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2017年8月

[No.777-1]ライバル出現

No.777-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
「・・・嫌いだっけ?」

彼が切り分けた桃にフォークを刺したまま動かない。

「ん・・・なに?」

“心ここにあらず”とは、まさしくこんな状況を言うのだろう。

「桃、嫌いなの?」
「まさか!嫌いどころか大好きだよ!」

嫌いな果物はないと聞いていた。

「それなら、どうして箸が・・・じゃなくてフォークが進まないの?」
「あっ・・・ごめん」

そう言うと、桃を一口ほおばった。

「美味しいな!」
「答えになってないけど?」

気になったので話を戻してみた。

「・・・俺の家族って、5人じゃない?」

彼がおもむろに口を開いた。

「分かってるよ」

とは言え、彼の兄弟とは、まだそんなに親しくはない。
これから・・・といった感じだ。

「でね、果物を家族で食べる時・・・」

当然、ひとりひとりの取り分が少なくなる・・・。
彼がそんなことをしゃべり始めた。

「桃なんかさぁ・・・」
「ひとりで一個・・・なんてなかったから」

そう言うと、もうひとつ桃を口に運んだ。

(No.777-2へ続く)

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[No.777-2]ライバル出現

No.777-2

「だから、今、不思議な気持ちなんだよね」

私はそんなに桃が好きではない。
桃に限らず、果物が全般的にだが。

「独占できるから?」
「あぁ・・・嬉しいような悲しいような」

小さい頃は、お腹一杯食べたい欲求があったのだろう。
けど、今はそれを実現できている。

「・・・そうね、わかる気がする」
「まぁ、贅沢な悩みかもしれないけど」

満たされてしまうと、冷めてしまうことがある。
これもそれと良く似ている。

「“足りないくらいが丁度いい”のかもな」

そう言うと、またひとつ桃を口に運んだ。

「ほんとに好きね」
「言ったろ?嫌いな果物は無いって」

私がそんなに食べない分、ほぼ彼が独占できる。
でも・・・。

「さっき、足りないくらいが・・・なんて言ってたじゃない?」
「あぁ・・・それがどうした?」

良い機会だ。
この際、言ってしまおう。

「もう少ししたら、足りなくなるかもよ?」
「・・・どういう意味?」

彼が不思議そうな顔をする。

「取り分が少なくなるってこと!」
「それって・・・もしかして・・・」
S777
(No.777完)
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ホタル通信 No.328

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.362 移り行く季節
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

住んでいる近くに、桜が植えられている通りがあります。そこで
は毎年、小説のように花びらの“雨”が降っています。

別に有名な通りではありませんが、それなりの数が植えられて
おり、桜が散り始める時期にそこを通ると、それこそ“びしょ濡れ”
になってしまいます。
そんなシチュエーションを拾ってみました。小説では恋愛の話が
展開されていますが、これについては創作です。今でもそうかも
しれませんが、何でもかんでも恋愛に結び付けてしまうパターン
の小説です。
桜の花びらを雨に見立てて話を構成しているせいか、失恋の話
でもそんなに悲しくは感じません。これが本当の雨だったら、悲
しいというより、“悲惨”な光景になります。
春、桜、そしてそこに居る私達を、想像して頂ければと思います。

ラストシーンですが、何かしらの意味を持たせていたつもりなの
ですが、今となってはピンと来ません。
新たな決意というか、次の恋への前触れとでも言えば良いので
しょうか・・・多分、このような意味を持たせていた気がしています。
ただ、これは実際に起きた現象であり、風に舞い飛んで行ってし
まう様子をそれっぽく描いたものです。
T328

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[No.778-1]明日のエネルギー

No.778-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「同じ人?」
「・・・どうだろう」

ブログの解析結果だけでは、イマイチ判断がつかない。

「今まで拍手なんて、ほとんどなかったから」

それがある日を境に、劇的に増えるようになった。
けどそれは、閲覧する人が増えたからじゃない。

「同じ人が熱心に、拍手ボタンを押してくれてたと思う」

お世辞にも万人受けするブログではない。
そんな中、痕跡を残してくれることに随分、励まされた。

「けど、一時期、それが途絶えたことがあって・・・」

時を同じくして、小説の質が落ちている自覚があった。
質と言っても、テクニックや内容ではない。

「そもそも、テクニックなんて持ってないし」
「じゃぁ、なにが?」

小説の根底を成す“日常”に対して、鈍感になっていた。
それは実話や実話をベースする上では致命的となる。

「安っぽく言えば、ネタ切れなんだけど」

でも、根底は崩したくなかった。

「それを見透かされたのかな・・・って」
「よく見てくれている人だけに、考えられるわね」

けど、しばらく経ってから、また拍手されるようになった。
ほぼ毎日と言っても良い。

(No.778-2へ続く)

