カテゴリー「(008)小説No.176~200」の50件の記事

[No.200-2]ホタルノヒカリ

No.200-2

「スイッチ?」
「うん、この前は深呼吸しようと思ったら・・・」

息を吸い込もうとした瞬間、フライング気味に変な音が出たと言う。

「でも、スイッチとどんな関係があるの?」
「上手く説明できないけど・・・」

気持ちを切り替えようとしたタイミングで音が出る、と友人は言った。
偶然と言えばそれまでだが、確かにそんな気もする。

(なるほど・・・自分を切り替えるスイッチか・・・)

「スイッチって表現、いいよ、それ!」

タメ息にせよ、深呼吸や気合も分岐点を知らせてくれる合図なんだ。
そして変な音が、気持ちを切り替えてくれる。

「あんな音が出たら、笑うしかないもんね」
「悩み事も吹っ飛んじゃうくらいよ」

それから、私達はその変な音を、こう呼ぶようになった。
“自分スイッチ”と・・・。
それに、メールや合うたびの合言葉のようにもなった。

『最近、自分スイッチ入ってる?』

裏を返せば、何か気持ちを切り替えるような出来事を聞いている。
直接的ではない表現の方が、逆に素直に聞きやすい。

「仕事も順調よ!プロジェクトチームの一員に選らばれたくらい」
「多分、輝いてるからよ」

意識して発言したつもりはなかった。
けど、ふたりして気付いたことがあった。

「スイッチの先には電球が付いてるのかもね!」

(No.200完)

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[No.200-1]ホタルノヒカリ

No.200-1

登場人物
=牽引役(女性) =相手(女性)
-------------------------------
“ピュゥゥ~♪”

「やだぁ・・・変な音」

それはトイレの便座に座った時だった。
スラックスし過ぎたせいだろうか、鼻歌ならず鼻音が出てしまった。
口笛に似た音だったが、一言で言えば“なさけない音”だった。

「ピュゥゥ~って、なんなのよ!」

自分で自分にツッコミを入れた。
そう言えば、たまに似たようなことが起きる。
タメ息のつもりが、なんとも気の抜けた音が出たことがあった。
今回もそれに負けずとも劣らない変な音だ。

(・・・そういえば)

もうひとつ思い出したことがあった。

「ねぇ、ねぇ、聞いてくれる?」

翌日、友達と逢ったときに、あの話をした。

「ある、ある!それ私もあるぅ!」

予想に反して、友人が話にのって来た。
しかも、経験があると言う・・・。

「気合を入れた時に、出たこともあったよ」
「でも、なんだろうね」
「そうだよね!自分で自分を笑っちゃうような・・・」

人に笑われるのではなく、自分で自分を笑わしている感じだ。
それだけなのに、気持ちが明るくなる。

「この音って、スイッチみたい」

(No.200-2へ続く)

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[No.199-2]環境が人を変える

No.199-2

今でもその気持ちに変わりはない。
でも、実際に仕事が変わって初めて気付いたこともあった。

「例えば、仕事を押し付けられたり・・・」

その部署では“新人”扱いされ、軽い洗礼を受けた。
逆に、それが様々な仕事を覚えるきっかけにもなった。
今までにしたことがない仕事。
仕事を変わらなければ、出逢うことがなかった経験だ。

「今までになく、視野が広がったわ」
「それが“井の中の蛙”・・・ってわけね」

くどいようだけど、今でも自信はある。
けどそれは、自分の目の届く範囲での話になる。
仕事が変わり環境が変わると、見たこともない世界に気付く。
それが結果的に、自分を変えてくれる。

「今の自分があるのは、井戸から飛び出したのではなくて・・・」
「井戸が無くなったため・・・とでも言ったらいいのかな?」

千恵美が私の変わりに答えた。
確かに当たっている。
実は仕事が変わること自体は消極的であった。

「そうね、環境が私を井戸から連れ出したとも言える」

いずれにせよ、自力で井戸から這い出たわけではない。

「大海を知った気分はどう?」
「悪くないわね」
「そう言えば、そのことわざの続き知ってる?」
「・・・続き・・・?続きがあるの!?」

千恵美がその続きをしゃべった。

「ひとつの場所にとどまることも、またひとつの生き方よ」
「・・・かもね」

人の生き方なんて、それこそ無限にある。

(No.199完)

