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2018年5月

[No.838-1]星が好き

No.838-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「私も好き!」

このセリフが両想いの始まりなら、どんなに素晴らしいことか・・・。

「でも、周りには星ではなくて・・・」
「宇宙が好きってことにしてるけどね」

星が・・・では、メルヘンチック過ぎる。
男子としては、やはり硬派に行きたいところだ。

「変な所に拘ってるのね?」

ただ、今は星よりも宇宙そのものに興味がある。

「私もそうよ!宇宙に存在するもの全てが好き!」
「そうなの!?」

僕の場合、それを通り越して、物理学にも興味が出てきた。

「・・・へんかな?」

専門書を読めば読むほど、切っても切れない関係だと分かった。
もちろん、言うほど理解はしていないが。

「ううん、変じゃないよ!」

話が下火になるどころか、どんどん大きくなって行く。
異性で、ここまで盛り上がるのも珍しい。

「いつか、満天の星空を見に行きたいね」
「うん・・・でも、ここじゃ・・・」

見えるのはネオンの灯りだけだ。
満天の星どころか、夜空さえも見えない。

「ハワイなんてどう?」

以前、旅行のパンフレットで見掛けたことがあった。

(No.838-2へ続く)

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[No.838-2]星が好き

No.838-2

「いいね!でも、どうしてハワイのパンフ・・・」
「えっ!?たまたまだよ」

この言葉に嘘はない。
貧乏学生には、ハワイは色んな意味で遠すぎる。

「ふ~ん・・・誰かと行くのかと思った」
「・・・かもしれないけどな」

一応、軽く見栄を張る。
もちろん、そんな人は居ないし、予定もない。

「そうなんだぁ・・・」

話の方向が少し変わってきた。
戻したほうが良さそうだ。

「とにかく・・・ハワイがおすすめ!」

この話は、このあたりで終わりにしよう。

「いいわよ、考えとくね」
「じゃ、決まりだな!」

一応、相手のノリに付き合うことにした。

「そう言えばさぁ・・・さっきのセリフ覚えてる?」
「“宇宙に存在するもの全てが好き”って言ったじゃん」

覚えてるも何も、印象に残っている。
かなり、個性のある発言として聞こえたからだ。

「あぁ・・・それが?」
「“全て”には、あなたも入っているよね?」

言葉の意味からすれば、そうなる。

「そうなるけど・・・どういうこと!?」
S838
(No.838完)
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ホタル通信 No.359

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.334 ばいばい
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

シチュエーションはかなり違いますが、根底に流れる別の意味
を持たせた“バイバイ”については事実です。

当時、少しギクシャクした関係が続いていた中で、「どうにでも
なってしまえ!」という感情で、バイバイとメールを打ったことが
ありました。もちろん、文章自体はごく普通でした。
今思えば、焦っていたのか、小説の通り、イラだっていたのか
分かりませんが、とにかく文章の裏に隠されていた感情は一言
で言えば、かなり攻撃的なものでした。

ただ、メールを送った後、我に返り、慌てて別のメールを送った
のも小説の通り事実でした。
前述した通り、攻撃的なのは感情だけであり、文章自体はごく
普通だったので、それが相手に届くはずもありません。でも、不
思議なもので、それが彼に伝わってしまったのです。
冷静に考えれば、そのメールだけが原因ではないと思いますが
結果的に、それが引き金となってしまいました。

ある意味、駆け引きだったのかもしれませんね。多分、直接的
に真実を知ることが怖かった・・・そう、自分自身を分析します。
T359

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[No.839-1]永い話

No.839-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
「若い頃は、出張を楽しめなかったんだよな」
「逆に若い時こそ、楽しめるんじゃないの?」

