カテゴリー「(005)小説No.101~125」の50件の記事

[No.125-2]気の早いタンポポ

No.125-2

「・・・普通よね?」

季節を先取りした記事とは言えない。
それに、わざと遅らせた気配もない。

「なんだろうね・・・」
他のページをパラパラとめくってみた。
「あれ?」
「なに?・・・あ!」
先に気付いたのは友人の方だった。

「これ、4月号じゃない!」

どうやら、入れ替えされないまま放置されていたようだ。
よく見れば、多少色褪せている。

「失礼しちゃうわね、もう!」
「いいじゃん、ちょっと暇つぶしできたしね」
「まあ・・・そうだけど」

確かに友人の“天然”のお陰で、少し暇を潰せた。
でも、季節外れの記事に、“なにか”を期待したのも事実だ。
それだけに少し残念な気もする。

「急に春が待ち遠しくなったよ」
結果的に、気持ちの上で季節を先取りしたようになった。

「もう、その辺りに生えてるかもよ!」
「ほら、足元」
「まさか!真冬だよ・・あっ!」

足元を見ると、本当にタンポポを踏ん付けていた。
特集“蒲公英”と書かれたタンポポだった。

(No.125完)

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[No.125-1]気の早いタンポポ

No.125-1

多分・・・聞かれると思う。
それに加えて“例え”も予想できる。

「ねぇ、ねぇ、これなんて読むの?」
(ほら、きた!)
街角に置いてある無料の情報誌を読んでいた。
「どれ?」
「この・・・」
「蒲焼のような字のこと?」
「なんで分かったの!?」

特集のタイトルに大きく“蒲公英”と書かれている。
それに、でかでかと写真も掲載されている。
・・・とは言え、読めない人にとっては意味を成さない。

「タンポポよ」
「タンポポって、あの・・・」
「ラーメン屋のことじゃないからね」

これ以上、天然には付き合ってられない。
それにしても・・・春にはまだまだ遠い。
時期が早すぎるのか、それとも遅すぎるのか・・・。
とにかく、季節外れの記事だ。

「とにかく、先、読ませて」

タイトルから先に進めていない。
先を読めば、記事の意図も分かるはずだ。

「それで・・・」
「今度はナニ!」
チョット、イラっとして答えた。
「どうして、今頃タンポポなの?」
「だから、今からそれおぅ、ゴホッ、ゴホッ・・・」

勢い余って、思わず咳き込んでしまった。

(No.125-2へ続く)

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[No.124-2]歌えないカナリア

No.124-2

「声を失くしたカナリア・・・か・・・」

忘れるつもりが、逆に頭から離れない。
たまに、例のブログを覗いて見る。
更新は相変わらず、半年前のままだ。

カナリアはカナリアではなく、本人の可能性が高い。
何かに絶望した・・・そうともとれる内容だ。

「どこに行くの?ねぇ、カナリアさん・・・」

名も知らぬカナリアに語りかけてみる。
どうしても、最後の一行が気になるからだ。

~自由になれるから~

未来(ミク)じゃないけど、最悪の結末も考えられる。
だって、一番大切なものを失っている。
それなのに、自由だなんて有り得ない。

「・・・あれ?」

よく見ると、コメントを受け付けている。
(気付かなかっただけ・・・?)
そう想う先から、キ-ボードを叩く私が居た。
「もし・・・そうなら・・・確かめてみよう」

数日後、あの詩は消されていた。
ただそこには“カラ”の鳥かごのイラストが掲載されていた。

声を失ったカナリアは、その役目が終る。
でも、それと引き換えに、自由を手に入れたようだ。

(No.124完)

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[No.124-1]歌えないカナリア

No.124-1

声を失くしたカナリア
 目を閉じても、もう何も聞こえない
声を失くしたカナリア
 もう、誰も振り向いてくれない
それでもね
声を失くしたカナリアは悲しくない
だって、自由になれるから

「悲しい詩(うた)ね」

ネットで、一遍の詩を見つけた。
本来は、“カナリア”という洋食店を探すつもりだった。

「・・・なんか、テンション下がるわね」

ネットカフェで友人と一緒に調べていた最中だった。
突然、交通事故に遭ったような・・・そんな気分になる。
作者の性別や年齢は不明だ。
それに・・・。
この一編を掲載しただけで一度もブログは更新されていない。

「よっぽど飽きっぽいか、それとも・・・」
「未来(ミク)!」
友人の言葉を遮った。
「滅多なこと、言うもんじゃないよ」
「・・・ごめん」

内容が内容だけに、嫌な予感もする。
だからこそ、未来の言いたいことは分かっている。

「・・・それより、探そうよ、お店」
「そうね」

ネットでは時折、こんな思いがけない出逢いがある。

(No.124-2へ続く)

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[No.123-2]チャーミング

No.123-2

「知り合いにチャーミングな人がいるの?」
「そうね・・・目の前の人とか?」
「こら!もうノラないわよ」

どうやら、人そのものがきっかけではないらしい。
表現しにくいものを、時に言葉は的確に表現する。

「小学生の頃、近くに工場があったよね?」

友人とは幼稚園以来の付き合いだ。
確かに、家の近くには町工場が点在していた。

「それが、チャーミングと、どう繋がるわけ?」
「覚えてる?」
「何を?」
「ほら、その工場の独特なにおい・・・」
においの記憶をたどる。
(うぅ・・・ん、何となく覚えてる)

「何だっけなぁ・・・ほら、あれよ・・・何かの焼けたにおい・・・」
「ヒント言う?」
「お願い!」

このままだと気持ちが悪い。
友人に助けを求めた。

「プラスティックに・・・・?」
(プラスティックに・・・プラスティック・・・あっ!)

