カテゴリー「(009)小説No.201~225」の50件の記事

[No.225-2]前にススメ!

No.225-2

「そうね・・・考え出すと前に進めないかも」

重い存在になるのではなく、逆に距離が離れて行く。

「それなら軽い存在とか?」
「アハハ!その表現いいかも」

決して、石橋を叩いて・・・というわけではない。
けど、慎重だから・・・というのとも大きく異なる。

「本当に、軽い存在なのかもしれないね」
「どうして?」
「フワフワ、一人で飛んで行っちゃうから」

考え出すと前に進めない。
すると、ひとりの世界に、フワフワと飛んでいってしまう。
その結果・・・。

「自然消滅・・・が、私のパターンね」
「だね」

友人が非常に短い言葉で締めくくる。
それにしても、随分と話が脱線した。

「・・・で、合格しそう?」

友人が一気に話を戻す。

「もちろん!理解は遅いけど、展開は早いわよ」
「でも、恋愛は・・・」
「だから、何でも恋愛に結び付けないの!」

とは言え、友人の言う通りだ。
時には、後先を考えず、まず走り出すことも大切だ。

「必勝法はね・・・まず、ザッと読んで全体を把握してから・・・」

恋愛のこと言ってるのか、試験のことを言ってるのか・・・。

(No.225完)

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[No.225-1]前にススメ!

No.225-1

登場人物
=牽引役(女性) =相手(女性)
-------------------------------
振り返れば、確かにそんなことが多い。

「わぁー!分かったかも!」

おもわず部屋中に響き渡る声で、叫んでしまった。
辛うじて、自分だけしか居ないことが救いだ。
白い目で見られることはない。

(なるほど・・・ようやく謎が解けたよ)

とある資格を取得するために猛勉強中だ。
ただ、勉強の量に対して理解はあまり進んでいない。
理解が遅いせいだ・・・が、私の特長でもある。

「・・・でね、急にバァーって、視界が広がった感じ」

翌日、同じ資格にチャレンジしている友人に、そのことを話した。

「美弥子(みやこ)って、そんなこと多いよね?」

確かにそうだ。

「なかなか納得しないタイプだからだと思う」

ひとつひとつ納得して進みたい。
分かった振りをして先に進めない・・・そんなタイプと分析する。

「それって、今回とか仕事だけにしといた方がいいよ」
「どういうこと?」

聞くまでもないが、つい返事を返してしまう。

「分かってると思うけど・・・恋愛のこと」

男性からすれば、決して重い存在には成り得ない。
・・・が、非常に面倒な女ではあるだろう。

(No.225-2へ続く)

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[No.224-2]落としたメモリー

No.224-2

「僕のは取引先の記念品としてもらったんだ」

市販品に取引先のロゴを入れた、言わば特注品だ。

「でも、すごい偶然ね!」

それこそUSBメモリーなんて、掃いて捨てるほど種類がある。
ロゴこそ入っているが、ベースは全く同じものだ。

「・・・だから、見つけた時、びっくりしちゃって」
「いつ、落としたんだろう?って・・・あわてて確認したよ」

大したデータは入っていなけど、落とせばさすがに焦るだろう。

「勘違いして持ち帰らなくて良かったよ」
「うん・・・本当に良かったぁ・・・」

胸を撫で下ろすかのような、安堵の表情だった。
よほど大切なデータが入っているらしい。

「今なら、個人情報が・・・って、時代だからな」

当たり障りがないことを、独り言のようにしゃべった。
悪趣味だけど、実は少し中身に興味がある。

「そうね、確かに個人情報が満載かも」

住所録とか、そんなものだろうか。

(でも、まぁ・・・詮索はやめよう・・・)

「気になる?」

見透かされていたようで、何だか恥ずかしくなった。

「見せてあげるよ」

実由(みゆ)がUSBメモリーのファイルを開く。
そこには実由が写してくれた、僕との写真が満載だった。

「メモリーを落としたら大変だもんね!」

(No.224完)

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[No.224-1]落としたメモリー

No.224-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
(これは・・・?)