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[No.199-1]環境が人を変える

No.199-1

『井の中の蛙、大海を知らず』
今思えば、まさしくこのことわざの通りだろう。

「今でも結構自信があるんだけどね」

最近、仕事の担当が変わった。
会社からは自身のスキルアップのためだと聞いた。
それ自体に嘘はないと思う。

「自信があるって、前に担当してた仕事のこと?」
「うーん・・・そうとも言えるけど、ちょっと違うかな」

前の仕事は結構長く担当した。
それもあり、その仕事に自信を持っているのは確かだ。

「それなら、何に自信があるの?」

同僚の千恵美が言うことも、もっともだ。

「モチベーションを保てる自信よ」
「・・・余計に分からなくなったかも・・・」

一から千恵子に話すことにした。
一般的に長く仕事を続けると、大抵の人はその仕事にたけてくる。
でもその反面、ある危険性と隣り合せだ。

「危険性?」
「そう・・・マンネリ化と言うか、落ち着いちゃうと言うか・・・」

現状に満足して、新しいことへチャレンジする姿勢が薄れる。
私はそんな人を大勢見てきた。

「そんなの、自分の気持ち次第で何とかなる・・・って思ってるの」
「じゃ、自信があるのは・・・」

千恵子が話をまとめた。

「・・・そう言うこと」

どんなにマンネリ化した状況でも、私自信はマンネリ化しない。
そんな自信があった。

(No.199-2へ続く)

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[No.198-2]せいじゅうろうを探せ!

No.198-2

「なぁ・・・さっきから、話が噛み合ってないけど・・・」

話の出だしは、せいじゅうろうの存在についてだ。
後半になると、加えて“皿うどん”がおかしなことになっている。

「ほら、ここに居るだろ?」

あえて写真の一部を指差す。
もちろん、言い逃れできないように、せいじゅうろうを・・・だ。

「・・・あれ?ほんまや」
「ほ、ほんとに知らんかったん!?」

余りの驚きに、大阪弁がうつる。

「・・・ちゃんぽん写す時に、置いたの忘れとったわ」
「ちょ、ちょっと待って!」

置いたのを忘れたまま写真を撮影したのは理解できる。
それに、色が色だけに周囲に溶け込んでいるのも分かる。
それを差し引いても、引っ掛かる部分がある。

「確認していい?」
「ん?・・・ええよ、なんやろ」

俺の考えが間違っていなければ、菜緒は勘違いしている。

「せいじゅうろうはさぁ・・・何と一緒に写っているの?」
「なにって、この食べ物のこと?」

今度は菜緒が、その食べ物を指差す。

「そう!それ」

菜緒が皿うどんを指差した。

「ちゃんぽんやろ?それがどないしたん?」

(No.198完)

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[No.198-1]せいじゅうろうを探せ!

No.198-1 [No.07-1]せいじゅうろう

「美味しそうだな」

あえて、あることに気付かない振りをしてみた。
白々しいと言えば、非常に白々しいが・・・。
 090507_201401
「せやろ!作りもんやけど」
「・・・あ、うん・・・」

予想していた反応と違うことに、少し戸惑う。

「どないしたん?」
「いやぁ・・・その前になんだ・・・その・・・」

冗談ではなく、本当に気付いていないのだろうか。
こうもはっきり写っていれば、逆に無視することが難しい。

「せいじゅうろうは皿うどんが好きなんだ?」
「なんでなん?」
「だって、写・・・」

途中で言うのを止めた。
菜緒にからかわれているだけかもしれない。
もちろん、悪意はないことは承知している。

(一旦、話題を変えてみようか・・・)

「・・・で、菜緒は食べたんだろ?」
「なにを?」
「何を・・・って、皿うどんだよ」

答えを聞くまでもなく、“食べていない”顔をしている。
どうも、さっきから会話がしっくりこない。
でも、嘘を付いているとか、からかってるとか、とも違う気がする。

「パリパリしてたり、しっとりしてたり、美味しかったわぁ」

それを世間では“皿うどん”と言うのだが・・・。

(No.198-2へ続く)

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[No.197-2]スケジュール帳

No.197-2

「教えてくれないなら、いじわるな質問しちゃおうかな?」

同僚が何か気付いたような顔をしている。

「懐かしい・・・ってことは、過去形だよね?」

どうでもいいようなことには、めっぽう鼻がきく。
確かに過去形だ。
現に、その二文字はもう1年ほど書いてはいない。

「まぁ・・・そういうことだけど」
「多分、場所の名前でしょ?」
「どうして分かったの?・・・あっ!」

誘導尋問に引っ掛かったようになった。
それにしても、なぜ場所の名前と分かったんだろう。

(まぁ・・・そんなに選択肢もないしね)

