見方によっては“しびれを切らしたから”ともとれる。
社交辞令と思い、僕が彼女を誘わなかったばかりに・・・。
ただ、今は状況が違う。

「やっぱり、ここは誘うべきだよな」

今度は僕が彼女の勇気に応えないといけない。
彼女がしびれを切らす前に。

(でも、どう誘ったら・・・)

お互いその気なら、何も悩む必要はない。
言わば出来レースを演じれば良い。
ただ、さすがにそこまでには至っていないだろう

『・・・遠慮せずに・・・だから・・・』

とにかくメールした。
けど、内容はかなり遠回しだ。
ずるいけど、彼女に結論を預けてしまった。

『言ってる意味が良く分からないけど』

すぐに返事が返ってきた。
予想していたものの、こうハッキリ書かれるとは思っていなかった。

(だよな・・・仕方ない!)

『今度、遊びに行っていい?』

直球、ど真ん中で勝負した。
言いたかったことは、正直これだけだ。

今度の返事は1時間後に到着した。

(No.372-2へ続く)

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[No.371-2]誘われた夜

No.371-2

自分としては、少なくとも土日を想定していた。
もしも、彼女の家へ遊びに行くことがあったとしたら・・・だ。
それが平日、しかも・・・夜も遅い。

『これから行くよ』

ストレートに短く答えた。
何だか、彼女の勢いに押されている。

(さて・・・どうしたものか)

彼女の家に着く前に、あることないこと考えてしまう。
彼女が覚悟したのか、僕が覚悟しなくちゃいけないのか・・・。

「いらっしゃい」
「ワンワン!」

そうこうしている内に、彼女とチビが出迎えてくれた。

「私も、そう!」
「な、だろ!」

会社を離れることで、見えてくるものもある。
思った以上に会話も弾んだ。
でも、そんな時こそ、時間は無常にも過ぎて行く。

「・・・ごめん、つい話しこんじゃって」

気付けば、もうすぐ23時になろうとしている。

「じゃ、もう遅いから帰るね、また今度」
「・・・うん」

こう言いながらも低俗だけど・・・戸惑っている。
何かした方が良かったのか、しなかった方が良かったのか・・・。

彼女の想いがつかめぬまま、帰路に付いた。
No371_2
(No.371完)
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(No.372-1へ続く)

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[No.371-1]誘われた夜

No.371-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
一気に緊張感が走る。
社交辞令だと思っていたことが、そうではなかったからだ。

『今日、来れますか?』

(・・・えっ!今日・・・)

たった一行のメールをさっきから凝視している。
こと始まりは、ちょうど1週間前にさかのぼる。

『それなら、遊びに行こうか?』

同僚の女子社員に送ったメールだった。
もちろん、この前に何度もメールやりとりしていた。
その流れの中で、このような結論に至った。

『うん、待ってる。チビも喜ぶし』

チビとは彼女が飼っている犬の名前だ。
この時は社交辞令に毛が生えた程度だと思っていた。

『じゃあ、また今度な』

社交辞令の王道とも言える返答をした。
極めて曖昧な所が、ある意味、大人な対応だ。

『分かった、今度ね』

多少、惜しい気もする。
けど、この手の話には期待しない方が身のためだ。
過去、何度と無く・・・。

「うそだろ?・・・今からなんて」

こんな時、男性の方が意気地がないのかもしれない。
時計の針は、もう21時をとっくに過ぎていた。

(No.371-2へ続く)

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