彼が急に、昔話を始めた。
それも、仕事の話だ。

「それこそ、“逆”だよ」
「仕事をこなすだけで精一杯で・・・」

仕事が終わったら真っ直ぐ帰る・・・そんな日々だったと言う。

「それはそれで普通のことなんだけどな」
「・・・だね」

むしろ、それの方が正解だろう。
仕事を名目にした観光の話も世にはびこっている。

「仕事もお金も余裕がないし・・・」
「それ以前に、心にも余裕がないからね」

分かる気がする。

「それでも年齢を重ねて行くと・・・」
「・・・余裕ができた・・・と?」

彼が小さくうなづいた。

「地元の美味しいものを食べたり・・・」
「ちょっとした観光もするようになったんだ」

もちろん、プライベートな時間だろう。
それにこれが仕事に生きることも少なからずあるだろう。

「それ以上に、リフレッシュできるからね!」
「自分自身へのご褒美みたいなものね?」

彼が満面の笑みを浮かべた。

(No.839-2へ続く)

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[No.839-2]永い話

No.839-2

「今は、出張に行く前に下調べしたりして」
「あはは!どっちがメインなの?って感じね」

自分自身へのご褒美だとは言った。
でも、見方を変えば・・・。

「そうでもしなければ“やってられない”から?」
「だな!」

彼が笑顔で応えてくれた。

「だから、意地でも観光してやるぞ!って」
「とにかく、手ぶらで帰るのだけは避けたくて・・・」

形があるお土産のことを言ってるのではないだろう。

「ところで、君は?」
「・・・私?」

気付けば、彼の話の聞き役になっていた。

「私も・・・同じようなものね」

行って帰るだけの出張に嫌気がさしていた。

「色んな所に少し余裕ができてきたんだ」

だから、スイーツが話題の店に、並んでいる。

「でも、ちょっと場違いかな・・・」

スーツ姿の私たちは浮いた存在だ。

「でも、話しかけて良かったよ」
「なんとなく、同じ匂いがしたんでさぁ・・・」

私に続いて、彼が列に並んだ。
そして、見ず知らず通しの会話が始まった。
S839
(No.839完)
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[No.840-1]濃い本

No.840-1

登場人物
shadow男性=牽引役
-----------------------------
時々、なんの前触れもなく、写真が届く。
それが、分かりやすいものなら苦労はしないのだが・・・。

(何だよ・・・また、悩ませる気か?)

知り合いの女性から、LINEが届いた。
そこには一枚の写真が添えられていた。

『色んなジャンルの本を読んでるね?』

見たままを返した。
ただ、何かに偏っているような気がしないでもない。

「・・・今度は何だよ!?」

すぐに返信が届いた。
けど、また本の写真だった。

「“老人の取扱説明書”・・・」

すぐさま、あることが頭をよぎった。

「まさか、お父さん?」

母親は数年前に、亡くなっている。
そうなれば、必然的にそう考えてしまう。

「仕事には関係ないだろうし・・・」

職場は違えども、仕事の内容は知っている。

『身近な人?』

やんわり、聞いてみた。
直球では聞きにくい。

「今度は何!?」

また、すぐに返事が届いた。

「“かどとすみの違いを言えますか?”・・・って何だよ!?」

正しくは、返事ではなく、新たな本の写真だった。

(No.840-2へ続く)

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[No.840-2]濃い本

No.840-2

「・・・ったく、いつもこんなんだよな」

彼女の返事は決まって、写真かスタンプだ。
ただ、嫌われているからではないと思う。
その証拠に、ほとんど彼女の方からLINEが来るからだ。

(そっちがその気なら・・・)

『濃い本をお願いします』

意地悪く、返事を返した。
最初の写真に、気になる本が数冊あったからだ。

「どれを選んで返してくるかな?」

僕の返信の意味が分からないわけではないだろう。
“濃い”に隠された意味が分かれば“あの本”を選ぶはずだ。

「さてさて・・・」

もう、返事が届いても良い時間だ。
でも、うってかわって、返事が届かない。

(・・・悩んでいるんだろうな)

こちらの思惑通りだった。
“あの本”を選ぶと、多少、波風が立つ可能性があるからだ。

「ん!?」

それとは全く関係がない、ビジネス書の写真が届いた。
タイトルがやたら長い本だった。

(逃げたな・・・)

