カテゴリー「(012)小説No.276~300」の50件の記事

[No.300-2]天空のホタル

No.300-2

「それはそうと星って、昔から色んな人を照らして来たんやろな」
「そうだね、今の僕らのように」

加えて、星の輝きは目印にもなる。
輝く光で数多くの人を導いても来たはずだ。

「みちびく?」
「ほら、実用的なものだけじゃなく・・・」

光り輝く星は、まず方角として人を導く。

「それに・・・心情的にもね」

占いを代表とする、神秘的なシンボルとしても人を導く。

「逆もあるやん」
「逆?」
「惑わすこともあるやろ」

確かに、たかが星占い、されど・・・という面もある。

「うちは、そんなに光ってなくてもええねん」

そう言うと、夜空を指差す。
どこかの星を指差しているように見える。

「・・・どれ?名前は?」
「名前・・・は、やね~」

そう言うと、夜空を差していた指を、フラフラと動かし始めた。
そして、その指を僕の目の前で止めた。

「ほい!ホタルの光、みっけ!」
「小さな光やけど、うちにとっては一番や!」

照れくさい言葉に、今だけは赤く光ってるのかもしれない。

(No.300完)

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[No.300-1]天空のホタル

No.300-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「今度、見たらいいよ」

夜空を見ていると、ふと思い出した。
以前、シリウスをネットで検索している時 、ある動画を見つけた。

「うん、見てみる」

シリウスの存在は有名だろう。
太陽を除けば、地球から見える最も明るい恒星だ。
冬の夜空をロマンティックに演出する。

「意外に大きいぞ」

その動画は星の大きさを比較したものだった。
もちろん、シリウスも登場する。

「ほんまに!太陽よりも?」
「遥かに!」
「それに、もっと大きな星も登場するよ」
「うそぉー!」

想像を超える星の大きさに、ただただ圧倒された。
でも、だからこそ、ロマンが広がるのかもしれない。
宇宙の彼方に、そんな星があると考えるだけで、ワクワクする。

「まぁ、そんな中でもシリウスは身近な存在だね」

いくら大きく輝いていても、地球から遠ければ暗くて見えない。
だからこそ、シリウスは程よい存在だ。

「そうやね・・・私の二番目に好きな星やもん!」
「二番?一番じゃなかった?」
「いいや、今年から二番」

“一番”と“今年から”が、気になるところではある。

(No.300-2へ続く)

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[No.299-2]スクラッチ&ビルド

No.299-2

あれから、更に1ヶ月ほど経過した。

「元気にしてた?」

また、由実子(ゆみこ)から先に声を掛けられた。
ただ前回と少し違う。
今日は、あえてここで待ち合わせをしていた。

「・・・すっかり、無くなっちゃったわね」
「うん、跡形も無く」

なんだか、想い出まで無くなってしまったように感じる。

「私の部屋は、あの辺りだったね!」
「“あの”ってどこよ?」
「ほら、向こうに見える・・・向こう・・・?」
「どうかしたの?」

今まで気付かなかった。
寮の向こうに、こんな景色が広がっていたなんて・・・。

「公園・・・あったんだね」
「うん・・・私も今、気付いた」

寮に住んでいた頃は、全く気付かなかった。

「寮が無くなって、気付くなんて皮肉ね」

由実子の言葉は、何らかの教訓のようにも聞こえる。
事実、無くなって・・・失ってみて、気付くことは少なくない。

「でも、気付けてよかったよ」
「また、新しい想い出が作れそうね」
「・・・ってことは!?」

答える間もなく、ふたりで公園に向かって走り出した。

(No.299完)

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[No.299-1]スクラッチ&ビルド

No.299-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「あなたも来たの?」

同僚の由実子(ゆみこ)が私に声を掛けてきた。

「うん、だって・・・」

つい1ヶ月前まで住んでいた建物の解体作業が今日から始まる。
そこには約3年ほどお世話になった。

「いよいよ、女の園もおしまいね」
「・・・というより、大奥でしょ?」

会社の女子寮が閉鎖され、取り壊されることになった。

「みんなどうしてるかな?」

今はみんな、散り散りになっている。

「喜んでる人も居るんじゃない?」

寮に入ることは強制ではないにせよ、周知の事実ではあった。
それでも、何かと寮の方が便利であったことは間違いない。
通勤にしろ、食事にしろ・・・。
ただ、快適・・・というには程遠かったが。