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[No.778-2]明日のエネルギー

No.778-2

「だから、前と同じ人かどうか分からない」
「質が戻ったから、帰ってきてくれたのかな?」

残念ながら、質はさほど戻っていない。

「だったら、理由があって“今まで来れなかった”だけかもね」
「そう考えるのが妥当かな」

もちろん、今は以前と違う人が応援してくれている可能性もある。
ただ、繰り返しになるが、万人受けしないブログだ。
そう何人も熱心なファンが居るとも思えない。

「随分、謙虚ね」
「自分の実力は分かってるつもり」
「それに・・・」

もともと、自己満足のブログだ。
それにある人のためだけに立ち上げた。

「いずれにせよ、有り難い話ね!」

ひとつの拍手が、どれだけ自分の支えになっているか・・・。

「でも、こんな話してていいのかしら?」
「拍手してくれる人に、変な気を遣わせることにならない?」

それは十分考えられる。
でも、それを承知で“文字”にした。

「普段のお礼は、こんなことくらいしかできないから」

感謝の気持ちを小説にする。
創作の世界と現実が入り乱れた不思議な感覚だ。

「小説の中では、あなたは女性それとも男性?」
「そうね・・・今回は“女性”にしようかな」
S778
(No.778完)
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[No.779-1]あの駅

No.779-1

登場人物
virgo女性=牽引役
-----------------------------
ぼんやりとテレビを見ていた。
道行く人が、何かのインタビューを受けている。

「あれ?」

何となく見覚えのあるアングルだ。
なんだか胸のあたりがザワザワする。

「もしかして・・・」

改札を抜けたすぐ目の前が、待ち合わせの場所だった。
そこで合流して、駅の構内を出る。

「確か、構内を出たら右に曲がって・・・」

そのアングルは曲がった時に見える景色に似ている。
ただ、駅の周辺は比較的、似ていることも多いだろう。

「もう少し右よ、右!」

インタビューしているカメラのアングルが変わり始めた。
私の気持ちを察してか、右に大きくパンした。
ビルの間から高架が見える。

「・・・だよね?」

タイミングよく見覚えのある電車が通過した。

(・・・と言うことは)

もう少し右に、旅行会社があったはずた。
今でも残っているならば。

(No.779-2へ続く)

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[No.779-2]あの駅

No.779-2

「もうちょっとみぎぃー!」

思わず力んでしまった。
ただ、今度ばかりは私の気持ちを察してはくれなかった。

「そうだと思うんだけどなぁ・・・」

多分、間違いないと思う。
けど、もう少し確信を持ちたかった。

「・・・どうしてるかな」

あの駅だと決まったわけじゃない。
でも、一気に想い出がよみがえってきた。

「ある意味、サプライズかな」

アレやコレやと、随分、独り言をしゃべってしまった。
そうこうしている内に、インタビューも終わろうとしていた。

「何だか名残惜しいな」

もう二度とその駅を訪れることはないだろう。
それはあの時から決めていたことだ。

「けど、あの駅じゃなかったらお笑いね」

もし、そうだったら、私の感傷を返して欲しいところだ。
その時、レポーターがある言葉を発した。

「・・・やっぱり!」

そのレポーターは“・・・駅から・・・”と中継を締めくくった。S779
(No.779完)
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ホタル通信 No.329

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.248 未来日記
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

小説の前半が、なんだかとてもクドイですね。これが重要な伏線
になるわけでもないのに。

いきなり核心から入るパターンもあれば、この小説のように関係
ない部分から入るパターンもあります。前者と後者を、意識的に
使い分けてはいませんが、日常感を色濃く出したい時は、後者の
手法を用いることが多いと思います。
小説の前半は、ほぼ更新の話がメインであり、ここに“未来日記”
に対する伏線は設けていません。あくまでも二人の間でブログが
日常的なコミュニケーションであることを言いたかっただけです。

結局、この小説は彼女が未来日記と称した、未来の行動を予測し
た記事を書くと、僕がその記事の通り行動する・・・というのが本筋
です。
もちろん、彼女も僕もそれを知った上での言わば、“出来レース”
です。ですが、お互いそれを口にはしません。
そんなある日、「プロポーズをする」ということは記事に書かれてい
たが、「指輪を渡す」ことまでは記事にはなく、それを僕が実行した
ことで初めて未来日記がハズレる・・・というのがオチです。

全般的に事実ではありませんが、未来日記と称した記事を書く人
と知り合いだったことで、この小説が生まれました。
また、小説前半の更新の話も、これに似たことが実際に起きてい
たために、日常感の演出という意味で採用しています。
T329