あえて、あの本を避けたと考えて良いだろう。

『無難な本だね』

さっきよりも、さらに意地悪い返事かもしれない。
ただ、正直に言えば、少し“あの本”の話がしたかった。

「“不倫の教科書”って・・・彼女、らしいけどな」
S840
(No.840完)
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ホタル通信 No.360

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.337 うまくいかない
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

今も作者の年齢や性別は不明にしていますが、時々、あからさ
まに“仕事”の小説を書くことがあります。

作者を「学生」だと思っている人は居ないとは思いますが、ここ
まで仕事について踏み込んで書いた小説も珍しいと思います。
実話度は低めですが、概ね、私のポジションを描いた小説です。
どこにでもあるな話だけに、私の職場も例外ではありません。
でも、小説のきっかけは「現場と本社が常々衝突している」とい
うことではありません。

小説のきっかけは、後半の「仕事なんて上手く行かないのが日
常じゃない?」のセリフにあります。
これに似たセリフ、あるいは文字を見聞きしたことがあったから
でした。これが妙に記憶に残り、これを機に少し気持ちが楽にな
りました。
とは言え、そうそう失敗しているわけではないのですが、小説で
はそれを大げさに表現しています。

後半はお約束の恋愛話に結び付け、意味ありげなセリフと共に
ラストを迎えています。
ちなみに、最後の一行の意味分かりますか?そんなにひねった
ものではないので。
T360

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[No.841-1]夢の河

No.841-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「なぁ・・・君の夢ってなに?」

「えっ!?うちの?」

あまり触れてはいけないことだと思っている。
でも、聞かずには居られない。

「確か、専門学校だよね?医療系の」
「そうやで」

以前、学校の寮に住んでいると聞いたことがあった。

「将来の夢は看護師?」
「う~ん・・・どやろ・・・」

珍しく考え込んでしまった。

「夢やなくて、単なる仕事やね」

イメージとは違う、案外、クールな答えが返ってきた。

「そ、そうなんや・・・」

焦って、僕まで大阪弁になってしまった。

「夢とか、そんなんやない・・・」
「もっと、リアルなもんやね」

真意は分からない。
けど、何を言いたいのかは理解できる。

「生きていくため・・・だよね?」
「・・・まぁ、そんな感じ」

夢の話のつもりが、現実味を帯びた話になってしまった

(No.841-2へ続く)

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[No.841-2]夢の河

No.841-2

「でも、急にどないしたん?」

自分でもよく分からない。
何かを思い付いたように、勝手に口から出てしまった。

「う、うん・・・」
「せやったら、あなたの夢は?」

雰囲気を察してか、逆に質問されてしまった。

「僕の!?」
「うちに聞くくらいやから、あるんやろ?」

もちろん、無いわけではない。
ただ、僕も彼女とどこか似ている答えだ。

「大企業がいいな」
「・・・うちと変わらへんやん!」
「だな・・・」

僕らの境遇は似ている。
夢を語るより、現実しか見ていない。
いや・・・正しくは現実しか見えない。

「それ、夢ちゃうやん!」
「仕方ないだろ?」

この後、二人して大笑いした。
recycle
今でも、時々、頭をよぎることがある。

「・・・渡れたのかな?夢の河を」

振り返り、人混みの中に彼女の姿を探した。

(No.841完)
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[No.842-1]真っ赤なス-パーカー

No.842-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
爆音と共に、1台の車が通り過ぎて行った。
車に詳しくない僕でさえ、それがスーパーカーだと分かる。

