« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »

2019年7月

[No.924-1]さっきのグー

No.924-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・あれ?)

今年は・・・いつもの年と違うかもしれない。

「やっと、出会いがあったわよ」

出勤するなり、仲の良い同僚に報告した。

「そう・・・やっぱり、セミ?」
「なんで、そうなるのよ!?」

とは言え、悲しいかな“モノ”は違うが方向性は当たっている。
私の顔にそう書いてあるのだろうか?

「ほら、その手?」
「・・・手がどうした・・・」

言い掛けて気付いた。
無意識のうちに、手が“グー”の形を作っている。

「また、“その中に”居たんでしょ?」
「・・・で、セミなわけ?」
「ううん・・・今回は違うの」

なぜかしら、エレベーターを待っていると彼らと出会う。

「今回はセミじゃなくて、バッタだったの」
「ちょっと、小さめの・・・」

薄いグレーのような茶色のような・・・そんなやつだ。
メジャーな緑のやつじゃない。

「バッタ!?」
「・・・ほんと、躊躇なくさわれるよね?」

それに関しては否定しない。
でも、だからと言って虫が好きなわけじゃない。

(No.924-2へ続く)

| | コメント (0)

[No.923-2]虹の彼方へ

No.923-2

「えーなんでぇ・・・」

もともと消えかかっていたとは言え、薄情すぎる。
自然現象に文句を言っても仕方ないけど・・・。

「ごめん・・・消えちゃった」
「別に謝ることでもないだろう?」

せっかくなので、彼と一緒に虹を見たかった。

「もう少し早く気付いてたら・・・」

スマホかざした時点でそうそうに気付くべきだった。

「相変わらず、真面目と言うか・・・」
「自然現象だろ?」
「・・・うん」

ただ、逃した魚は大きい。
例え話が適切ではないが、そんな気分だ。

「君は見たんだろ?」
「えっ・・・うん」

うっすらだった分、目には焼き付かなかった。
でも、心にはしっかりと焼き付いた。

「なら、それでいいよ」
「聞かせてくれよ、どんなだったか」

虹にどんなもへったくれもない。
けど、話したいことは山ほどあった。
S923
(No.923完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.923-1]虹の彼方へ

No.923-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
(・・・ん?)

向こうから来た人が、スマホを空にかざし始めた。

「・・・なに挙動不審な行動をしてるんだよ?」
「えっ!?わたし?」

何かあると思い、キョロキョロしたのが失敗だった。

「ほら、あの人・・・」

空になにかあるらしい。
あらためて、その方向に視線を向けた。

「・・・あっ!」

うっすらだが、虹が大きな弧を描いていた。
かなり久しぶりに見た気がする。

「ほら、見て見て!」
「いてて・・・何だよ、急に!?」

つい、彼の肩を強く、叩いてしまった。
興奮覚めやらぬうちに、彼にも見て欲しい。

「虹よ!に・・・じ・・・」

叫んでいる最中にも、さらに虹が薄くなっている。
消えるのも時間の問題といったところだ。

「虹?どこだよ」

彼が振り向いた時には、完全に消えてなくなっていた。

(No.923-2へ続く)

| | コメント (0)

ホタル通信 No.401

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.479 次の返事は
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

実話度は高めです。ただ、時系列が分かり難く、メールやら手紙
やらで、何とも収拾がつかなくなっています。

整理すればこうです。
まず、「夏季休暇には北海道に戻ってくるのですか?」のメール
が入り、返信はしたものの、これで会話は途絶えました。
その後、その返信とも言えるような出来事が冒頭のお菓子です。
そこに手紙が添えられており、過ぎ去った「夏季休暇」のことが
書かれていたわけです。

当時はLINEがなかったのでもっぱらメールでした。リアルタイム
での会話を望んでいたわけではないものの、せめて次の日くらい
には返事が欲しかったのが本音です。
場合によっては数ヶ月先に返事が来ることがあり、嬉しいやら悲
しいやら・・・複雑な気持ちになったものです。
これが恋愛のテクニックのひとつなら、彼女はかなりの上級者と
言わざるを得ません。