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[No.780-1]大切なのは

No.780-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
さっきから彼が対面する女性を見つめている。

「そんなに魅力的?」
「・・・なんのこと?」

一応、“キョトン”とした顔を見せてきた。

「なんのことって・・・」

電車の中とは言え、聞こえるとまずい。
行儀は悪いが、“あご”で場所を指し示した。

「なになに!?」

余計、困惑させてしまったかもしれない。

「目の・・・前の・・・女性・・・凝視・・・してたでしょ?」

彼の耳元でささやいた。
これくらいなら、電車の音に十分かき消される。

「なんだ・・・あぁ、見てたよ」

全く悪びれた様子もなく、堂々としている。

「ちょっと、何よ!その態度・・・」

普通なら慌てふためいて、言い訳するはずだ。

「態度って・・・ただ、見てただけだろ?」

そんなことは、せめて私と一緒じゃない時にして欲しい。

「よく平然と言えるわね?」

“申し訳ない”感が微塵も感じられなかった。

(No.780-2へ続く)

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[No.780-2]大切なのは

No.780-2

「そりゃ、そうだろ・・・」
「女性そのものを見てたわけじゃないんだから」

ようやく、言い訳がましいことをしゃべりだした。

「・・・それなら胸?それとも脚?」

直球を投げ込んだ。
悔しいけど、胸も脚もその女性のほうが上だ。

「どっちでもないよ」

それなら・・・。

「・・・だから、女性そのものを見てたんじゃない」
「かばんだよ、手提げかばん」

確かに雑誌の付録のようなかばんを持っている。
お世辞にも高級そうには見えない。

「そのかばんがどうしたのよ!?」
「ほら、読んでみてよ」
「・・・読む?」

あらためて、カバンを見た。

「・・・何か書いてある」

何やら英文が書かれていた。

全然気付かなかったのが不思議なくらい大きな文字で。

「えっ・・・と・・・」

“Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow”

「なんて意味?苦手でさぁ・・・」
S780
(No.780完)
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[No.781-1]来年の夏も

No.781-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「また来年も来るからね!」

若干、場違いな声の大きさだったかもしれない。
周りの人が一斉に私の方に振り向いたからだ。

「す、すみません・・・」
「・・・もう!相変わらずなんだから」
「つい・・・」

とは言え、必要以上に静かにしているのもおかしい。
むしろ、うるさいくらいが丁度良いと思う。

「じゃっ、帰ろうか?」
「うん」

一応、最後だけは神妙なおももちで、その場を後にした。

「もう・・・10年か・・・」

友人がボソッとつぶやいた。

「・・・そうね」

あっと言う間の10年だった。

「来年は11年目だね」
「再来年は・・・」

友人がごく当たり前のことを言い始めた。

「・・・だね」

私もそれに素直に応じた。
不思議とそんな気分だった。

「もんしろちょうが飛んでるね」

何の脈略もなく、見たままを言い放った。

(No.781-2へ続く)

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[No.781-2]来年の夏も

No.781-2

一匹のもんしろちょうがユラユラと飛んでいる。
ただ・・・。

「ねぇ・・・」
「・・・うん、わかってる」

まるで私たちの歩調に合わせるかのような動きだ。
つかず離れずという言葉が似合う。

「偶然だよね?」

友人があえて同調を求めてくる。

「そりゃそうでしょ!?」

場所が場所だけに、そんなことも考えてしまう。

「けどさぁ・・・去年は・・・」

供えた花に一匹のミツバチらしきものが寄ってきた。
“美味しそうな花”は至るところに咲いているというのに。

「そうよね・・・わざわざ、私たちの花だけに」

その時はさほど気にはしていなかった。
けど、似たようなことが続くと・・・考えてしまう。

「今年は“もんしろちょう”に姿を変えて?」
「・・・かもしれないね」

そうこう話している内に、いつの間にかもんしろちょうは消えていた。

「また・・・来るからね」

来年の夏も、きっと待っててくれるはずだ。
S781
(No.781完)
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ホタル通信 No.330

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.260 眼鏡の理由
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

悪い意味で「う~ん」と、うなってしまう小説です。テーマが悪いと
言うより、文章も構成も稚拙です。

とは言え、“眼鏡の理由”は事実です。目が悪いくせに、普段眼鏡
は掛けず、コンタクトもしていません。そんな状態なので、元カレど
ころか、道行く人の顔なんていつもぼやけています。
元カレとよく出掛けた場所に近づくと、おもむろに眼鏡を取り出して
周りをキョロキョロ・・・。居ないと分かっていても、ほんのわずかな
可能性を信じての行動でした。今、振り返ると笑ってしまいますが。

