カテゴリー「(038)小説No.926~950」の30件の記事

[No.940-2]良く効く薬

No.940-2

「はいはい、薬ね・・・」

こんな時に備えて、何種類かの薬を持ち歩いている。
胃薬はその代表だ。

「サンキュー!」
「私はあなたの薬箱じゃないのよ?」

自分で飲むより、圧倒的にあげる方が多い。
そのほとんどを目の前の同僚が消費している。

「まぁまぁ、そんなこと言わないのぉ!」
「・・・ったくもうぉ・・・」

それにしても、昨日は特に盛り上がった歓迎会だった。
盛り上がった分、同僚のダメージも大きいみたいだ。

「今日・・・大丈夫?」
「もちろんよ!」

今日は今日で送別会がある。

「まぁ、その元気だけは見習いたいわね」
「でしょ?」

その元気のお陰で、会はいつも盛り上がっている。

「ほら、ひどくなる前に、薬飲んだら?」
「そうする」

そう言うと、水もなしに錠剤を口に放り投げた。
手馴れているというか、雑と言うか・・・。

「あなたからもらった薬は良く効くのよね~」
「成分が違うからじゃない?」
S940
(No.940完)
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[No.940-1]良く効く薬

No.940-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ・・・胃薬持ってない?」
「・・・大丈夫?」

同僚の顔色がやや悪い。
理由は分かっている。

「遅くまで飲むからよ」
「だって・・・」

連日、送別会やら歓迎会が続いている。
それは同じ部署の私も同じだ。

「ほどほどにしなきゃ!」
「もう若くないんだから・・・」

30歳にもなれば、もう立派な“おばさん”だ。
高卒の新入社員とは一回りも歳が離れている。

「ごめん・・・つい・・・」

いつも率先して幹事を努めてくれる。
それに関しては感謝している。

「幹事が先に酔いつぶれちゃうんだから・・・」

中締めの頃には、だいたいそうなっている。
昨日もそうそうに酔いつぶれていた。

「新人てさぁ、息子や娘の感覚だよね?」

歳を重ねるごとに、母性が強くなっているように見える。

「その前に、彼氏を作んなきゃね!」
「イテテ・・・胃が・・・」

うそ臭い演技と共に、手を伸ばしてきた。

(No.940-2へ続く)

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[No.939-2]価値がある十円玉

No.939-2

「無くなったって・・・」
「正確には、使っちゃった・・・だけどな」

落としたりしたわけじゃない。
何かを買った際に使ってしまった。

「えっ?」
「財布に入れてたの?」

意識的に避けていたけど、うっかり使ってしまった。

「そりゃ、そうなるわよ」
「・・・だよね」

財布からよけておくつもりだった。
でも、そこまでする価値もないとも思っていた。

「そのわりには、随分と驚いてたじゃない?」
「まぁ・・・逃した魚は大きいと言うか・・・」

無くしてようやく気付いた。

「大袈裟ね!」
「でも・・・ううん、何でもない」
「何だよ・・・言えよ」

明らかに言いたげな顔をしていたからだ。

「私はまるでそのギザ十だね」

鈍感な俺でもその意味は分かる。

「・・・かもな」
「もう行くね、ジュースありがとう」
「今度のギザ十は失くさないでよ!」
S939
(No.939完)
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[No.939-1]価値がある十円玉

No.939-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あぁー!無くなってるぅ!」
「わぁぁー!な、なによ、急に・・・」

つい、反射的に声が出てしまった。

「ご、ごめん・・・」

自販機で飲み物を買おうとして気付いた。
有ったものが無くなっている。

「な、なにが無くなったの?」
「十円玉・・・」

彼女がキョトンとした顔をしている。

「はぁ!?」
「実は・・・」

少し前に、ある十円玉を手に入れた。
それは俗に言われる“ギザ十”だ。

「・・・まぁ、聞いたことはあるけど」
「側面にギザギザの溝が掘られててさぁ」

普通の十円玉よりは珍しがられている。
多少価値があるとかないとか・・・。

「えっ!もしかして」
「ものすごく価値があったの?」

その質問には答え難かった。

「いいや・・・いいや?」
「何なの・・・その返事」

価値を調べる前に無くなってしまったからだ。

(No.939-2へ続く)

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[No.938-2]ある女の子の記憶

No.938-2

「覚えてるよ」
「まぁ・・・断片的だけどね」

何だか負けた気分だ。
歳も同じなだけに、僕の記憶力が劣っているのだろうか?

「ちなみに、自分の七五三も覚えてるの?」
「もちろんよ!」

そう言い切られると、逆に聞きたくなる。

「へぇ~じゃぁ・・・」

どこまで覚えてるか、聞いてみることにした。

「どこの神社に行った?」
「・・・神社だよ」

聞き覚えがある。
まぁ、家が隣同士だから、当然と言えば当然だろう。
自分もその神社に行った可能性が濃厚だ。

「電車で?」
「そうよ、写真に写ってる電車で」

この電車は覚えている。
というより、高校生まで通学でも使っていた電車だ。

「今は、新型車両になってるけどね」
「そうなの!?」

地元を離れてからは、この電車には乗っていない。

「それにしても、ほんとに楽しそうな写真だな」
「そうそう!随分、はしゃいでたわよ!」

・・・どういうこと?
S938
(No.938完)
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[No.938-1]ある女の子の記憶

