カテゴリー「(004)小説No.76~100」の40件の記事

[No.100-2]冬のホタル(前編)

No.100-2(文字の色:ホタル-黒奈央-茶

『来週の火曜日19時にいつもの所で』
「忘れんうちにメモしとこ」

ホタルちゃんと来週逢う約束をした。
(スケジュール帳・・・スケジュール帳・・・)

「あれ?ホタルちゃんと逢うのは今月2回目やぁ」

月初めにも“ホタル”と書かれた日がある。

「知ったら、びっくりするかなぁ」

ホタルと名付けられてること・・・なんでホタルなんやと。
でも話す機会、あるんやろか。
隠す気はないんやけど・・・。
単純な理由の裏に、複雑な理由も有るし。

『ホタルちゃんは悪くないやん』

(あっ!言うてもうた)

話の流れでついメールに“ホタル”と打ち込んでしまった。
けど、それには触れてこーへんかった。
何も無かったように、話が進んだ。

『・・・分かった。じゃ来週逢おうか?』
『ええよ』

『来週の火曜日19時にいつもの所で』

多分・・・逢ったら聞かれるやろな。
Animation1

(No.100完)後編へ続く

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[No.100-1]冬のホタル(前編)

No.100-1(文字の色:ホタル-黒奈央-茶) 

『ホタルちゃんは悪くないやん』

(ホタル・・・?)

話の流れからすると、僕のことらしい。
(・・・そう言えば・・・)
“ホタル”と呼ばれた疑問の前に、ある想いが浮かぶ。

僕は彼女をことを”奈央ちゃん”と呼ぶ。
でも、奈央ちゃんが僕のことを名前で呼ぶことはない。
それどころか、あだ名でもその他の何物でもない。

僕は彼女にとって“名無し”だった。

“ホタル”と呼ばれて、それがハッキリした。
今、思えば会話もメールも、僕を呼ぶ名は無かった。

(なんでホタルなの?)

聞くべきか、聞かざるべきか・・・。
連想されるイメージとしては“光”が一番だ。
それとも・・・。
(虫・・・っぽいから?)
それなら、ホタルじゃなくても他の虫でもいい。
(はかない命?)
・・・笑えない。

ただ、後にも先にもこれだけだった。
またいつものように名無しに戻った。

まるで、ホタルのように短い夏を駆け抜けた気分だ。

(No.100-2へ続く)

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[No.99-2]パラレルワールド

No.99-2

「明日もパラレルワールドに行こうかな!」
(あっ・・・しまった!)
朝の余韻が、つい口に出た。

「なに、なに、それ、どこの遊園地?」
「・・・そうじゃなくて、えーっとね・・・」
それについて説明した。

「おもしろいじゃん!私もそうしようかな」
意外だ・・・由梨(ゆり)が話に食い付いてきた。
由梨の報告は明日、聞くとしよう。

帰りの時間は朝とは違い、まちまちになる。

部活だったり、おしゃべりが過ぎることがある。
だから、帰り道にすれ違う人は日によって違う。

「じゃ、また明日!」

由梨の元気な声を背に、自転車を漕ぎ出した時だった。
(あれ?・・・あの人・・・)
朝の顔なじみとすれ違った。
(なんか新鮮・・・それに、不思議な気分)

本当に、パラレルワールドに迷い込んだ気分になった。

(No.99完)

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[No.99-1]パラレルワールド

No.99-1

いつもより、早く家を出た。

通い慣れた道を自転車で飛ばそうとする。

(・・・今日はのんびり行こう!)

早く出たんだ、そう急ぐこともない。

(あれ?・・・そっか!)

走り出して、すぐにあることに気付いた。
見かけない顔と次々、すれ違っている。

(それもそうよね)

時間帯がいつもと違う。

同じ時間・・・同じ電車、同じ車両。
その法則は、自転車通学でもあてはまる。
風景はいつもと同じなのに、知らない人達に出会う。
ちょっとした、パラレルワールドに迷い込んだ気分だ。

(私って、変なこと考えてるかなぁ?)

とにかく、人には言わない方が良いだろう。
どうせ、好奇の目で見られる。

結局、学校に着くまで“顔なじみ”とは出会わなかった。

(No.99-2へ続く)

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[No.98-2]小さな巨人

No.98-2

軽くジャンプした。
それだけで、いとも簡単に石を乗っけることができた。

(あれだけ苦労しても、だめだったのに・・・)

それなのに・・・なんでだろう?
少しも嬉しくない。

「ねぇ・・・何をお願いしたらいいの?」

願い事が無い自分に気付く。
手に入れられないものは今でも有る。
だけど、願い事をした所でどうにもならない。

「もう、帰ろう」
鳥居に背を向けて歩き出した瞬間だった。
(カチャン・・・)
「何だろう・・・?」
石が弾けたような音が聞こえた。
すると、コロコロとひとつの石が転がってきた。

(鳥居の上から落ちて来た・・・?)

それを手に取る。

(何をお願いしたかったの?)
目を閉じ自分に問い掛ける。
あの頃の光景が脳裏に浮かぶ。

そこには、ただ一生懸命だった私が居た。
(あ!乗った・・・)

(No.98完)

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[No.98-1]小さな巨人

No.98-1

(こんなに、小さかったっけ?)