話の主軸はハッキリしているのに、何だか全体に読み難く、文章の
繋がりも違和感があります。もともと、会話の間に入る“牽引役”の
言わばナレーションも会話の一部として、物語の進行に大きくかか
わっています。これはこの小説だけではなく、全ての小説に言える
ことです。
今回の小説は、主軸をもっと泥臭く書いたほうが良かったのかもし
れません。いまだに元カレのことを想う未練がましい女だと・・・。
それをオブラートに包んで書いてしまったことで、中途半端な小説
になってしまいました。

ただ、読み返してみるとちょっと胸が熱くなります。実際は小説ほど
軽いものではなく、当時は“本気”で元カレを探していたんですよ。
S330

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[No.782-1]彼と同じ

No.782-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
「・・・あれ、ひどくないか?」

彼が小声で話しかけてきた。
どうやら、前を行く女性のことを言っているようだ。

「まぁ・・・そうよね」

その女性は犬の散歩をしている。
ただ、その散歩の仕方に問題があるかもしれない。

「問題アリアリだろ?」

彼が食い下がってくる。
確かに見た目には、よくない行為として映る。

「ワンちゃんはそんなに嫌がってない・・・よね?」

けど、あくまでも私がそう感じるだけだ。
実際はそうではないかもしれない。

「そりゃ、喜んでいるようには見えるけど・・・」

飼い主はスケボーのような物に乗っている。
それをワンちゃんに引っ張ってもらっている。
言わば“犬ぞり”のような状態だ。

「でも、小形犬だろ?」
「いくら飼い主が小柄だとしても・・・」

彼の言い分も最もだ。
相当、気合を入れて引っ張っているようだった。

(No.782-2へ続く)

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[No.782-2]彼と同じ

No.782-2

「でもさぁ・・」
「こうするのが、好きなのかもしれないし」

繰り返しにはなるが、決して見た目はよくない。
けど、飼い主との関係は当事者でないと分からない部分もある。

「・・・それは否定はできないけど」
「世の中にはさぁ・・・」

変わったクセを持つ動物は山ほどいる。

「引っ張るのが好きなのかもしれないよ」
「それに飼い主が付き合ってあげてる・・・なんてことも」

ただ、誤解を生むことは間違いない。
今の時代、撮影されネットに投稿されることもあるだろう。

「ほら、見て・・・」
「・・・やっぱり嬉しそうじゃん!」

時より飼い主の方を振り返りながら、しっぽを振っている。

「それなら、いいんだけど」

心配になる気持ちも分かる。
犬好きの彼にとってはなおさらだろう。

「まぁ、俺と同じということで」
「・・・同じ?なにが?」

彼が突如、意味不明なことを言い出した。
S782
(No.782完)
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[No.783-1]手の温もり

No.783-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
(・・・ん!?)

どこからともなく、ジジジ・・・と言う音が聞こえてきた。
今にも消えそうな何とも弱々しい音だ。
recycle
「今年も?」
「・・・そうみたい」

今年はもう“ない”と思っていた。
ここ1週間、セミの大合唱を聞いていなかったからだ。

「で、どこにいたの?」
「いつものエレベータホールよ」

まるで、壊れかけのおもちゃのような音だった。

「ジジ・・・ジ・・・ジジ・・・なんてさぁ」

今年は壁ではなく、床でひっくり返っていた。

「相変わらず、やさしいわね?」
「まぁ・・・ね」

続きを話さずとも私の行動は、見透かされている。

「今回はどこに?」
「手ごろな木を選んで“乗っけた”わ」

私の手には消え行くセミの命が伝わっていた。
木に“しがみつく”力さえ残っていないと。

「でも・・・これで良かったのかなってね」
「どうして?」

昔々のあることを思い出したからだ。

(No.783-2へ続く)

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[No.783-2]手の温もり

No.783-2

「小さい頃、近所に子犬が捨てられてて・・・」

ただ、その日は土砂降りの雨だった。

「見るに見かねて」

さすがに家には連れて帰れなかった。
だから、せめて雨に当たらないようにと・・・。

「人目に付きにくい所に大きな土管があって」

子供なら立ったままでも悠々と入れる大きさだった。

「・・・そこに連れていったんだ?」
「うん・・・」

子供らしい素直な行動だった。
けど、時々思い出すことがあった。

「人目に付かない場所・・・だから?」
「うん、誰にも拾われない可能性がある」

私の行動で子犬の死期が早まってしまうこともあるだろう。

「だから、セミも」
「カラスとかの格好の餌食になっちゃうかな・・・と」

元気なら逃げることも可能だろう。

「そのまま床に転がっていたほうが・・・」
「そうかな?あなたの手の温もりで癒されたと思うよ、きっと」

そう言うと、私の手を握りしめてきた。
S783
(No.783完)
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