「・・・すごいな」
「そうね」

彼女も通り過ぎて行った車を目で追う。
また、周りの人たちも同じだった。

「いかにも!って車だよな」

それこそ、目が覚めるような“赤”だった。
これで目立たないわけがない。

「ほんと、すごい車ね」

独特のフォルムは、日本車を凌駕している。

「・・・やっぱり、気になる?」
「車のこと?」

さっきから、周りの女性陣もザワついている。
何となく理由に察しは付いている。

「やっぱり・・・」
「そうね・・・気にならない方がおかしいわね」

予想はしていたものの、生で言われるとショックが大きい。

「白馬の・・・じゃないけど、そんな感じだよな?」
「そうね、少なくても成功者だろうね」

それに、どうしても運転者がイケメンだと思ってしまう。
ドラマの影響かもしれないが・・・。

「イケメン?あはは、そうかもしれないね」

笑いが気にはなるが、やはりそう思っているらしい。
見ず知らずの人に、ジェラシーを感じる。

(No.842-2へ続く)

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[No.842-2]真っ赤なス-パーカー

No.842-2

「あんな車で迎えに来られたら誰だって・・・」

注目の的だろう。
ドラマとかなら、ついでに花束も持ってたりする。

「女性なら、イチコロじゃない?」

彼女は違うと信じたい。
でも、さっきからの言動からすれば・・・。

「それはどうかな・・・」
「違うの!?」

イチコロはないにしても、心は揺れるだろう。

「だって、さっき、目で追ってただろ?車を」
「それに気になるって・・・」

男として、見えない敵に負けた気分だ。

「確かに目で追ったし、そうも言ったよ」
「だって・・・うふふ」

肝心な時に、笑いで誤魔化そうとしている。

「なんだよ!」
「ごめん、だって・・・」

僕の追い詰められたような顔を見て、笑ったらしい。
失礼な話だが。

「あんな、うるさい車が通り過ぎたんだもん・・・」
「目で追うし、気にもなるよ」

つまり、好意的な行動ではないらしい。
逆に、迷惑だと言わんばかりの表情だ。

「私はごめんだよ、あんな車」
S842
(No.842完)
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ホタル通信 No.361

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.339 絆
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

う~ん、かなり説明調の小説ですね。何かを言うために、必死
に説明しているように感じます。

実話度はほぼゼロです。はっきりと覚えてはいませんが、話の
きっかけは、ラストの1行「人と人とのネットワーク」だったと思い
ます。
このフレーズをどこから入手したかは別にして、このフレーズか
ら、人と人との繋がり・・・その行き着く先として、“絆”という言葉
を主軸にしました。冒頭お話しした説明調の展開は、この“絆”を
言いたいがための伏線だっとも言えます。

また、世相も反映させたような話になっています。
当時はスマホではなくケータイであり、また、LINEではなくメール
の時代です。LINEのようにリアルタイムではなく、ややタイムラグ
がありながら友人と連絡を取り合っているさまを描いています。
この頃から見れば、良くも悪くもコミュニケーションの取り方は大
きく変わっています。

振り返ると、なんだかメールも味がありますね。
相手が読んでくれたのか、読んでいないのかが分かりません。
内容によっては、返信が来るまでのドキドキ感が半端ではありま
せん。
結局、返信が来ずに終わることもあります。でも、妙な達成感は
ありますよ。あれ?話の方向がズレてしまったかも(笑)
T361

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[No.843-1]笑顔があふれる場所

No.843-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「ほら、川沿いに公園あったじゃん?」

多分、これだけでも会話が成立する。

「それがどうしたの?」
「少し前から工事してたんだよね」

最初は取り壊されるのかと思った。
でも、ただの改修工事だった。

「ずいぶん、荒れてたもんね」

それこそ、取り壊されてもおかしくない状態だった。

「先週、その工事が終わったみたいなんだ」

近くに置いてあった重機の姿が見えなくなった。
それに、囲いもなくなっていた。

「きれいになってた?」
「そりゃ、もう!」

今にも朽ち果てそうな椅子も、今では懐かしい。
それに、新しく加わったものもあった。

「加わった?」

それに気付いたのは、それを見たからじゃない。
それに集まる人だかりを見たからだった。

(No.843-2へ続く)