彼女は実在の人で、いまでも付き合いがあります。
・・・とは言うものの、その彼女が作者である“私”の可能性もある
わけですから、「冬のホタル」はどうしてこんなに面倒な小説なん
でしょうね。
T401
web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.922-2]それと同じ

No.922-2

「事情を知ってるからじゃないの?」
「色々説明しなくても・・・」

確かにそれは言える。
父親に届けていることも、写真から想像できたくらいだ。

「想像?」
「ある日、バス停の時刻表の写真が送られてきて」

“日に数本しかない”とのメッセージが添えられていた。
最初は、その意味が分からずにいた。

「プチ旅行かな・・・と思ってた」

その内、バス停と料理の写真が同時に送られてくるようになった。

「・・・それで気付いたんだ」

彼女の実家の住所も何となく知っていたからだ。
最初の内は、料理自慢か、ノロケ話を想像していた。

「気付いて欲しかったのかもね?」

最近では週末に大量のLNEが届くのが恒例になった。

「でもさぁ、何で僕なんだろうね?」
「好意を持たれているとは思えないけど」

それが嬉しい勘違いであってほしい気持ちもある。

「まぁ、女子ってそんな所があるかもね」
「なんだよ、“そんな所”って」

全く・・・相談した意味がない。

「じゃぁ、聞くけど・・・」
「どうして、私に相談したの?」
S922
(No.922完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.922-1]それと同じ

No.922-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「君ならどう思う?」

こんな話題は同姓に相談するのに限る。

「そうねぇ・・・」

とある女子社員から時々、LINEが入る。
特別親しい関係ではない。

「僕が人畜無害だから?」
「・・・そうねぇ」

二年間ほど、同じ職場で働いたことがあった。
同郷と言うこともあり、自然と会話するようになった。

「一度に大量の写真が来るときもあるんだよな」

特に多いのが料理の写真だ。

「別々に暮らす、父親へのお届けものだって」

母親が数年前に急死した。
そのため、週末だけ作って届けているらしい。

「いいことじゃない!」

だから、皿ではなく、小さなタッパに盛られている。
そこに“色気”は全く感じられない。

「だけどさ、それを僕に送るのは正解なの?」

もちろん、女友達に送るのもどうかと思う。
ある意味、返信し難いだろうし。

「そうねぇ・・・」

さすがに同姓でも考え込んでいる。
さっきから同じ返事を繰り返している。

(No.922-2へ続く)

| | コメント (0)

[No.921-2]セミと私

No.921-2

「まだ・・・だよ」
「随分、答えに時間が掛かったわね?」

それに関しては私のせいじゃない。
最初から、そう言ってくれれば十数秒で終わる話だ。

「とにかく・・・それは残念ね」
「残念?」

確かに毎年、何かしらのネタを提供してくれる。
ただ、決して笑える話ではない。

「だって、そこそこいい話を持ってくるじゃん!」
「・・・あっ・・・そ、そうなんだ」

意外な答えだった。
間違いなく茶化されると思っていたからだ。

「セミの一生って、長いと思う?」
「それとも短いと思う?」

これまた唐突に哲学っぽいことを言い始めた。

「あなたは直接、命に触れたわけだから」
「それはそうだけど・・・」

ここ数年、今まさに命の火が消えそうなセミを手にしている。

「その前に、どうしたのよ?朝からマジメな話をして・・・」

いつもの同僚らしくない。

「・・・何か悩み事でも?」

もしかしたら遠回しに相談を持ち掛けられているのかもしれない。

「私も・・・デビューしちゃったみたい」
S921
(No.921完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.921-1]セミと私