「・・・ソースを掛けてぇ!」
「そうそう!」
「焼いたにおい!」
「正解!」

誰も試したことがないのに、そう思ってしまうにおいだっだ。

(No.123完)

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[No.123-1]チャーミング

No.123-1

「ねぇ、チャーミングの意味、知ってる?」
「あ・・・うん、知ってるけど」

友人が前触れもなく、質問してきた。
英語が堪能じゃなくても、意味は知っている。

「そうね・・・私みたいな人のことかな?」

多少、笑いを期待して答えた。

「へぇ~、気の強い人のことなんだ」
「そうよ・・・こら!」

ノリツッコミするはめになった。
友人も直訳は分かっているらしい。
その上で・・・何か理由がありそうだ。

「ほら、可愛らしい人をそう言わない?」

友人の言いたいことは何となく分かる。
直訳すれば“魅力的”だ
ただ、都会の洗礼された女性を、チャーミングと呼ぶだろうか?
魅力的ではあるけれども・・・。

「どちらかと言えば、お茶目なイメージがあるよね」

ちょっと間の抜けた感じ位が、イメージに近い。
逆に、そんな人を言い表すことができる言葉だ。

「話を戻すけど、“私みたいな人“ってどんな人?」
「戻さなくていいよ!」

タイミングを逃したユーモアは恥ずかしくもある。

(No.123-2へ続く)

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[No.122-2]謎の計算式

No.122-2

桃子に結果を見せた。

「0.00・・・3%?」
「ほとんど意味を成さないんじゃない?」

「どうして?」
「ほら、果汁0.003%のオレンジジュースって意味ある?」

言う通り、それなら限りなく無果汁だ。
ゼロに等しいと言われても当然だと思う。

「話がそれちゃったけど、結局ナニの%なの?」
「彼と過ごした時間よ」
「どう言うこと?」
「こう言うことよ」

桃子に計算式を見せた。
一緒に居た時間が、1回あたり2時間。
それが12回で、合計24時間・・・だから1日。
それを人生80年として、割合を計算した。

「ふーん・・・」

意味がない、そう言いたげな表情だった。
確かに、彼と過ごした時間は無果汁のジュースと同じだ。

「でもね・・・」

この割合が結論ではない。
結論は他にある。

「たった・・・たった、0.003%の人が・・・」

少し言葉に詰まる。
言い表せない感情が込み上げてきた。

「私の人生を変えてくれたんだ」

(No.122完)

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[No.122-1]謎の計算式

No.122-1

“12回×2時間=24時間”

「1日かぁ・・・」

(で、人生80年として・・・)

“80年×365日=29200日”

「わぁ!すごい日数」

(えっと、割合は・・・)

“1日÷29200日=0.0000342・・・”

「だいたい、0.003%か・・・」

「ねぇ・・・さっきから何、計算してるの?」

桃子が私のメモ帳を覗き込む。

「何で分かったの!?」
「さっきから、ブツブツつぶやいてるし・・・それに」
「それに?」
「ケータイ、電卓モード!」

思いっきり計算中だ。

「それにしても・・・私を無視してよく集中できるわね」

約束の時間にまだ間があった。
その時間を使って、あることを計算していた。
つい集中し過ぎて彼女の到着に気付かなかった。

「ごめん、もう計算終ったから」

答えが出た所で、桃子に声を掛けられた。

「話を戻すけど、何の計算?」

(No.122-2へ続く)

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[No.121-2]あなたを待つもの

No.121-2

お互い独身だけど、恋人同士でもなんでもない。
仲の良い異性の同僚・・・と、僕は思っていた。

「えっ!違うの?」

周りに誰も居ないこともあり、つい声に出てしまった。
メールの内容は、明らかに誤解を招く。
仮に僕が既婚者なら、ただじゃ済まないだろう。

(ど、どうしよう・・・)

彼女の好意に、気付いていなかったのかもしれない。
同郷でもあり、確かに仲は良い。

『ありがとう・・・気付いてなかった』
『鈍感ね、やっぱり』

返す返事・・・返すメールに困る。
思いがけない展開に、驚きを隠せない。

(さっき、言ってくれれば・・・)

でも、社内だし、どこで誰が聞いてるかもしれない。
それを気遣ってのことだろう。

『今日はもう帰るよ』
手短なメールを返した。
『そうね、そうしたら?』
ちょっと、他人行儀な返事だった。
照れくさいのかもしれない。

『じゃ早くしてね。あなたの自転車寒そうよ』

(No.121完)

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[No.121-1]あなたを待つもの

No.121-1

『ご主人さまの帰りを待っているよ・・・ひとりで』

会社の同僚から、こんなメールをもらったことがあった。
送り主は、女性だ。
「おい、おい・・・このぉ、色男が!」
話の前後を上手く説明しないと、必ずこうなる。

「お疲れ様、今日も遅いの?」
廊下で彼女から声を掛けられた。
「見ての通りだよ」

時間はもう21時を過ぎている。
僕もそうだけど、彼女も十分遅い。

「そっちこそ、今、終わりだろ?」
「そうよ、じゃお先にぃ!」

(ちょ、ちょっと・・・!)

何らかの話の展開を期待したけど、意外なほどあっさりだ。
(大変でしょ?とか・・・体、大丈夫?・・・とか)
心の中の叫びとは裏腹に、彼女の背中が遠のく。

「ハァ・・・」

期待は、タメ息に変わった。

「とにかく、もう少し頑張ろう!」

机に向かい、一気に書類を仕上げようとした時だった。

『ご主人さまの帰りを待っているよ・・・ひとりで』

彼女からメールが来た。

(No.121-2へ続く)

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