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2019年3月

[No.903-2]鬼の形相

No.903-2

「つまり、出会い頭?」
「そう・・・」

寸前で、なんとか衝突は免れた。

「で、謝ろうとしたら・・・」

先に向こうから謝ってきた。

「これがお店の人だったら、私は一応“お客様”だから・・・」

謝られるのも分かる。
でも、配送の人にとって、私は直接的なお客様ではない。

「これだけでも、十分、驚いたのに」

店内をウロウロしていると今度は私が彼の進路を妨げてしまった。

「それなのに、向こうから先に“すみません”なんだもん」

社員教育が行き届いていると言えばそれまでだ。
でも、私にはそれ以上のものを感じた。

「・・・私もそう思う」
「これが、顔が穏やかな理由ね?」

そのお陰で、鬼の形相が消えたと思う。
今だにその余韻も残っている。

「素敵な人ね」

だからと言って、映画やドラマのような展開は期待していない。
もしかしたら“鬼の形相”にひるんでいただけかもしれないし。
S903
(No.903完)
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[No.903-1]鬼の形相

No.903-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・どうしたの?」
「今日は顔が穏やかよ?」

そう・・・昨日、ちょっと良いことがあったからだ。

(・・・今日は?)

「なによ!“今日は”って!?」

時間差で気付いた。
軽くディスられている。

「だって、最近は鬼の形相だったじゃない?」
「うぅ・・・それは・・・」

かなり酷い表現だが、心当たりはある。
失恋と年度末の仕事の忙しさが加わり、荒れていた。
心もお肌も・・・。

「だから、ちょっと安心した」
「・・・ごめん、ありがとう」

そんな私を昨日、ある出来事が癒してくれた。

「聞いていいわよね?」
「もちろん!」

会社の帰りにコンビニに立ち寄った。
その時、入り口付近に配送のトラックが停まっていた。

「私が店内に入ろうとしたら・・・」

配送の人も、商品を店内に入れるところだった。

(No.903-2へ続く)

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ホタル通信 No.391

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.447 折れない心
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

当ブログの準レギュラーとも言って良い、家庭菜園の話です。
今年も種まきの時期がやってきましたね。

強風が吹いたある日の朝、1本だけ根本から折れていました。
小説に書いた通り、シャープペンの芯のような細さですから、
無理もありません。
小説では「今でも折れたまま」と、放置しているような書き方で
すが、実際は“あて木”をしています。あて木と言っても、元が
細いですから、爪楊枝をあて木の代わりにしました。
今にもちぎれそうな茎ですが、それでも成長を続ける姿に感動
すら覚えました。
ただ、感動すら覚えた経験なのに、これが最後まで育ったの
かはハッキリとは覚えていません。枯れてしまった記憶がない
ので、成長はしたと思うのですが・・・。

そんなこんなを自分と重ねてみました。
タイトルは“折れない心”にしていますが、小説のメッセージと
して「折れても構わない、支えてもらえばいい」です。
強い風に吹かれて折れてしまってもそれで終わりじゃない・・
当時の自分に言い聞かせたものです。
トマトの双葉に励まされるくらいですから、大した悩みではなか
ったのかもしれませんね。

今年はどんな話題を提供してくれるのやら・・・楽しみです。
T391

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[No.902-2]明るくなってきたね

No.902-2

「え・・・あ・・・そ、そう!これから行かない!?」

何ともぎこちない返事が悲しい。

「・・・なにか引っ掛かるけど・・・そうね」

意外な展開になってしまった。
でも、これはこれで“あり”だ。

「じゃ、私が案内するよ」
「・・・いいの!?」

これまた意外な展開だった。
どちらかと言えば、私が誘ったのに。

「どうせ・・・知らないんでしょ、気の利いた店?」
「エヘヘ・・・」

あまりアルコールは得意じゃない。
それは友人も知っている。

「だったら、無理しないの!全くもぉ・・・」
「ごめん、ごめん!」

友人の顔に少し笑顔が戻ってきた。

「でも・・・ありがとう」

やはり、気付いていたようだった。

「・・・何のこと?」

一応、とぼけてみる。

「ううん、何でもない・・・明るくなってきたね」
S902
(No.902完)
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[No.902-1]明るくなってきたね

No.902-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「随分、明るくなってきたわね」

以前ならこの時間は、もう真っ暗だった。
日ごとにそれが顕著になっている。

「そりゃそうでしょ、もう3月よ?」
「あはは・・・そうよね・・・」

(・・・バレたかな?)

友人は勘が鋭い。
日常会話に見せかけた私の言動に気付いた可能性がある。

「明るくなったら、良いことでも?」
「そ、そうね・・・」

珍しく問い詰めてくる。
いつもなら、軽く受け流すだけなのに。

「ほら!飲みにも行けるじゃん!」

言い放って気付いた。
それは明るい、暗いに関係ないことを・・・。

「・・・それはそうね」
「えっ!?」

意外な反応に驚きを隠せなかった。

「そ、そういうこと!」

ここはそう言うことで乗り切ろう。

「・・・で、今から行くわけ?」

正直、そこまでは考えていなかった。

(No.902-2へ続く)