No.921-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今年はまだ?」

同僚が唐突に聞いてきた。

「・・・何よ、まだって?」

とは言え、あれこれ頭をよぎる。
心当たりがないわけじゃない。

「今時期、まだと言ったらアレしかないでしょ!?」
「あのね・・・クイズ形式はいいから・・・」

このまま進められたら面倒だ。
さっさと結論を求めた方が良いだろう。

「ユーモアが通じない人ね!」
「それって関係あるの!?」

いわゆる言い掛かりの典型的な例だ。
今風に言えば、逆ギレだ。

「アレと言えば、セミと私でしょ!」
「・・・あっ!私って言っても、あなたのことよ?」

出来ればこんな話は昼間にして欲しい。
朝は、心も体も本調子じゃない。

「で、そのセミと私がどうしたって・・・」
「・・・あっ」

言い終えて気付いた。
そう・・・今年はまだだった。

(No.921-2へ続く)

| | コメント (0)

ホタル通信 No.400

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.496 EACH TIME
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

冬のホタルは超短編を売りにしていますが、その中でも特に短い
小説ですね。ホタル通信を書くにあたり、読み返して気付きました。

実話度は低めですが、その昔、小説のようにレコードを借りたこと
がありました。仮に、レコードの発売時期に対して、リアルタイムで
これが行われていたら・・・作者の年齢がバレてしまいそうですが
そのあたりの解釈は読者にお任せします。

さて、EACH TIMEというアルバム、リンクは付けませんが、良けれ
ば検索してみて下さい。小説の内容がより身近に感じられます。
楽曲の雰囲気は、山下達郎さんのような感じですが、唯一無二の
存在感が半端ありません。
男性に透明感という言葉は似合わないかもしれませんが、独特の
声質も手伝ってそう感じています。

後半は時が流れ、ダビングしたカセットテープを見つけるところから
始まります。
再生する装置がない・・・となると、時代は一気に“現在”に飛んでい
ることになりますね。再生措置を求めて実家にラジカセがないかを
確認したら・・・あるものが見つかって、無事オチを迎えます。
何が見つかったか分かりますか?答えは“EACH TIME”のレコード
に他なりません。つまり、返していなかったわけです。
ただ、自分の名誉のために言っておけば、この部分は創作であり、
キチンとお返ししていますので。


web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.920-2]あの日のように

No.920-2

中学に入ってからは、そんな傾向はなくなった。

「反抗期?」
「・・・だな」

逆に見送りに来ない方が良かったくらいだ。
顔を合わせるだけでも、意味もなくイライラしていた。

「でもさぁ、不思議なもので・・・」

就職を気に地元を離れることになった。
そんな時、昔の自分が蘇ってきた。

「6年分の失われた時間が・・・」
「・・・一気に押し寄せてきた感じだったな」

そして、旅立ちの日を迎えた。

「しばらく過ごす寮の近くまで来てくれて」

そして駅のホームで別れた。

「・・・あの日のように?」
「あぁ・・そうだな」

唯一、違うのは“ぐずってはいなかった”ことだ。
でも・・・最後に“ぐずって”みたかった。
S920
(No.920完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.920-1]あの日のように

No.920-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
永遠の別れでもないのに泣いてしまう・・・。
小さい頃はそんな泣き虫少年だった。

「そんな感じには見えないけどね」

夏休みになると、父を残して家族で祖母の家を訪れていた。

「父は後で来るんだよね」

当時は一緒に来れないことを不思議に思っていた。
でも、今はその理由は明確だ。

「だいたい、そうよね?」
「私のうちもそうだった」

場合によっては、お盆休みが取れない時だってある。

「それで、父が見送りに来てくれるんだけど」

なぜか、その時に号泣する僕がいる。

「別れるのがつらいから?」

記憶が曖昧だが、それしかないだろう。
他に何があるのか・・・自分に聞いてみたいほどだ。

「数日後には会えるのにさぁ」

駅のホームで、“ぐずっていた”ことは鮮明に覚えている。

(No.920-2へ続く)

| | コメント (0)