目の前の鳥居に、少し複雑な心境だ。

小さい頃、住んでいた街に立ち寄る機会があった。
そのついでに、ある場所へと足を伸ばした。

何の変哲もない普通の神社・・。

有名ではないけど、厳かな雰囲気は今も変わらない。
そこには、大きな鳥居があるはずだった。

(手を伸ばせば届きそうね・・・)

幼い頃、鳥居の上、目掛けて石を投げていた。
その石が上に乗っかれば、願い事がひとつ叶う・・・。
そんな言い伝えがあった。

鳥居は、空に通じるほど、高かった。
投げても投げても、乗っからない。
それどころか、その高さにさえ達しなかった。
結局、願い事をすることなく、この地を後にした。

私に立ちふさがる大きな存在・・・。

幼いながらも、何やら言い知れぬ存在を感じた。
場所の雰囲気がより一層それを感じさせる。

それなのに・・・。

大人になった私には、その鳥居は小さすぎた。

(No.98-2へ続く)

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[No.97-2]涙は心の汗

No.97-2

(涙は心の汗・・・か)

一昔前の青春の匂いは、照れくさかったりもする。

「その涙の成分はなんだった?」
チョット意地悪な質問を返した。
「そうね、悲しみ半分、くやしさ半分かな」
「あ!それと、隠し味に・・・」
「隠し味?」

意地悪な質問に逆にユーモアで返してきた。
その余裕が、いじらしくもある。

「仕事の汗を、小さじ少々!」
「小さじ少々?1/2カップじゃない?」
「ハイ、ハイ・・・そうですよ!」

怒りながら、笑っている感じの表情だ。

彼女と話をしてると、名言に対する感じ方が少し変わった。
涙は心の汗・・・微妙に何かが違う。

「とにかく余計は考えなかった・・・」
「考える暇を与えなかった・・・よね?」
彼女の言葉に続けた。

汗は心の涙・・・。
私の汗も、そうなのかもしれない。

(No.97完)

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[No.97-1]涙は心の汗

No.97-1

涙は心の汗・・・言わずと知れた名言だ。

名言に解説を加えるほど野暮なことはない。
伝わる雰囲気を、ただ感じるだけでいい。

「最近、仕事頑張ってるよね?」

周辺から、頻繁にそう言われるようになった。
自分でもそう思う・・・思うだけじゃなく、本当にそうだ。

頑張るきっかけがあった。
失恋の痛手を忘れたくて、友人に相談した。

「人それぞれだけど・・・」
「私はただ、がむしゃらに働いたな」
当時を懐かしむように言った。

「仕事・・・か・・・逆に寂しさを感じなかった?」
反論する訳ではないけど、少し引っ掛かる。
「それは否定しない」
「けど、それを忘れるぐらい働いたわ」

仕事のことで頭を満たす。
余計なことは一切、考えない。
いや、考えられない・・・が正しい表現だろう。
自分なりの方法で、悲しみという鬼を追い出す・・・か。

「それで、忘れられた?」
「どうかなぁ?ま、涙は心の汗・・・ってことで」

はぐらかされた気もするし、的を得ている気もする。

(No.97-2へ続く)

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[No.96-2]巡るギザ十

No.96-2

日替わりランチでも、そこそこ話が盛り上がった。

ことの始まりがギザ十なのに。

「今度、こうしない?」
何やら怪しげな提案の予感がする。
「ギザ十が手に入ったら、ランチをおごるのはどう?」
「・・・あんたは言わないでしょ?」
「あっ!それも、そうね・・・」

あれや、これや話は続いた。
(こんなに会話が弾むのも、ギザ十のお陰ね)
こいつが、小さな幸せを運んで来てくれた。

「それ、どうするの?」
「そうね・・・記念に持ってようかな・・・」

幸せを手放すようで、少し惜しい気がしてきた。

「けちッ!」

今度は私が言われた。

「みんなに分けてあげようよ・・・小さな幸せ」

友人の言うとおりだ。
その恩恵を独り占めするのも気が引ける。

「うん、そうする。買い物したら、使っちゃうよ」
(・・・待てよ・・・)
「ねぇ?また誰かにおごってもらう魂胆でしょ!」

驚いた顔が、その答えのようだ。

(No.96完)

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[No.96-1]巡るギザ十

No.96-1

「あれ?珍しいな」
「どうしたの?」
友人が私の言葉に反応する。

財布の中に、ふちがギザギザの十円玉が1枚入っていた。

「へぇー、“ギザ十”じゃない」

硬貨として、わずかだけど価値がある。
けど、それよりも別の所に大きな価値があると思う。

『お釣りの十円は、ギザ十にしてください』

こんなことを言わない限り、自然に入手することは難しい。
だからこそ、偶然手に入ったことに価値がある。
幸せが舞い込んだ・・・そんな気になる。

「良いこと、あるといいわね」

友人も同じ考えのようだ。
ある意味、財布の中に“茶柱が立った”のかもしれない。

「それじゃ、豪華ランチをおごってもらおっかなー」
「どうしてそうなるのよ?」
「ホールインワンのようなものよ」
(・・・一理ある)
「仕方ないわね・・・」
「やったー!」
友人がオーバーアクションで喜ぶ。

「じゃ、日替わりね」
「けちッ!」
「何、贅沢言ってんのよ!ギザ十ならそんな程度よ」

(No.96-2へ続く)

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