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[No.901-2]父の仕事

No.901-2

「タイトルがなかったら、何だか分からなかったよ」

そこには働く父が描かれていた。
母親曰く、実際に勤め先まで行って書いたらしい。

「そうなの!?」
「けど、全然記憶になくて・・・」

父は工場で、設備関係の保守をしていたらしい。
絵にもそれらしい雰囲気が出ていた。

「煙突がたくさん描いてあったよ」
「工場だけにね」

手には工具らしき物を持っていた。

「よく観察してるな」
「よほど印象に残っていたみたいね」

その時、気付いた。
父の仕事を、“今”知ったと。

「正しくは・・・忘れてた・・・だけどね」
「無理もないさ」

いつの頃からか、父と距離が生まれ始めた。
結局、それは最後まで解消できなかった。

「そうなんだ・・・ところで、その絵は?」
「せっかくなんで飾ってる」

私の部屋じゃなくて、父の部屋に。
S901
(No.901完)
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[No.901-1]父の仕事

No.901-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「ねぇ・・・聞いていい?」
「えっ!?な、なんだよ・・・」

話の流れであることを思い出した。

「なによ、その慌てぶりは・・・」

(まぁ、こんな聞き方すれば男性ならあせるか)

「冗談よ、私の聞き方が悪かったわね」
「・・・脅かすなよ」

やましい気持ちがゼロではなさそうだけど、今回はスルーしよう。
これが目的ではない。

「父親の仕事知ってる?」
「・・・」

彼が考え込む。
そうなってしまうのも分からなくもない。

「聞いたことないな」
「先週ね・・・」

実家に立ち寄った時、母が一枚の絵を見せてくれた。
絵と言うより、殴り書きに近いレベルだったが。

「幼稚園の時に書いたらしいんだけど」

タイトルは“おとうさんのしごと”になっていた。
へたくそな文字ながらも、かろうじてそう読めた。

(No.901-2へ続く)

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ホタル通信 No.390

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.416 タイムマシン
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

ホコリまみれのCDが、本棚の後ろから見つかったのは事実です。
事実はこれしかありません。

ハッキリとは覚えていませんが、もし、これがCDではなかったら
このような展開になっていなかったと思います。
つまり、この小説の肝は“何が見つかったのか”に他なりません。
多少こじつけ感はありますが、CDから元カレに結び付け、最終的
には“想い出”にまで至ります。
ここまでなら、一般的にありそうな話なので、ここからもう少しだけ
展開させてみました。

血やDNAが騒ぎ出す・・・くらいまで想い出を誇張させてみました。
タイトルでもあるタイムマシンに繋げるためです。
言わば「体中に広がる想い出の記憶」をタイムスリップに見立てた
わけです。
ラストの意味は分かりますか?特にひねりもなく、そのままの意味
です。
ただ、自分の中では「想い出深いCDを聴く」のも答えだし、CD以外
の別の品物から想い出にふける・・・ということも想定しています。
ここは何かひとつの答えを用意するよりも、読者の方々の想像に
お任せしようと考えました。

事実が少ない商業的な匂いがする小説ですが、作者の雰囲気は
よく出ています。やや空想癖があるような、ないような。
T390

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[No.900-2]暖かくなると・・・

No.900-2

「遠回りする?」

手で払いながら、通れないことはない。
けど、まれに見る大群だ。

「も、もちろん!」

来た道を引き返す。

「何とかしてほしいよね?」
「あぁ・・・」

とは言え、あいつらの発生を抑えることは難しい。

「まぁ、こんな日はおとなしくしてることだな」

出歩くから遭遇する。
ならば、出歩かなければいい。

「予想もできるわけだからさ」

気温の変化が大きいと出てくるのは分かっている。

「それに川のそばを通らなければいい」

やつらは水辺を好むみたいだ。

「そう言えば、何で急に出掛けようなんて・・・」
「だって、朝から暖かかったでしょ?」

なんだよ・・・同じじゃん。
S900
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[No.900-1]暖かくなると・・・

No.900-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁー!!」
「もぉ!ちょっと早くなぃ?」

彼女が隣でもがいている。
原因はアレらしい。

「確かに」
「多分、今日が暖かいからだろ?」

専門家じゃないから、正しいとは言えない。
ただ、経験的にそう言える。

「こいつらさぁ、季節の変わり目に出てくるだろ?」

ある意味、分かりやすいやつだ。

「いい迷惑よ!」
「服や髪にも・・・ほら・・・」

蚊のような小さな虫が、点々とくっ付いている。
名前は特に知ろうとは思わない。

「取ってあげるからさぁ」
「機嫌直せよ・・・」

気持ちは分かる。
口や目に入り、その気持ち悪さは半端ではない。

「それにしてもやけに多いな」

視線の先に、群れを成しているのが分かる。

(No.900-2へ続く)

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[No.899-2]YATAI

No.899-2

「初めてみた・・・」
「・・・俺も」

昔のテレビドラマに出てくる定番中の定番の屋台だ。
土台がリアカーゆえに、もちろん人力で動いている。

「でも・・・すごくうまそうに見えるよな」
「それは言えてる」

少し離れた位置からでも、湯気が上がっているのが見える。
それだけでも食欲をそそる。

「雰囲気がそうさせてるんだろうな」

多分、“本当の味”自体はそう期待できない。
けど、雰囲気という魔法の調味料が加われば・・・。

「そして、年老いた主人が・・・」

会話に割り込むでもなく、聞き流すのでもない。
そこに、独特の時間が流れて行く。

「・・・まぁ、ドラマ・・・ではね」
「だな」

期待がどんどんと膨らんでくる。
加えて、一人前の大人になった気もする。

「じゃ、入るぞ!」

勢いよく、かざり程度の、のれんをくぐる。
そこにはファンキーな若者が一人立っていた。
S899_2
(No.899完)
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