[No.919-2]あなたを好きだから

No.919-2

「な、わけないでしょ?」
「だったら、あんたなんかと一緒に居ないわよ」

いつもの彼女らしいセリフだ。

「それはこっちも同じ」

僕は僕で、彼女が居ない。

「じゃぁ・・・何があったんだよ?」
「・・・先週の金曜日、覚えてる?」

覚えてるもなにも、毎週金曜日はカラオケの日と決めている。
先週も例外ではない。

「いつものひとりカラオケがどうした?」
「・・・LINEくれたよね?」

確かにLINEした。
特に意味もなく、“デンモク”を写してそれを送った。

「雰囲気出てただろ?」
「そうね」

返事が何だかそっけない。

「・・・原因はそれか!?」

逆に、“デンモク”以外はほとんど写っていない。
だから、突っ込まれようがないはずだ。

「もしかして・・・一緒にカラオケしたかったのか?」
「・・・オンチなの知ってるよね?」

そうだった。

「本心かどうか、聞いてるの!」

言っている意味が理解できない自分がいた。
S919
(No.919完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.919-1]あなたを好きだから

No.919-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
普段と違う雰囲気をかもし出している気がする
何となく、よそよそしいというか・・・。

「なんかあった?」
「・・・どうして?」

返事に一瞬の間があった。
気にしすぎだろうか・・・。

「だっていつもの元気はどこいったんだよ?」
「そ、そうかな?」

先週末あたりから様子が変わった。
今時期で例えるなら、セミ以上にうるさいはずなのに。

「もしかして・・・失恋か?」
「だとしたら、どうしてそんなに嬉しそうなのよ?」

(・・・しまった!)

つい、人の不幸を喜んでしまった。

「ごめん!ごめん!」
「付き合ってる人、居ないことぐらい知ってるでしょ?」

そう言われて見ればそうだ。
あえて聞いたことはないが、確かに居ない。

「まぁ、俺と行動してるくらいだからな」

彼女とはいわゆる幼馴染だ。
幼稚園から大学、それに就職先も同じという快挙っぷりだ。

「もしかして・・・」
「逆に彼氏ができたのか!?」

それはそれで複雑な心境だ。

(No.919-2へ続く)

| | コメント (0)

ホタル通信 No.399

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.421 名誉の傷
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

実は肝心な部分を脚色しています。筆箱を投げつけられたのでは
なく、実際はもっと痛い思いをしました。

この話は彼の話ですので、ややこしいですが、あたかも私がそれを
体験したかのような口調で進めて行きますね。
まず、全体的な流れはほぼ事実です。ただ、前述したように、筆箱
を投げつけられたのではなく、鉛筆を頭に刺されました(笑)
鉛筆が短かったので、キャップを取り付けて握りやすくしていた・・・
そんな状態の鉛筆でした。銀色の金属製のキャップがキラリと光っ
ていたことを今でも覚えています。
ただ、刺されたと言っても、突き刺さったわけではなく、刺したと同時
に芯が折れ、大した傷にはなりませんでした。

小説の通り、自分よりも相手の女子がビックリして・・・今でも申し訳
ないと思っています。もちろん悪気はなく、反射的に手が出てしまっ
たのでしょう。何よりも原因を作ったのは私なのだから。
ラスト付近で、その女子が転校したことになっていますが、この部分
は少し記憶が曖昧です。
転校したような記憶があるのですが、ハッキリとは覚えていません。
ただ、展開とラストのオチを考えた時、転校してもらった方がしっくり
くるので、そうしてもらいました。

この記事をその人が見る可能性はほぼゼロでしょうが、あらためて
「ごめんなさい」と言わせて下さい。
T399 
web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.918-2]飛び出し注意!

No.918-2

「スッキリしないけど、とにかく急ぎましょ!」

いつもギリギリで学校に到着する。
だからこそ、私の行動が気になるのかもしれない。

「そうだね!」

確かに無意識の内に、スピードが落ちている。
もしかして、このわき道は・・・

「微妙に坂になってるのかな?」
「それとも、なにか因縁がある・・・」

昔、ホラー漫画で似たようなシーンを見た記憶がある。
墓場の前を通ると、ものすごく重い老婆が背後にとり憑く。

「ちょ、ちょっと朝から脅かさないでよ!」
「もしかしたらその老婆が・・・」

自分で言っておきながら、背筋が寒くなった。
その展開では、私に“憑く”ことになるからだ。

「冗談よ、冗談!」
「そんなことあるわけないじゃん!」

・・・その時だった。

「キャァァーアッーーーー!」

友人の叫び声だった。
・・・と同時に、急ブレーキで自転車を止めた。
 
「ほら、もうすぐよ!」

あの日以来、私たちはわき道をゆっくり走ることにした。
モヤモヤしていた理由がハッキリしたからだ。
S918
(No.918完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.918-1]飛び出し注意!

