カテゴリー「(006)小説No.126~150」の50件の記事

[No.150-2]謎のオーケストラ

No.150-2

それから、ちょくちょくブログへお邪魔するようになった。

いつ見ても、その存在感には圧倒される。
それに、話の展開が上手い。
案外、奇抜とも思える言い回しに目を奪われがちだ。
けど、流れるような展開に全くストレスを感じない。

「おもちゃ箱、訂正しないといけないかも」

にぎやかさを、散らかしたおもちゃに例えてみた。
ただ、何度か訪問している内に、少し印象が変わった。

(・・・メロディ・・・リズム・・・ハーモニー・・・?)

「音楽的なセンスかな?」

そしてブログを構成するパーツたち・・・。

(そうか!)

「オーケストラだ!」

写真、文字の色や大きささえも、独特の音色を奏でている。
それらがまとまって、壮大な楽曲を構成する。

「楽譜と言えばいいかな?」

このブログのひとつひとつの記事はまさしく楽譜なんだ。
諧謔曲のようにユーモラスで、狂想曲のように気まぐれだ。

そして・・・。
時に、夜想曲のような、悲しげなメロディも彼女らしい。
その楽譜は、たった一夜だけ公開されたこともあった。
そんなオーケストラをまとめるは・・・そう、もちろん彼女だ。
絶妙な加減で指揮棒を振る。

「それに・・・感じる・・・」

今も、なお鳴り止まぬ拍手が私の心に響いてきた。

(No.150完)

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[No.150-1]謎のオーケストラ

No.150-1

「なんだろう、この気になる感は・・・」

自分のブログに設置している掲示板のメッセージをたどった。
トップページが印象的な、とあるブログへリンクした。

「この絵、手書き・・・?」

CG全盛の中にあって、逆に新鮮な絵が私を迎えてくれた。

「なんだか、懐かしく感じる絵だな」

それに温かみも感じる。
だから、気になるのだろうか。

(・・・で、内容は・・・エッ!)

独特の言い回しがかなり衝撃的だ。
でも、それが自分の世界観を上手く表現している。
その世界に、グイグイ引き込まれて行く。

文字の大きさ、色、写真・・・それぞれのパーツが踊っている。

(いや・・・どちらかと言えば)

「おもちゃ箱をひっくり返したような、にぎやかさだな」

そこにも、あそこにも魅力あるおもちゃが転がっている。
それをひとつひとつ手に取って感じてみる。

「・・・これはワクワクする・・・これもそうだな・・・これは?」

その中には壊れかけたおもちゃも混じっているようだ。
でも、それを隠そうとはしていない。
そのおもちゃも、大切に抱きかかえている。
心の叫び・・・自分のブログに通じるものを感じる。

「それにしても、色々な意味で強烈なブログだな」

久しぶりに楽しい時間を過ごした。
一緒になって、おもちゃで遊んだような気分だ。

(No.150-2へ続く)

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[No.149-2]それぞれのイベント

No.149-2

「卒業式?」

帰社後、同僚にそのことを話した。

「そんな季節になったのね・・・」

何かを想い出すような口調だった。

「卒業式って、ある意味最大のイベントだよね」
「そうだけど、そうじゃないとも言える」
「どう言う意味?」
「人ぞれぞれにイベントがあるってこと」

確かに卒業式自体に何かあるわけじゃない。
それに何日前から、イベントが始まる人もいる。

「そんな経験あるんだ、で・・・した方?された方?」
「・・・した方・・・」

あの日、ずっと好きだった人に告白した。
卒業を前にして、気持ちをおさえることができなくなった。

「まさしく、人それぞれのイベントだね」
「・・・聞かないの?」
「何を?」
「・・・その結果」

何を差置いても、それを聞いてくるタイプの同僚だ。

「私が聞きたいのは結果じゃないよ」
「じゃ、何よ?」
「どうして、今は“意気地なし”なのか、ってこと」
「わ、分かったわよ・・・」

あの日、片思いは実らなかった。
けど、意気地なしじゃなかった。

(No.149完)

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[No.149-1]それぞれのイベント

No.149-1

(学生服が多い・・・)

取引先に向かう道中、学生達とよくすれ違う。
それは、ある程度、まとまった集団になっている。

「土曜日でもないのに・・・」

それに下校時間にはまだ早すぎる。

(試験中?それとも創立記念日とか?)