小さなスペースに書き込む。
人の名前、時間、場所・・・内容は限られてくる。

「・・・もぉ!・・・悔しいけど、認めるわ・・・でも」
「どうして分かったかって?」
「時間なら懐かしめないでしょ?それに私なら名前を書くわ」

同僚は恋人を含めて、男友達との交友関係も広い。

「あなたは好きになったら一途でしょ?」

なるほど・・・相手が一人なら待ち合わせ場所でこと足りる・・・か。

(No.197完)

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[No.197-1]スケジュール帳

No.197-1

「懐かしいな・・・」
「・・・なに想い出にふけっているのよ・・・」

気付かない内に、口にしていたらしい。
同僚から言われて、現実に戻る。

「あっ!何でもない、何でも・・・」
「スケジュール帳を見て、懐かしめるなんて、どうなの?」

しっかり聞かれていたらしい。
愛用のシステム手帳を定期的にメンテナンスする。
過ぎたスケジュールは、リファイルして保存するのが習慣だ。

「以前のスケジュールを見てたのよ」
「それだけで懐かしめるの?ある意味羨ましいけど・・・」

スケジュール帳は仕事用だ。
併せて言うなら、プライベートでは手帳は使わない。
ただ、まれにスケジュール帳に私的な内容を書く時がある。

「何が書いてあるわけ?人の名前とか?」
「それは秘密・・・」

それ自体、教えた所で何も問題はない。
スケジュール帳の所々に青い文字で、あることが書かれている。
でも、その書き込みはある時を境に途絶えている。

(京橋・・・か・・・)

今度は口にしないように、意識して心の中でつぶやいた。
主に火曜日に、その文字が書かれていた。

(No.197-2へ続く)

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[No.196-2]学習効果

No.196-2

「そうね、大人な言い方をすれば“体”はそうかもしれない」

仮に体を自由に出来たとしても、心までもそうとは限らない。

「最初はそれでも構わない・・・ただ・・・」
「いずれ、そのギャップに悩まされることになる・・・でしょ?」

例の彼女に悪意はなく、信頼できる相手に相談しただけだろう。
それを男性は“選ばれた人=好意を持たれている”と勘違いする。
それが、体の関係まで進めば尚更だろう。

「それを何度か繰り返せば・・・」
「それが学習効果になる・・・わけね」
「お陰様で、随分と学習させてもらったよ」

尚哉(なおや)がおどけた顔をして笑った。
話が振り出しに戻った時点で、静かなバーはより静けさを増した。

「じゃ、あえてもう一度聞くけど学習効果って?」

私から静寂を破ってみた。

「勘違いしないことなんだけど・・・」

尚哉が一呼吸置くようにして、続きを話した。

「・・・心が繋がるまでは勘違いしないってことさ」
「あら、慎重ね!」

確かに悪いことではない。
でも、今は困る。

「あーあ・・・なんか、相談しずらくなったんだけど・・・」
「心配ないさ、君の場合は前から好きだから」

(No.196完)

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[No.196-1]学習効果

No.196-1

「学習効果?」

お酒の席で、ちょっとした恋愛談義が始まった。
静かなバーに合わせるかのように大人な内容になった。

「あぁ・・・勘違いしなくなったってことさ」
「勘違い?」

尚哉(なおや)が振り返るように話し始めた。

「以前、ある女性から悩み事の相談を受けたんだ」

尚哉が言うには、プライベートな悩みだったようだ。
同性にも話せないような内容でもあったらしい。

「相談に乗ってるうちに好きになるって、パターン?」
「それ以前に、好意を持ってるから相談してきたと思った」

彼女の真意は私にも分からない。
ただ、男性を勘違いさせるにはそれで十分かもしれない。

「恋への進展は?」
「仮にだよ・・・彼女と大人な関係を持ったとしたら、どう思う?」
「それは・・・」

私も女性だから分かる。
悪い意味ではなく、心と体は別々の意思を持っている。
好きではない男性とも一夜を過ごせる場合もある。

「男性はその瞬間、自分の物になったと勘違いする」

尚哉の言うことは間違ってはいない。
だから、男性はここから苦悩するのも事実だろう。

(No.196-2へ続く)

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