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[No.843-2]笑顔があふれる場所

No.843-2

「なんなの!?そのクイズみたいなもの・・・」
「花壇だよ、か・だ・ん!」

今までなかった花壇ができていた。
大きくはないが、それらしく囲まれていた。

「肝心の花は、これからみたいだけどね」

ちょっとしたビニールハウスのようなものもあった。
とにかく、何かを期待させる作りだ。

「へぇ~、楽しみぃ!」

それもあってか、そこに人が集まるようになった。
今までにはない光景だった。

「なんか色んなこと話してるみたい」

話の中心は、花壇のことだとは思う。
時々、それを指さしながら、話しているからだ。

「まぁ、単なる世間話もあると思うけど」
「でも、いいんじゃない・・・それで」

友人の言う通りだ。
花壇がどう形作られるかより、集う人たちに注目したい。

「みんな、いい笑顔だったよ」

それこそ、話に花が咲いていた。
S843
(No.843完)
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[No.844-1]なにもない

No.844-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「ねぇ・・・」

誰かに呼ばれた気がして、辺りをキョロキョロしてしまった。

「・・・もしかして呼んだ?」

一気に彼女の表情がこわばる。
雲ひとつない青空に、雷鳴が響き渡りそうな予感がする。

「さっきから、何度か呼んでるわよ」

周囲に人がいるせいか、控えめな対応だ。
逆にその方が怖い。

「ご、ごめん・・・」
「・・・ちょっと考えごとしてて」

嘘ではない。
視線の先にある草むらが、さっきから気になっていた。

「草むらって、あれのこと!?」

彼女がその草むら指さした。

「そうだよ」
「何も・・・ないよね?」

ごく当たり前の反応だ。
実際、草以外、何もない。

「あぁ・・・何もないよ」

ちょっとした禅問答のような会話になってしまった。

「どうしたの?考えごとなんて」

(No.844-2へ続く)

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[No.844-2]なにもない

No.844-2

考えごとをするつもりはなかった。
けど、草むらを見ていたら、思い出がよみがえってきた。

「小さい頃、土手の草むらでさぁ・・・」

寝転がれば、姿が見えなくなるほどだった。
そこで、青空を仰ぎ、風の音を聞く。

「実家が町の外れだったから」

車もほとんど通らなかった。

「そこで、何もしないことが最高の遊びだったな」
「何もしないのに?」

もちろん、草むらで友達と遊ぶこともあった。
でも、行き着くところはいつもそれだった。

「地球に包まれているって感じだったよ」
「大げさね・・・」

彼女がクスクスと笑い出した。
雷鳴は何とか避けられたようだ。

「あの草むらを見て・・・そんなことを考えてたんだ?」

場所こそ違えども、雰囲気は似ていた。

「そりゃ、草むらだもん!似てるでしょ!?」
「・・・だよな」

初夏の他愛無い会話だった。

「でも、なんだか見えたような気がする」

彼女が僕を見てつぶやいた。
S844
(No.844完)
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ホタル通信 No.362

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.351 孤独のかげ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

タイトルからして、何だかヘビーな感じが漂う小説です。でも、読
んでみると、そこまでヘビーな内容ではありません。

会話の内容は概ね事実です。高校を中退、そして一人暮らしを
始めた彼女。ただ、一人暮らしと言っても、正直に言えば、家を
飛び出しています。
小説では一人暮らしとなっていますが、実際は居候みたいな状
態でした。ですから、見た目上、一人暮らしではありません。
また、居候と言っても、悪く言えば、全くの他人の家に転がり込
んだようなものでした。

ですから、実際は一人暮らしではなく、見た目は同居ということ
になります。ただ、彼女にとっては心休まるな場所ではなく、生
きていくための苦渋の選択でもあったわけです。
彼女がそのような状態にあったので、あえてシチュエーションを
一人暮らしにしました。

冒頭、「そこまでヘビーではない」と書きましたが、事実が明らか
になると、少しヘビーさが増してきます。
でも、彼女の持ち前の明るさというか、暗い出来事でもサラっと話
してくれるところに、僕自身が助けられていました。ラスト付近は、
手前味噌ですが、大変好きな表現方法です。
T362

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