「あっ!そうかぁ」

良く見ると皆、筒状の物を手にしている。

「卒業式なんだぁ!」

彼らから名残惜しそうな雰囲気が伝わってくる。
歩むスピードが、それを物語っている。
想い出を踏み締めるかのように進み、時に足を止める。
まるで、次の一歩を躊躇しているようにも見える。

(分かる、分かる!)

これから進学する人、いち早く社会に飛び出す人。
いずれにせよ、若い彼らにとっては踏み出すのに勇気がいる。

(頑張れ!)

何年か前は、自分もその集団の一員だった。
彼らと同じように立ち止まり、次を一歩を踏み出せずにいた。

『このまま時が止まればいいのに』

その時ははそう思った。。

「・・・あっ!いけない・・・急がなきゃ!」

気付けば、取引先との約束の時間が迫っていた。

(No.149-2へ続く)

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[No.148-2]初恋

No.148-2

早速、ある歌詞検索サイトを訪れた。

(えっ・・・と、歌詞検索・・・歌詞検索・・・)

画面を一度スクロールさせ、全体を確認する。
その時、何かを感じた。

「これ・・・この歌かも知れない」

あるアーティストの写真と曲名が掲載されていた。
なぜだか直感的にそう感じる。
ドキドキしながら、“歌詞を見る”をクリックした。

断片的な歌詞が一致している。
同じように断片的なメロディに乗せ、歌詞を読んだ。

♪『桜並木を歩いて・・・見上げて・・・雪の日も・・・
       で・・・しないから 隣り・・・しないから』♪

ピッタリあてはまる・・・桜並木、そして繰り返される“から”。
大急ぎで、この曲を視聴できるサイトを探した。

後日、友人に今までの経過を話した。

「すごいじゃない!それだけでよく見つけたわね」

あれから視聴できるサイトで確認した。
間違いなく、あの日聞いた曲だった。

「それにしても、タイトル・・・」
「そうね、深い・・・ね」
「歌詞のような経験ある?」
「うーん・・・女子なら少なからず、あるんじゃない?」
「・・・だよね」

友人と別れ、帰りの電車の中でその曲を聴いた。
音楽プレーヤーにアーティスト名と曲名が表示されている。

~奥華子 初恋~

(No.148完)

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[No.148-1]初恋

No.148-1

特に目的もなく街をブラブラしている時だった。

♪『・・・桜並木・・・しないから・・・から・・・』♪

有線放送だろうか?
雑踏を縫うかのよう、断片的に聞こえてきた。

(誰だろう・・・?)

初めて行く曲で、歌声に聞き覚えもない。
立ち止まって耳を澄ませてみる。
でも、ほどなく曲が終ってしまった。

「・・・なんだろう・・・この気持ち・・・」

かなり断片的だけど、歌詞とメロディを覚えている。
心に残る曲は多い。
でも、今回のこの気持ちは今までにない感覚だ。

幼さが残る歌声だったような気がする。
純粋と言うより、真っ直ぐな、せつなさを感じた。

(・・・そんな!)

余韻を感じている最中に、次の曲に変わってしまった。
アーティストの名前も曲名すら、分からずじまいだ。

(知りたい!)