「まぁ、なんたって、女の園だもんね」

気苦労は耐えなかった。
だから、寮の閉鎖を手放しに喜んだ人も多かった。

「・・・で、今日はなに?」

聞かなくても分かる答えをあえて求めた。

「あなたと同じ理由よ」

ほどなくして、重機の音が聞こえてきた。

(No.299-2へ続く)

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[No.298-2]調整力

No.298-2

「もぉー!また、ズレちゃった」

二面の難しさは、後輩の言葉そのものだ。
先に一面を揃えても、二面を揃える時に、一面がずれてしまう。
言葉するには難しいが、わざとズラしながら・・・。

「でしょ?最後に、ふたつ合わせ込むように・・・」

直前までバラバラでも、最後にピタッ!と合わせ込む。
二面を揃えるには、そんなテクニックが必要になる。
それが、三面、四面と進めば、なおさらだ。

「こうして・・・これをズラしておいて・・・」
「“ある力”を鍛えてると感じない?」
「確かに・・・そんな気がしてきた」

(それが、調整力よ!)

調整力・・・一般的な言葉かどうかは分からない。
でも、少なくとも私はそう名付けている。
仕事をしていれば、何かと足並みが揃わないことは多い。
スケジュールしかり、考え方しかり・・・だ。

「あせらず、ギリギリまで我慢して、最後にピタッ!っと」
「・・・その“力”、分かったよ!それに・・・できたぁ!」

二面の完成と共に、どうやら必要な“力”も分かったらしい。

「そう!これが調整りょ・・・」
「うん!・・・こうすれば、上手く鉢合わせしなくて済むんだね」

それぞれを上手くコントロ-ルする、二股力を身に付けたらしい。

(No.298完)

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[No.298-1]調整力

No.298-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「ルービック・キューブって知ってるよね?」
「あのガチャガチャするやつでしょ?」

かつての大ブームはとっくに過ぎている。
それでも、今でも魅力的な玩具だ。

「それが、どうしたって?」
「ちょっと遊んでみない?」

どうして、私がそれを持っているのか、後輩は聞かなかった。
ややこしくなると思い、あえて聞かなかったのだろう。

「まずは一面、揃えてみて」

最初は渋々感が漂っていた。
でも、だんだんと表情が変わってきた。

「こうして・・・こうして・・・できたぁ!」

(まっ、一面はこんな程度よ!)

「じゃ、次、二面に挑戦して」
「二面かぁ・・・」

単に難易度が上がるわけではない。
二面にはある“力”が必要になる。

「あれ・・・これじゃ、せっかく揃ったのに、ずれちゃうから・・・」

(そう、そう!それそれ!)

私もかつて、先輩から試されたことがある。

(No.298-2へ続く)

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[No.297-2]だららん!の順番

No.297-2

「もしかして・・・」
「もしかすると・・・」

絶妙のタイミングで菜緒(なお)が合いの手を入れてきた。
間違いない・・・菜緒のイタズラだ。

「菜緒のしわざか!?」
「正解!」

ただ、イタズラにしては、かなりスケールが小さい。
場合によっては気付かないことさえあるだろう。

「地味じゃない?今回のイタズラ」

今までもイタズラされたことがある。
もちろん、全て笑い飛ばせる程度の内容だ。

「今回はちょっとイタズラとちがうねん!」
「イタズラじゃ、ない!?」

(・・・じゃなきゃ、嫌がらせか?)

