[No.275-2]何が見えるの?
No.275-2
「コホン」
漫画に出てきそうな、ベタな咳だった。
改まって何かを言おうとしている。
でも、僕にはその必要はない。
「それ、それ」
菜緒(なお)より先に、彼女の胸を指差す。
「気付いた?」
「気付かないほうがおかしいだろ?」
2日前の俺と同じように、ポッケにせいじゅうろうを入れている。
「何が見えるんやろ?」
「・・・何が・・・?」
最初は意味が分からなかった。
聞けば胸ポケットから見える風景のことらしい。
「せいじゅうろうが見てる風景ってこと?」
「そうやで」
言うなれば巨人のポケットに居る人間。
確かに、どんな世界が見えるのだろうか・・・。
「せいじゅうろうに聞いてみたら?」
「せやな・・・なぁ何が見える?」
菜緒がせいじゅうろうに語りかける。
それにタイミングを合わせ俺が答える。
「空が青いですな」
胸が大きな菜緒のポッケ・・・。
せいじゅうろうは、窮屈そうに大空を見上げていた。
(No.275完)
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