このまま知らずにいると、もう二度と出逢えない気がした。

「調べてみよう」

今はネット社会だ。
鼻歌からでも曲を検索できる。

(きっと何とかなる)

断片的な歌詞とメロディから、それを探すことにした。

(No.148-2へ続く)

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[No.147-2]凸凹コンビ

No.147-2

「俺、内面的に女性っぽい所があるんだ」
「そんな趣味があったんだ・・・」
「や、や・・・そっちじゃなくて!」

冗談で答えたつもりなのに本気で否定している。

「分かってるわよ、何かと丁寧だもんね」

弱々しいとか、いわゆる“草食系男子”ではない。

「逆に私なんか、男っぽいでしょ?」

彼が黙って首を縦に振る。
既に、この段階で男女の立場が逆転したような光景だ。

「俺の中の“女性”が・・・」
「私の中の“男性”を好きになった・・・でしょ?」

彼の言いたいことが良く分かる。
付き合い始めて間もないけど、そんなシーンが何度かあった。

「私の中の男性もそうよ」

相性って、本当はすごい複雑なのかもしれない。

「・・・それに」

彼が続けようとしている話が予測できる。

「代わりに、私の場合を答えていい?」
彼がまた首を縦に振る。

「私の中には妻や母親、それに子供の所もあるわよ」

(No.147完)

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[No.147-1]凸凹コンビ

No.147-1

異性との相性について、少し思うことがある。

「相性って何で決まると思う?」

付き合い始めて間もない彼に想いを投げる。
相性が良い・・・広く使われる言葉だ。
お互いの立場はどうであれ、性格がよく合うということだ。

「自分はどうだったんだよ?
「私・・・?付き合ったきっかけのこと?」

上手く、はぐらかされている気がする。
でも、ヒントになるかもしれない。

「そうね・・・弟みたいなとこかな?」

事実、彼のほうが年下だ。
やんちゃで、ほっとけないタイプ。

「俺は反対に姉貴のような所が好きだしな」
「へぇー初めて聞いたけど?」
「まぁ・・・そう言うことだから」

照れる表情が、ますます弟っぽい。

「ありがとうね」
「あぁ・・・」

しばらく心地よい沈黙が続いた。
言葉は要らない・・・そんな空気が私たちを包んでくれた。

「それと、他にもあるんだ」

(他にも・・・理由が、ってこと?)

(No.147-2へ続く)

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[No.146-2]月を恐れぬ女

No.146-2

「そぉれならぁ、みかづきをくれてやるわぁよぉ」

酔いも手伝って、完全にオヤジ口調だ。
それに、できやしないことまで口にしている。

「ハイ、ハイ!ありが・・・とう・・・」

適当にあしらおうと思ったのに、また彼女の目が光った。
それに、ニヤリと不敵な笑みも浮かべている。

「うそぉだとぉ思ってぇるぅでしょお~?」
「もちろんよ」

それにしても彼女の酒癖がこんなに悪いとは・・・。
やはり、満月のせいなのかもしれない。

「ちょっとぉ、こっちぃきて!」
彼女が強引に私の腕を掴んで引っ張る。
「ど、どこ連れていくのよ!」
その時だった。
「おりゃぁー!」
氷った水たまりを踏んづけた。
「これでどう?」
水たまりが割れ、その何枚かを手にとった。
「・・・確かに」

氷に映りこんだ満月が三日月のように欠けて見える。
それ以来、彼女はこう呼ばれるようになった。
“月を恐れぬ女”と・・・。

(No.146完)

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[No.146-1]月を恐れぬ女

No.146-1

「今日ぉわぁ、満月なんだぁねぇ~」

飲み会の帰り、同僚が夜空を指差した。
かなり、ろれつが回っていない。
女性だけの集まりだったこともある。

街中に居ると、月の光を感じることが少ない。
誰かが言わない限り、夜空を見上げることもない。
気付けば、満月は神々しい位に、私たちを照らしていた。

「結構、明るいよね」

夜空とのコントラストがはっきりしている。
真っ暗闇に、ポカンと穴が空いたようにも見える。

「満月の夜は・・・だよね」

誰かがポツリとつぶやく。
満月の夜は何かが起こりやすいとも言われる。
確か、月の引力がどうのこうの・・・。

「なぁ~に、たたずぅんでるぅのよおぉ~」
「ちょ、ちょっと、からまないでよ!」

なるほど・・・今夜は彼女に何かが起こっている。

「私はね、三日月の方が好きなの!」
「みぃかぁづきぃー?」

そう答えると、彼女の目がキラリと光った。

(No.146-2へ続く)

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