「こないだまで、うちのが伸びててん」

そう言うと、俺の目の前でせいじゅうろうをぶら下げて見せた。
確かに、今は伸びていない。

「どういうこと?」
「うちの伸びてる“ひも”と、コッソリ交換したんや」
「なんでかと言うと・・・」

菜緒が理由をしゃべり始めた。

「順番?だららん?」
「だららん!はリラックマのキャッチフレーズみたいなもんやろ?」

どうやら、自分のストラップのひもをわざと伸ばしていたらしい。
だららん風を演出するために。
そして、今度は俺がそれを体験する順番らしい。
No297
(No.297完)

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[No.297-1]だららん!の順番

No.297-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
少し前から不思議に思っていたことがある。

「どうしたん?」
「ん?いや・・・何でもない」
「せやかて、せいじゅうろう、じっとみてたやろ?」

ケータイのストラップとしてぶら下げているリラックマ。
菜緒はそれを、せいじゅうろうと名付けている。
そのせいじゅうろうに、気になることが起こっている。

「気になること?」
「うん、ほら、これ見て」

ストラップの“ひも”の部分を指差してみせる。
ケータイにくくり付ける部分のひもだ。

「それがどないしたん?」
「・・・伸びてない?」
「それゴムやろ?もとから伸びるやん」

確かに材質がゴムなので、引っ張ると伸びる。
でも、今、俺が言ってる意味とは異なる。

「・・・じゃなくて、伸びきってない?だらしなく」

輪ゴムが伸びきってしまい、伸縮性を失ったのと同じ状態だ。
引っ張っても伸びないし、逆に縮みもしない。

「時間がたったら、そうなるんやないの?」
「けどな、ある日、急に・・・だよ」

徐々にと言うなら、まだ分かる。
それがある日を境に、ひもが伸びきってしまった。

「不思議というか、なんというか・・・」
「ほんま、不思議やね~」

なぜか菜緒の嬉しそうな表情が気になる。

(No.297-2へ続く)

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[No.296-2]別れの予感

No.296-2

「前、付き合っていた人とはね・・・」

カミングアウトする必要もないのに、つい雰囲気に流された。

「その、どちらでもなかったのよ」
「どういうこと?」

何の前触れもなく、メールも電話も通じなくなった。

「最後のメールが“じゃあ、また明日!”なんだよ」

自然消滅のように徐々にフェードアウトしたわけでもない。
ましてや、最後の最後まで修羅場があったわけでもない。
ある日突然、ふたりを繋ぐ糸が切れた。

「その糸を手繰り寄せても、何も引き寄せられなかった」

それまでの自分の言動を振り返った。
別れの原因がそこにあったかもしれないからだ。

「・・・で、見つかった?」
「う、うん・・・かれこれ2年になるけどね」

原因は今でも分かっていない。

「分かってたなら、逆に別れなくて済んだかも」

気付かない所で、すれ違いは始まる。

「案外、彼が別れのサイン・・・出してたかもよ~」
「もぉ!それって私が鈍感ってこと?」

恋の予感だけじゃなく、別れの予感も感じた方が幸せな時もある。

(No.296完)

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[No.296-1]別れの予感

No.296-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「自然消滅・・・って、減ったと思わない?」

恋人同士の別れの定番“自然消滅”
言われる通り、最近は減ってきたように思える・・・経験を含めて。

「ほら、一昔前なら・・・」
「連絡手段が限られていたからね」

携帯電話がまだ一般的ではない頃、連絡手段は限られていた。
お互い、家にある電話を使うことがほとんどだった。
親の目もあり、頻繁に連絡を取り合える環境にはなかった。

「だから、心が離れたりすると」
「途端に連絡が途絶える・・・か」

今なら、メールも電話も直接相手に届く。
もちろん、拒否されていないことが条件になるが・・・。

「最後の最後まで喧嘩したり、泣きごと言ったり・・・」
「本当の別れの瞬間まで、繋がっていられるのかもしれない」

決して表現は良くないが、修羅場は少なからずあるだろう。
そんな状態を誰しも自然消滅とは表現しない。
そう考えれば、自然消滅は綺麗に別れていると言える。
ただ・・・。

(まぁ、言いたいことがあっても言えないし・・・)

簡単に連絡を取り合えない以上、喧嘩さえ成立しない。

「どっちが幸せなのかな?」
「自然消滅か修羅場ってこと?」

(No.296-2へ続く)

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