予期せぬ落し物を拾った。
ただ、他人の家に落ちていたものだ。
単純に、散らかっているだけかもしれない。

「どうしたの?」

きっと僕が、不思議そうな顔をしたせいだろう。
実由(みゆ)が声を掛けてきた。
でも、それには答えず、大急ぎでカバンの中を確認した。

「・・・だよな!」
「ひとりで納得しないでよね」

実由の家に遊びにきた。
それから、数時間経過した時だった。

「これ、実由のか?」
「あっ!それ・・・」

今度は実由が自分のカバンの中を確認する。

「・・・やっぱり・・・それ、わたしの」

ようやく結論が出た。

「ごそごそしてた時、落としたみたい」

そう言えば、少し前にケータイをカバンから取り出していた。
その時だろうか。

「でも、なんで自分のカバンの中を確認したの?」
「これだよ、これ」

拾った物と、自分のカバンに入っていたものを並べて見せた。

「同じ・・・よね?」
「正確に言えば、ほら・・・僕のはロゴが入っている」

偶然とはこんなことを言うのであろう。
僕が持っているUSBメモリーが、拾った物と同じだった。

(No.224-2へ続く)

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[No.223-2]ブラジル

No.223-2

店に入ると、最後に由里(ゆり)と向き合った席を探した。

「ほら、あそこ、あそこ!」

人通りが見える、奥の窓際の席に向かった。
どちらからと言うわけでもなく、自分のポジションに座る。

「最後に座ったのは、別れた後、だった?」
「自然消滅だったから、微妙よね」

お互い、わだかまりもなく、素直に話せた。

「なかなか逢えなかったよな」
「意識して、外してたわけじゃないのよ」

何度か同窓会は開かれたが、すれ違いが続いた。
でも、それ以外の理由で二人だけで逢うのは違うと感じていた。
それは、由里も同じだった。

「もう一度この場所に、由里と一緒に来たかったんだ」
「私もよ」

何も発展しない・・・発展させようとも思っていない。
お互いはそれは分かっている。

「さすがに、向こうの店は変わったな」
「通りの向こう?靴屋さんだったよね」
「いいや、花屋だっただろ?」

懸命にふたりの記憶をたどる。

「なんだよ!誰と来たんだよ」
「そっちこそ、誰とよ!」
「一人に決まってるだろ!」

結局、ふたり共、ひとりではここを訪れていたようだった。

「まぁ、確かに・・・一緒に来たのはあの時、以来だから・・・」

嘘は付いていない・・・そう言いたげなのは僕も同じだった。

(No.223完)

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[No.223-1]ブラジル

No.223-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
「へぇ・・・まだ、あったんだ」

由里(ゆり)が懐かしそうに、その喫茶店を見上げる。

「だよな・・・あれから何年だっけ?」
「何年じゃなくて、十何年よ」

あれこれ話ながら、2階に続く階段を上る。

「この名前・・・」

喫茶店の入り口には当然のごとく、店の名前が書いてある。

「覚えてるか?」
「もちろんよ!」

単に店の名前を覚えているかを、聞いたのではない。
それは由里も分かっているだろう。

「なぜだか、あの時、笑えたよな」
「あなたが笑うから、つい私も・・・」

由里と付き合うことになって、初めてのデートだった。
当時、高校生のデートと言えばたかが知れている。

「2階に向かったら・・・」
「ブラジル・・・だんもね」

冷静に考えなくても、別に笑える話ではない。

「あの時、すごく緊張してたからな」

初デートは、喫茶店デビューでもあった。
そんな緊張感の前に、店名が飛び込んで来た。

「・・・喫茶店・・・コーヒー・・・で、ブラジルだろ?」

妙にピッタリなネーミングに、思わず肩の力が抜けた。

(No.223-2へ続く)

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[No.222-2]微笑

No.222-2

「意外・・・誰だろう?」

ゆいは極端に、誰か一人に似ているわけではない。
それだからこそ、その系統の人、全てに似ていると感じる。

「ほら、ちょっとこうして、あぁして・・・」

ゆいがわざとそれらしい表情を作る。

「・・・あぁ!辻ちゃん!?」
「えっ!初めて言われた」

どうやら違うらしい。

「小雪よ・・・女優の」

何となくピンと来るものがない。

「う、ううん・・・かな?」

確かに似てないわけではない。
ゆいは、イマドキにしては珍しく、黒髪にストレートロングだ。

「不服そうね」
「い、いや、その・・・」

見透かされて、口ごもる。

「冗談よ、じょ・う・だ・ん!小雪もたまに似てるって言われるけど」
「私が額縁の中に居るって、想像してみて」

「額縁・・・?」

左手の親指と人差し指で、L型を作る。
さらに右手でも同じものを作り、四角い枠をかたちどる。
そして、テレビのディレクター風に、枠越しに彼女を見た。

「何が見える?」
「なるほど・・・世界で一番有名な微笑が見えたよ!」A0022_000043_4
(No.222完)