No.918-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「前から思ってたんだけどさぁ・・・」
「なによ、あらたまって」

とは言うものの、今、言う必要があるのだろうか?
学校に着いてからでもいいはずなのに。

「この辺りになると、ゆっくり走ってない?」
「・・・ゆっくり?」

正直、自分の走りを気にしたことはない。
いつも通りの速度で自転車を漕いでいるつもりだ。

「多分、このわき道に入ったら・・・だと思う」

わき道と言っても、自転車でも十分すれ違うことができる。

「学生が歩いてることが多いから?」

自分のことなのに疑問形になってしまった。

「それはこっちのセリフだよ!」
「・・・だよね」

自分では意識したことはない。
だから、本音を言えば私が聞きたいくらいだ。

「強いて言えば走り難いからじゃない?」
「今は草刈してるからいいけど・・・」

しばらくすれば、また生えてくるだろう。
そうなると、このあたりは雑草でうっそうとなる。

「まぁ・・・そう言われたらそうだけど」

自分でも分からないまま、わき道を先に進む。

(No.918-2へ続く)

| | コメント (0)

[No.917-2]新しい生活

No.917-2

「まだ、引きずってるわけ?」
「・・・まぁ・・・な」

あの日、声を掛けられたこと。
そして、それに応えられなかったこと。

「大袈裟かもしれないけど」
「そんなこと、人生においてはよくあることじゃない?」
「な、なん・・・」

言い掛けた気付いた。
彼女にはそれを言う資格がある。

「そ、そうだよな」

彼女は数年前に母親を亡くした。
いわゆる突然死で、日常に突然幕が下りた。

「そうそう!」
「だから、もう気にしないの!」

新しい気持ちで、その家の前を通れそうだ。

「今度はどんな人が住むのかしら?」
「また、“おばあちゃん”だったりして・・・」
「おいおい・・・」

時々、ブラックジョークにも似たセリフを投げ付けてくる。

「冗談よ、冗談!」

とは言え、可能性はゼロではない。

「全く・・・勘弁してくれよ・・・」

誰かの新しい生活は、僕の心残りに終わりをもたらしてくれた。
S917
(No.917完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.917-1]新しい生活

No.917-1     No.856-1 売物件

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あっ」

小さく声が漏れてしまった。

「ほら、以前、話したことがあっただろ?」
「・・・何だか聞いたことがあるフレーズね?」

そう言えば、話の切り出し方が前と同じだった。

「まぁ、それはさておき・・・」

さっさと話を進めたい。

「・・・ということは例の家?」
「よく覚えてるな!?」

それなら話が早い。

「今日、敷地内に車がとまってて」

いわゆる営業車や工事車両じゃない。
一般の乗用車だ。

「・・・ということは」
「あぁ、入居者が決まったみたい」

以前から、業者らしき人が出入りしていたのは知っていた。
だから入居に向けた動きは察知できていた。

「そう・・・」
「・・・うん」

関わりが全くゼロではないため、少し複雑な気分だ。

「けど、それはそれで良かったんじゃない?」

僕にとっては、ある意味そうかもしれない。

(No.917-2へ続く)

| | コメント (0)

ホタル通信 No.398

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.456 ちらし配り
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

今まで何度も思ったことですが、小説ネタに苦労しているというか
着眼点が独創的というか・・・。

実話度は高めで、後半を除けば概ね書いてあることは事実です。
小説のきっかけがチラシであることは間違いないのですが、それ
よりも、それを配っていた人の印象の方が強く残りました。
確かにチラシはウザイのですが、配っている人に罪はなく、逆に
キチンと仕事をしているからこそ郵便受けがチラシで溢れ返って
しまいます。
今でも、配っている最中に出くわすことが時々あり、微妙な空気の
中、チラシや郵便物を回収しています。

