カテゴリー「(013)小説No.301~325」の50件の記事

[No.325-2]似てるけど似てない

No.325-2

「ふ~ん、まぁいいけど、ちゃんとオチがあるんだよね?」
「オチ?」
「今までの話にだよ」

いちいち、そんなことを考えているわけがない。
けど、少し意味深な会話でもあり、そう思われても仕方がない。

「も、もちろんだよ」

考えていることと、口に出たことが全く違う。
勢いに飲まれたのか、場の空気を読んだと言うべきか・・・。

「楽しみね」

(さてと・・・困ったな)

それこそ、どんなオチを付けようかと迷う。

(どうしよう・・・それなら、いっそのこと・・・)

「ほら、さっき話した“色々な人の間を縫うような”感じ・・・」
「それが?」
「その色々な人・・・僕のタイプなんだ」
「でも、なにか、こう・・・ピンと来なかったんだ」

誰もが、なにかひとつ足りない。
もうひと押しあれば、ピタリと当てはまるのだが・・・と。

「そんな時に“間を縫う人”と出逢ったんだ」
「それって、私のこと?」

誰もが誰かの間を縫うような感じで似ている。
でも、その微妙な違いを、人は敏感に感じ取っている。
好みのタイプとはそう言うものだ。

(No.325完)

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[No.325-1]似てるけど似てない

No.325-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「誰かに似てるんだよなぁ」

有希(ゆき)を見ていると、いつもそんな疑問に駆られる。

「・・・なら、良く似てるって言われるけど?」
「それに他にも・・・」
「うん、そうなんだけど」

確かに、いくつかあげられた有名人には似ている。
ただ、なにかスッキリしない。

「似てるけど似てない・・・」
「似てるけど・・・似てない?」

色々な人に似ていることで、かえって誰にも似てない。
そんな気がしている。

「なんて言うか・・・ほら、あれ」
「あれじゃ、わかんないよ」

完全にピタリと当てはまる人は居ない。
言わば色々な人の間を縫うような感じで似ている。

「・・・それって、ほめられてる?」

有希に出逢って以来、テレビなどを見る度に想うことがあった。
“この人、有希に似ている”・・・と。
それもひとりやふたりではない。
だから、ことあるごとに彼女のことを想う機会が増えて行った。

「なによ、黙り込んじゃって?」
「い、いや・・・ちょっと・・・ね」

彼女のことを好きになって行った理由はそこにもあった。

(No.325-2へ続く)

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[No.324-2]二度目の別れ

No.324-2

これではメールの返しようがなかった。

「話は変わるけどさっき、一度目・・・って言ってたよね?」
「うん・・・」

数ヵ月後、彼から連絡が届いた。
完全に終った恋だと思っていたのに・・・。
だから、その喜びは半端なく嬉しいものになった。

「ふ~ん、復縁のいきさつは置いておくとして・・・」
「一度目って言うぐらいだから・・・」
「そうよ、やっぱり、ダメになった」

復縁してから数ヵ月後に、再び私たちは別れた。
やはり、最初の火種は最後まで消えることはなかったらしい。
どこかギクシャクした関係がその証拠だった。
それなりに・・・予感もあった。

「ただ・・・」

都合が良すぎる考えだが、別れたと言うべきかは悩みどころだ。

「どうして?」
「二度目はね、別れの言葉は無かったの」

それこそ「また明日!」のようなメールを最後に連絡が途絶えた。

「・・・で今に至る?」

それ以上、彼を追いかけようとは思わなかった。
逆に、別れてスッキリしたようにさえ感じた。

「でもね・・・今でもどこかで期待している自分が居る」No324
(No.324完)

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[No.324-1]二度目の別れ

No.324-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
『さようなら』

一度目の別れの言葉だった。
もちろん「また明日!」とは意味が異なる別れだった。

「・・・まぁ、至って普通よね?」

感動的ではないにせよ、もっと情緒的な感想が欲しい所だ。

「相変わらず、冷静と言うか・・・」
「だって、言葉通りでしょ?」

以前、付き合っていた彼から振られた。
ささいな口げんかが原因だった。

「私の方が悪かったんだけど」

もともと非があったのは彼の方だった。
でも、最初は小さかった火種を、私がどんどん大きくしてしまった。
意地を張りすぎたばかりに・・・。

「それでも彼がいずれ折れてくれると思ったの」
「・・・裏目に?」
「うん、違う意味で折れたみたい」

さすがに不安になり、謝りの電話をした。
けど、繋がることはなかった。
結局、数日後、別れのメールが届いた。

「なんて書いてあったの?」
「さようなら・・・その一言だけ」

笑ってしまうくらい、ハッキリした別れになった。

(No.324-2へ続く)

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[No.323-2]隣人

No.323-2

事情があり、退職することになった。
ここに来てから丁度、2年が過ぎようとしていた。

「寂しくなるな・・・」
「静かになるな、の間違いでしょ?」
「・・・だな!」

最後まで仲が良かった・・・今日、この瞬間だって。

(私の中では、“これから先も”だけど・・・)

そんな想いを素直に口にしたい衝動に駆られた。
言った所で、迷惑がられることは分かっている。
でも、どうしても伝えたい。

「あ・・・の・・・ですね・・・」
「ん、なんだ?」
「いつまでも隣同士で居たいなぁ~なんて・・・」
「・・・」

彼の表情が変わった、明らかに困惑している。

(・・・やっぱり、そうよね)

「困ったな・・・」

(・・・ごめん)