No.938-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これって、七五三の写真?」

幼馴染が、一枚の写真を僕に手渡す。

「多分、そうだろうな」

電車の座席に、僕と母親が写っている。
おもちゃで遊んでいる僕、それを見守る母・・・といった構図だ。

「みんなそれっぽい服装だもんね」

他にもそれっぽい服装の人がチラッと写っている。
ただ、悲しいかな、記憶には全く残っていない。

「覚えてないの!?」
「仕方ないだろ・・・」

かろうじて、三歳の時の写真だとは分かる。
日付が記録されているからだ。

「だから、懐かしさは感じない」
「逆に“この子、誰?”って感じ」

他人を見ている感覚に近い。

「ほんと覚えてないの!?」
「なんだよ・・・随分、突っかかってくるな」

七五三の記憶だけがないわけじゃない。
自慢じゃないが、幼稚園以前の記憶はほとんどない。

「じゃあ、聞くけど・・・」
「お前は覚えてるわけ?」

そんな大差はないだろう・・・そう思っていた。

(No.938-2へ続く)

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[No.937-2]外を眺めていた

No.937-2

「私・・・もう少ししてから帰るね」
「ごめん、そんなつもりじゃ・・・」

同僚に悪意がないのは分かっている。
でも、週末ともなれば飲みに行く人も多い。

「いいの、いいの!」

雨女に科学的根拠はない。
けど、偶然というレベルをはるかに超えている。

「でも・・・」
「ほんと、私は大丈夫だからさぁ!」

渋る同僚の背中を、軽く押し出した。

「はいはい、いってらっしゃい!」

(・・・さて・・・戻るか・・・)

とは言え、本当にオフィスに戻るわけにもいかない。

「社員食堂で、コーヒーでも・・・」

幸いにも、飲み物程度ならまだ営業しているだろう。

(とりあえず、成り行きを見守りますかぁ!)

心の中で呟きながら、窓際の席で外を眺める。
もちろん、雨の様子を伺うために。

「さて、お手並み拝見といきましょうか!」

自分のことなのに、まるで他人事のような表現になってしまった。

「・・・ん?・・・あれ?」

ふと周りを見渡すと、数名の社員が私と同じように外を眺めていた。
S937
(No.937完)
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[No.937-1]外を眺めていた

No.937-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
徐々に“あの力”が復活して来ている。
以前にも増して、それが強くなっているようにも思える。

「最近、週末になると雨・・・だよね?」

言いたいことは分かっているつもりだ。
同僚の顔にもそう書いてある。

「・・・だね」

自分が雨女だということは自覚している。
それに、周りの人達にも十分過ぎるくらい知られている。

「復活してきてない?」
「例の・・・力」

痛いところを突いて来る。
最近なって、雨を呼び込む確立が明らかに増えてきている。

「ほら、一時期、あの力が消滅したじゃん」

例の力とか、あの力とは・・・雨女の力のことだ。
つまり、雨を降らせる力に他ならない。

「・・・そうなんだよね」
「自分でもそう思ってた」

雨が降るどころか、雨が止んでしまうこともあったくらいだ。
そんなこんなが、約1年も続いた。
それにしても、力が存在するのが前提なのには笑える。

「本当に力が消滅したと思ってたもん」
「これで、雨女の汚名返上かと・・・」

それがどこに行ってしまったのだろうか?
そうこう話しているうちにも、雨足はどんどん激しさを増している。

(No.937-2へ続く)

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[No.936-2]ロックとクラシック

No.936-2

「まぁ、あなたじゃないけど・・・」
「秋が来たってことよ」

これも秋の訪れを告げる風物詩のひとつだろう。
秋風と共に、それを運んできた。

「つい、この前までは・・・」
「あいつらだったのにね」

友人が言う“あいつら”は“あいつら”に他ならない。

「そうそう!朝から勘弁して!って感じ」
「でもさぁ、聞こえなければ聞こえないで、寂しくない?」

今度は友人が詩人ぽい。

「そりゃ・・・ね」

もう、数週間前から聞こえなくなっていた。
まるで活躍の場を失ったかのように。

「言うなれば主役交代だね!」
「うまいこというよね」

本当にそう思う。

「でも、上手くできてるよね、自然って」
「そうだね」

ロックが終わり、さながらクラシックと言ったところだろうか。
S936
(No.936完)
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[No.936-1]ロックとクラシック

No.936-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・ん?)

駐輪場に着いた時、虫の鳴き声が聞こえてきた。

「すっかり、秋ねぇ~」

鳴き声の余韻を学校まで落ち込んでしまった。

「・・・熱でもあるの?」
「おいっ!」

おそらくコオロギか鈴虫だろう。
虫に詳しくない私でも、それくらいは分かる。

「別に珍しい話じゃないじゃん?」
「そうなのよね・・・」

自分も不思議だった。
どこかで聞いているはずなのに、今朝は妙に心に残った。

「疲れてんじゃない?」
「ま、まさか!」

確かに夜更かしが日常化している。
けど、まだ若さでカバーできる年齢だ。

「すごく、心に染み入るというか・・・」
「そこまで行くと、詩人レベルね」

たかが虫の鳴き声だ。
なのに、今朝は本当に気分がいい。

(No.936-2へ続く)

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