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[No.222-1]微笑

No.222-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
友人から一人の女性を紹介され、逢うことになった。
当初は友人を含めて、三人で逢う予定だったが・・・。

「分かりました?」
「すぐに!だって、メールに書いてあった通りの雰囲気だったし」

友人の都合で、結局、二人きりで逢うことになった。
もしかすると、友人が気を遣った可能性もある。
ただ、初対面同士で、いきなり二人きりと言うのも考えものだ。

「雰囲気?」
「中島美嘉に似てるって、メールくれただろ?」

顔も似てるが、それに加えて・・・。

「ほら、その服装」
「・・・やっぱり、引いた?」

ダサイとかセンスがない・・・と言うことではない。
逆にミステリアスな雰囲気が漂い過ぎるほど、似合っている。

「初対面で黒系は・・・だよね?」
「そんなことないよ、だから中島美嘉なのかも!」

初対面にもかかわらず、会話が盛り上がる。
それもごく自然に。

「他にも居るんだよ、似てる人」
「・・・誰だろう?」

俗に言う、“ここまで出掛かっている”状態だ。

「上村愛子が一番言われるけど、真央ちゃんも」
「・・・似てる、似てる!」

思わず二回繰り返してしまった。
モヤモヤ感が急に晴れた感じだ。

「意外なところで・・・あの人にも似てるって!」

(No.222-2へ続く)

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[No.221-2]同居

No.221-2

しばらくして今でも同居は上手く行っている・・・そう聞かされた。

「良かったな」
「うん、“習うより慣れよ”だね」

微妙に違う気もするが、それっぽくも聞こえる。
親子関係を“慣れる”と表現したのは、春(はる)だからこそだ。

「時の流れって、不思議ね」

当時、あれだけ衝突していたことが遠い過去に感じる・・・。
春がしんみりと、そう話し始めた。

「・・・どうした?」
「ううん・・・ちょっと後悔しただけ」

当時の自分を振り返っているような表情だ。

「過ぎたことだよ」
「許してくれるかなぁ・・・?」
「もちろんだよ」

誰が誰を許すのか、短い会話だけでは分からない。
彼女が彼女自身を許す・・・そんな風に聞こえなくもない。

「でもね、困ったことがあるの」
「多少は・・・やっぱり、あるんじゃない?」
「それが大問題なの!」

思わず、つばをゴクリと飲み込む。

(ここに来て・・・大問題って・・・・)

「門限が出来たから、あなたと遅くまで遊べないの」

(No.221完)

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[No.221-1]同居

No.221-1

登場人物
=牽引役(男性) =相手(女性)
-------------------------------
「そろそろだろ?」
「うん、来週だよ」

春(はる)が一人暮らしを解消して自宅に戻る。
・・・とは言っても、もともとお互いの距離は目と鼻の先らしい。

「気分はどう?」
「正直・・・やや不安かな?」

春が一人暮らしをしていることは、初めから知っていた。
ただ、一人暮らしを始めた理由は後から知った。

「そうだね・・・気まずさもあるだろうし」

不仲までとは行かないものの、それに近い関係があった。
そう春が話してくれたことがあった。。

「まぁ、緊急避難だったからね」

無断で家を飛び出したわけでない。
ある意味、母親と合意の上の一人暮らしだ。
だからこそ、お互い手の届く範囲に居たとも言える。

「成長したし・・・私も」

一人暮らしを始めたのは高校の時だと聞いた。
春に限らず、親子の衝突があっても不思議ではない年頃だ。
その結果が少し極端に出ただけだ。

「色々、あっただろ?」
「そうね・・・だから戻ろうと思ったの」

人は成長するに連れ、わだかまりが取れて行く。
短い会話の中に、色々な想いが詰まっているように感じた。

(No.221-2へ続く)

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