「そんなつもりじゃ・・・」
「うちの両隣、部屋空いてないぞ」
「えっ!いや、そう言うことじゃなくて・・・」

誘導尋問だったのだろうか・・・この後、本音を話してしまった。
でも、それがあったから、今でも隣人として居られる。

(No.323完)

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[No.323-1]隣人

No.323-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
社内恋愛がなぜ生まれるのか・・・。
その理由を身を持って知った。

「よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそ」

緊張の中、初対面が終了した。

(良かったぁ・・・普通っぽい人で)

これから隣同士の付き合いが始まる。
隣次第で私の会社ライフが決まると言っても言い過ぎではない。

「もう!気を付けてくださいよぉ」
「はい、はい」

聞けば、そんなに歳が離れていないことが分かった。
そのせいか、打ち解けるのにそんなに時間は掛からなかった。
今では、打ち解けるどころか“タメ口”だ。
もちろん、年下の私が・・・。

「“はい”は一回でいいです!」
「はい、はい」
「もぉー!」

周りから見ても仲が良いように見えるだろう。
ただ、そうは言っても、そこから先に何か待っているわけではない。
彼もそうだろうし、私も期待はしていない。
私が独身であっても彼は結婚している・・・それが一番の理由だ。

「これ、ちゃんと片付けてくださいね」
「それから、これも!」

意識していないようで、している日々が続いた。
けど、2つの意味でその日々が終わることになった。

(No.323-2へ続く)

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[No.322-2]英国屋

No.322-2

あの日、この場所でいくつかの衝撃的な事実を知った。
彼女に結婚を前提とした彼が居ること。
そして若くして離婚を経験していること・・・。

「いろんな意味で、想い出の場所なんでしょ?」
「・・・」
「さっきの店内を見つめる目・・・」

その目がどうであったのか、あえて言及はしなかった。
でも、それで十分だった。

「なんとなく、わかるわよ」
「怒らないのか?」
「だって、昔のことでしょ?」

付き合っていたわけではないが、説明しがたい関係だった。
ただ、この日を境に明らかに変わったことがある。

「聞いてもいいの?」
「あぁ・・・」

その日を境に、彼女が自分の過去について語り始めた。
そして、それを境に彼女に対して情が移り始めた。

「だんだん、彼女の存在が大きくなっていったんだ」

結局それが悪い方向へと進んだ。
縮まったと思われたふたりの距離は逆に離れて行った。

「どうして?」
「住む世界が違ったみたい」

逃げ口実のようにも聞こえるが、事実そうだった。

「悪い・・・こんな話をして」
「ううん、次からは私のことを想い出してくれればそれでいい」

今、この瞬間に想い出は塗り変えられた。
No322
(No.322完)

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[No.322-1]英国屋

No.322-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「喉でも渇いたの?」
「・・・どうして?」

とあるカフェの前で、つい足を止め見入ってしまった。
随分前に一度だけ訪れたことがある。

「どうして、って・・・ジッと見てたから」

そう思われても無理はない。
理由は異なるが、見入っていたのは事実だ。

「そうそう、喉が乾いた!」

色々と詮索されないためにも、この場はこれで乗り切ろう。

「・・・なんか変だけど、まぁ、いいわ」

多少の疑いを持たれながらも店に入った。
入ったとは言っても、オープンスタイルのカフェだ。
内外の区別がはっきりしない作りになっている。

「何にする?私はアイスティーのねぇ・・・」

偶然、莉乃(りの)が、あの日と同じメニューを注文した。

そもそもこのカフェの前を通ったことさえも単なる偶然だ。
何の意識もしなかったし、存在自体、忘れていた。

「なんにする?」
「ん?俺は・・・」

同じアイスティーでも銘柄を変えた。
これもあの日と同じだった。

「どうしたの?さっきからなんか変よ」
「そ、そうかな・・・」

アイスティーが運ばれてくるまでの時間が妙に長く感じられた。

(No.322-2へ続く)

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[No.321-2]身軽なわけ

No.321-2

(居た居た・・・)

「おっはよぉー!」
「わぁー!びっくりするじゃない!」

いつもの時間、いつもの場所にいつもの同僚が居た。

「なによ・・・やけに朝から元気じゃない?」
「そう?」
「いいことでもあったの?」

残念ながら、それはなかった。
あればこんな程度じゃ済まない。

「何だか、朝から体が軽いのよね!」
「ふ~ん・・・」

興味なし・・・って、ところだ。
確かに逆の立場なら、私もそんな感じになるだろう。

「あはは!」
「な、なによ・・・急に笑い出して」
「ごめん、ごめん、体が軽い理由が分かったんだ」
「えっ!」

(自分でも分からないのに・・・)

「理由を教えてよ」
「・・・今、何時だっけ?」
No321
(No.321完)

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[No.321-1]身軽なわけ

No.321-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「うぅ~ん、気持ちいいぃー!」

(あっ!いけない・・・)

周囲を気にせず、無意識に背伸びをしてしまった。
いつもなら、この逆だ。
会社に向かう足取りは重い。

(なんだろう・・・気持ちいい朝ね)

理由は分からないが、すこぶる調子がいい。
スッキリしてるというか、なんというか・・・。

「気温のせいかな?」

連日の寒さに比べると、今日は和らいでいる。

(まっ・・・それよりも)

昨日、飲んでいない。
恐らく、その効果だろう。

「それにしても、ほんと体も軽いわね!」

誰に言うわけでもないのに、つい声が漏れてしまった。

(さっ、張り切って行こう!)

駅に向かうだけなのに、妙なテンションだった。

(No.321-2へ続く)

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