冒頭に書いたように、こんなことまで小説にするとは、我ながら笑
ってしまうほどです。
冬のホタルはこのような、“エピソードにも満たない小さな事実”を
見つけて小説“風”に仕上げています。質はさておき、独創的な着
眼点なら、他の方々にも負けていないとは思います。

ラスト付近はほぼ創作です。
ありがちですが、数年後に結婚したという設定です。あれほどウザ
かったチラシが役に立った・・・ということでしょうね。
T398
web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.916-2]中二から

No.916-2

「中二なったら、クラス替えがあっただろ?」

それからの彼女に何があったか知らない。
いや・・・そこから目を背けていた。

「違うクラスになってホッとした?」
「・・・正直に言えば・・・そうかもしれない」

クラスが違えども、様子を見に行くことはできる。
高校になってからは駅で何度か彼女を見掛けたこともあった。

「・・・声、掛けてくれればいいのに?」
「ごめん・・・後ろめたくて・・・」

高校生にもなると、さすがに僕らの関係を知る者はいない。
だから、彼女が標的になることもなかったはずなのに。

「ほんと・・・変わらないね!」
「やさしいというか、気が弱いというか・・・」

事実を知ることが怖くて、彼女から逃げていた。

「でも、今頃どうして?」
「うん・・・実は・・・」

就職のため、住み慣れた地を離れることになった。

「そうなんだ・・・」
「だから、最後に謝っておこうと思って」

意を決して、彼女の家を訪ねた。

「・・・スッキリした?」
「ごめん・・・一方的に・・・」

やはり、蒸し返してしまったことに変わりない。

「そう思うなら、もう一度やり直す?」
「中二から」
S916
(No.916完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

[No.916-1]中二から

No.916-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なぁ、覚えてる?」
「・・・何を?」

もし、忘れているのだとしたら蒸し返すことになる。
できれば忘れていて欲しい。

「ほら・・・なんていうか、中一の時・・・」
「・・・なんだ、そのこと?」

やや拍子抜けするような返事が返ってきた。

「もちろん!忘れるわけはないわ」
「・・・だよな」

彼女とは小学生から仲が良かった。
それは中学生になっても続いた。

「気にしてるの?」
「そりゃ、そうだろ!」

やや強めの口調で返した。

「あれから何年経ってると思ってるのよ?」
「君だって、忘れてなかっただろ?」

中学に入ると、急に異性を意識し始める。
ただ、それは男子よりも女子の方が先だ。

「まぁ、そう言われたらそうだけど」

僕たちの仲の良さは、一部の女子から反感を買った。
ただ、その矛先は全て彼女に向けられた。

「ずっと気になってて・・・」

露骨なイジメこそ無かったが、彼女は孤立した。

「へぇ~そうなんだ?」

興味がなさそうな返事がかえって、胸が苦しくなる。

(No.916-2へ続く)

| | コメント (0)

[No.915-2]君の名は

No.915-2

「・・・えっ・・・と・・・何だっけ・・・な」
「ビーチとかで見かけるやつよね?」

確かにそう見えなくもない。
けど、少なくともうちの家族は、室内だけで使っていた。

「ん~・・・思い出せない」

独特なネーミングだった気がする。
何となく、響きが良いような・・・。

「ほら、どれも幸せそうな顔してるじゃん!」

逆に自分では気づかなかった。
それにしても、それと一緒に写っている写真が多い。

「よほど好きだったのね」

記憶では折りたためたはずだ。
使わない時は、部屋の隅に置かれていた記憶もある。

「涼しそうね!」
「そうね、夏はこの上で・・・」

風通しも良いし、ビニール素材でひんやりしていた。

「けどよく怒られもしたわ」
「飛び跳ねないように・・・ってね」

子供程度なら多少跳ねても大丈夫だった。
クッション性も高かったからだ。

「話を戻すけど、名前は?」

残念ながら、ボンボンと飛び跳ねている光景しか思い出せない。
S915
(No.915完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0)

« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »