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2017年6月

[No.762-1]パイナツプル

No.762-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
「懐かしい~!」

ひとりの小学生が大股で私たちの横を通り過ぎて行った。
ある言葉を発しながら。

「えっ!?なにが・・・」
「・・・知らないの!?」

冷静に考えれば、知らない可能性もある。

「ほら、さっきパ・・・」

話し終える前に、次の言葉が聞こえてきた。

「ほら、これ!」
「これって・・・“チョコレート”ってこと?」

一般的にはこれで正しい。
でも、この遊びの場合は微妙に違う。

「正しくは“チヨコレイト”だよ」

彼の困惑した顔もうなづける。
何が何だか分かっていないだろうから。

「最初から教えてくれない?」
「あのね・・・」

じゃんけんの派生的な遊びだということを話した。

「“グー”はグリコで・・・何だっけ?」
「三歩、進めるのよ」

“パー”はパイナツプル、“チョキ”はチヨコレイト。
勝てばその文字分だけ進める。
そのためだろうか、文字をハッキリ発音する。

(No.762-2へ続く)

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[No.762-2]パイナツプル

No.762-2

「ちょっとした、スゴロクみたいなものよ」

ただ、これが始まると、大変だ。
なかなか家までたどり着けなくなる。

「途中で、断念したこともあったなぁ・・・」

友達が先に進みすぎて、見えなくなる。
そうなると、じゃんけんそのものがままならない。

「そりゃそうだろ・・・」
「でも・・・今でもこの遊び、やってるんだね!」

お金も道具も必要ないし、今すぐできる。
まさに小学生にはうってつけの遊びだ。

「僕は初めて知ったよ、この遊び」
「ちょっと、してみる?」

彼がうれしそうに首を縦に振った。

「じゃぁ・・・いくわよ!」
「のぞむところだ!」

彼がどんどん先に進んで行く。

「くっそぉ~!“ビギナーズフラッグ”ってやつね!」

それでも私もだんだんと追いついてきた。

「すぐに追い越してやるからね!」

ただ、あることを忘れていた。
そのせいで、あかね雲は星空に変わった。
S762
(No.762完)
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[No.763-1]スポーツドリンク

No.763-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
それ自体は随分前から発売されていた。
ただ、“飲んではいけないもの”として認識していた。
recycle
「スポーツドリンクって飲む?」

友人にさりげなく聞いてみた。

「そうね・・・頻繁には飲まないけど」
「これからの季節にはいいよね」

確かに水分補給が必要な夏にはピッタリだ。

「でも、突然どうしたの?」
「まぁ・・・その・・・」

別に隠すようなことはひとつもない。
なのに、口ごもってしまった。

「飲んだこと・・・ないとか?」
「あるにはあるんだけど・・・ただ・・・」

飲んだのはつい最近だ。

「えっ!?そうなの」
「飲めないの?」

さながら、お酒の話に聞こえる。

「ううん・・・“飲まなかった”の」
「どうして?」

そこには、それなりの理由があった。

(No.763-2へ続く)

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[No.763-2]スポーツドリンク

No.763-2

「是非、聞きたいわね!」

あの不透明さも手伝って、薬の印象を持っていた。
それにスポーツドリンクという名も手伝って。

「スポーツする人が飲む、なんて言うか・・・」
「栄養剤?」
「そう!それ!」

普通の人は飲んではいけない・・・。
子供心にそう思い込んでしまった。

「確かに、子供には怪しく見えるよね」

だから、口にすることがなかった。

「けど、今ならそれが何であるか、理解できてるでしょ?」

友人の言うとおりだ。
でも、子供心に刻まれた“何か”は思いのほか深い。

「そうなんだよね・・・」
「そんなあなたがなぜ、口にしたの?」

水のペットボトルを取ったつもりだった。

「間違えてスポーツドリンクを取ってしまって・・・」
「それってさぁ・・・」

友人が何かを懸命に考えている。

「誰の?」
「誰のって・・・あっ・・・」
S763
(No.763完)
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ホタル通信 No.321

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.244 ニアミス
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

ほんの少しだけ演出は入れていますが、ほぼ実話です。初期の
作品ということもあり、リアルに仕上がっています。

ほぼ実話というくらいですから、実際にこのようなことがありました。
待ち合わせ場所の変更、変更した理由、そしてその理由である彼
とのこと・・・書いてある通りです。
“彼と上手く行っていないけど、別れずに付き合っている”理由は
単純です。彼女には行き場所がないからです。だからといって、
そこが安全地帯でもありません。この小説では、この辺りの事情
は省略しています。

当ブログを読んで頂いている方は、この彼女が誰なのかすぐに
分かると思います。隠す必要もないのですが、あえて伏せてみま
した。
全体的な構成としては、コミカルな印象を持つ人もいらっしゃると
は思いますが毒々しさも見え隠れしています。そもそも小説上の
僕との関係がありますよね?ニアミスの危険性がありながら、そ
れでも逢う二人って・・・。

でも、ラストはそんな毒々しさとは無縁です。
彼女との待ち合わせ場所を、ある場所からある場所に変えたの
は、リラックマの売り場がそこにあったからです。この売り場を起
点にした小説も書いているんですよ。
T321

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[No.764-1]やさしい人

No.764-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「・・・あっ!」

気付いた瞬間、天と地が数回、入れ替わった。
recycle
「どうしたの!?その傷・・・」

本当は隠したかった。
けど、隠せるほど小さなものではなかった。

「・・・自転車で転倒しちゃって」

特に左腕を擦りむいてしまった。

「痛そうね・・・」
「まだ、ヒリヒリするよ」

幸いにも大きなケガには至らなかった。
けど、すりキズや打撲は残った。

「石ころでも踏んづけたの?」
「ううん・・・そうじゃないんだけど」

理由を言うべきか迷う。

「じゃぁ、なに?」
「まぁ、ハンドル操作を誤ったから・・・かな」

嘘は付いていない。
結果的にそうなったからだ。

「どうせ、朝からボーと、してたんでしょ?」
「そ、そんなとこかな・・・」

これで話が終息するのであれば、我慢も必要だ。

「・・・追及もここまでにしておくよ」

時より、痛そうな表情をワザと見せ付けてやった。
追求の手が休まることを期待して。

(No.764-2へ続く)

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[No.764-2]やさしい人

No.764-2

「とにかく、気をつけてね」

普段なら、とことん追及されるところだ。
今回は、多少オーバーな演技が功を奏したようだ。

「ところで君も自転車だろ?」
「気をつけろよ」

最近、自転車の事故も増えている。

「そうね」
「あなたみたいにならないように気をつけるわ」

そんな会話から、1週間が過ぎた時だった。
recycle
「まさか・・・」
「その、“ま・さ・か”よ」

僕と同じように、自転車で転倒したらしい。

「なんでまた!?」
「石ころ?」

1週間前と同じ展開だった。

「ううん・・・そうじゃないんだけど」

聞き覚えのあるセリフだった。

「じゃぁ、なに?」
「そのぉ・・・ハンドル操作を誤ったの」

展開が同じだ。
僕の場合は、“アレ”が目の前を横断していた。
それを避けようとして・・・。

「もしかして、毛虫が関係してる?」
S764
(No.764完)
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[No.765-1]消えてしまいたい~風~

No.765-1    [No.608]消えてしまいたい

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「・・・私の場合?」
「あぁ、一番理解できる立場だと思って・・・」

唐突にあることを聞きたくなった。
無責任だけど、周りの雰囲気が僕をそうさせた。

「そうね・・・」

しばらく沈黙が続く。
この沈黙の長さが、心のキズの深さでもある。

「私の場合はね・・・」
「・・・私の場合だからね!」

それは理解しているつもりだ。
皆が同じ考えだとは思っていない。

「ただ、消えてしまいたいだけ・・・」
「でも、死ぬことじゃない」

彼女はつらい子供時代を過ごした。
彼女の居場所はどこにもなかった。

「私は居たいの、この世界に」
「けど、誰にも気付いて欲しくない」

人の目に怯えて暮らしてきた。
クラスメート、そして・・・親までも。

「まぁ・・・私の場合はねっ!」

明るく締めくくるのが、彼女らしい。

(No.765-2へ続く)

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[No.765-2]消えてしまいたい~風~

No.765-2

「ごめん・・・今更、こんなこと聞いて」

彼女に、辛い記憶を思い出させることになった。

「別にかまわないよ」
「逃げたってしかたない・・・事実だもん」

当時は、聞こうにも聞けなかった。

「ごめんな、一番つらかった時に」
「仕方ないよ、だってほら・・・」

彼女の言いたいことは分かっている。

「触れれば、壊れそうだったからでしょ?」
「う、うん・・・」

そんな時、あの言葉を聞いた。

「消えてしまいたい・・・か」

振り返るようで思い出すようなそんな表情だった。

「それでも・・・ね」

急に声のトーンが変わった。

「消えたとしても、あなたのそばに居たかった」
「・・・この風のように」

彼女と初めて出逢った海沿いの道を歩いている。
時より激しく吹く風に、僕達は肩を寄せ合った。
S765
(No.765完)
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ホタル通信 No.322

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.246 大人な私
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

今回の実話度は微妙な判定かもしれません。実際に小説のよ
うな会話がなかったのに、40%と高めにしました。

彼女が言う“大人”が僕にとっては強がりにしか見えないこと、
また、あるところは子供のままであること・・・これらは全て事実
です。でも、このような会話があったわけではありません。言い
たくても言えなかった、僕の心の内を文字にしました。
例えば、無礼な人が居たとする。彼女は、その無礼さに対して
指摘する。でも、そんな人なんて世の中にはたくさん居ますよ
ね?だから、気にしないでいられること、許せることも大人な対
応です。
それに真正面からぶつかることが、僕にしてみれば子供のよう
に見えました。

小説にも書きましたが、彼女にとって大人にならざるを得ない
状況であったのは間違いありません。悪く言えば、たかが子供
が背伸びして大人な振りをしているに過ぎません。
彼女にとっての“大人”とは、サバイバルであり、緊急避難でも
あります。でも、そうでもしなければ生きていくことができないく
らい、追い詰められていたのも事実です。
T322

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[No.766-1]目やに

No.766-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「お前・・・すごい“目やに”だな」

持っていたポケットティッシュで、そっと目の周りをぬぐった。
recycle
「・・・ごめん・・・怒ってる・・・よね?」

1時間の遅刻だ。

「あなただったらどうなの?」

怖いくらい冷静な対応だ。

「普通、お、怒るよね・・・」
「待ち合わせの時間、何時だっけ?」

ジワジワ攻めてくる。

「え・・・っと、10時かな・・・」
「・・・かな?」
「いえ!10時です!」

一言一句、裁かれているような感じがする。

「今、何時だっけ?」

僕の腕を掴み、長袖のシャツを捲り上げた。

「どう?これで良く見える?」

嫌味っぽく、腕時計を露出させた。
必要以上によく見える。

「ごめん!予期せぬ出来事があって・・・」
「なによ、そのよき・・せぬ・・・で・・・」

最後まで言い切る前に、なぜだかトーンが下がって行った。

(No.766-2へ続く)

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[No.766-2]目やに

No.766-2

「そ、それなら、仕方ないわね」
「聞かないの?」

“予期せぬ出来事”なんて、追及の格好の的だ。
それが事実でも事実ではなかったとしても。

「なにを?」
「なにをって・・・“予期せぬ出来事”だよ」

多少なりともそこに弁明の余地がある。
ただ、それを認めてくれるかどうかは彼女次第だ。

「別に聞いたって仕方ないでしょ?」
「仕方なくはないよ」

僕としては出来れば聞いて欲しい。

「・・・もう、いいから、行くわよ」

意味も分からず許されるのも、これまた気持ちが悪い。

「さっきまであんなに怒ってただろ?」

なんだか、立場が逆転してきた。

「気が変わったの!」

シャツを捲り上げられたところから、様子が一変した。
一応、捲り上げたシャツを確認してみる。

(・・・別に変わったところはないよな?)

唯一、猫にじゃれつかれて、抜け毛がそれなりに付いている。
これが遅刻の原因でもある。

「もしかして・・・これ?」

彼女が無類のねこ好きだったことを思い出した。
S766
(No.766完)
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[No.767-1]彼の背中

No.767-1

登場人物
virgo女性=牽引役  shadow男性=相手
-----------------------------
「懐かしいよね~」

反対側の歩道を小学生の集団が歩いている。

「今頃の時間なら、集団下校だろうな」

これから遠足という時間ではない。

「だよね・・・ほら!」

それぞれの集団の先には、高学年らしき人が居る。
飛びぬけて背が高いからすぐ分かる。

「俺らの時代も、こうだったよな」

私たちの学校は、毎週土曜日がそれだった。
運動場に集められ、一斉に下校する。

「そうそう!校長先生の長~い話があってさぁ・・・」

私達相手に、空気を読んではくれなかった。

「けど、何となくワクワクしただろ?」
「うん!それはあった」

ただ帰るだけなのに、妙な高揚感があった。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんの存在が大きかったよな」

先頭は、6年生が務めてくれた。
その背中に、憧れすら感じたほどだ。

「・・・で、そうこうしているうちに」

私もその立場になった。 

(No.767-2へ続く)

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[No.767-2]彼の背中

No.767-2

「それだけで、責任感と言うか・・・」
「集団下校“あるある”だよ、それ」

いっぱしのリーダー気取りだったのかもしれない。
けど、それなりの行動はしたつもりだ。

「ある意味、これも教育だよね」
「あぁ、大切なことだと思う」

6年生の背中を見て育ち、それを受け継いだ。

「どうだった?」
「えっ!?なにが・・・?」

彼が唐突に何かを質問してきた。

「なにがって・・・背中だよ、俺の背中!」
「背中が・・・どうしたの?」

分かっているけど、とぼけてみた。

「見てただろ?当時!」
「・・・あぁ、その背中ねぇ~」

私が1年生の時、彼は6年生だった。

「別に・・・たいした背中じゃなかったわよ」
「そうなの!?」

本当は頼りになるお兄ちゃんだった。
その背中で私達を守ってくれた。

「じゃぁ、逆に私は?」
「小さ過ぎて、どこにいるかわかんなかったぞ」
「もう!失礼ね!」

そんな二人が今は肩を並べて歩いている。
S767
(No.767完)
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ホタル通信 No.323

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.255 個性
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

あらためて読んでみると、ちょっと読み難かったですね。良くも
悪くも作者の“個性”が出ています。

猫との出会いは事実です。それも小説と同じく、食堂脇に陣取
り、エサを貰おうと出待ちをしているようでした。ただ、その猫が
お世辞にも綺麗とは思えず、毛は汚れ顔は目やにでいっぱい
でした。それに嫌悪感を抱く私と全く気にしない彼。その対照的
なふたりを描いてみました。作者はこのどちらかになります。
猫が嫌いなわけではありませんが、とても野生過ぎて、私的に
は無理なシチュエーションでした。
でも、彼はそんなことを全く気にする様子もなく、じゃれついて
いました。もしかしたら、彼のそんな所に惹かれたのかもしれま
せん。

ラストに、「人ってね・・・案外、そんな所に惹かれるものだよ」と
あります。彼は彼で、私のちょっと変わった部分を好きでいてく
れました。
悪く言えば、薄汚い一匹の猫ですが、彼にして見ればキラキラ
と輝いて見えていたのでしょうね。単に野良猫に同情していたと
は思えない行動でした。もしかしたら私にはできない行動に、少
し嫉妬していたのかもしれません。
T323

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[No.768-1]きっと届いてる

No.768-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「そう言えば・・・さぁ・・・」

今まで、聞くべきか聞かざるべきか迷っていた。

「・・・あのこと?」
「よく分かるな!?」

僕の神妙な雰囲気を感じ取ったらしい。

「いずれ聞かれると思ってた」

1ヶ月前、2週間ほどLINEのやり取りが途絶えたことがあった。

「ずっと気になってて」

いつもなら、特に意味がないスタンプがしきりに飛んでくる。
僕も、さほど意味がないスタンプを返す。
それが僕らのコミュニケーションでもあった。

「そうよね」

それがある日を境に、2週間ほど途絶えた。

「嫌ならいいよ」

気になってこちらから送っても返信はない。
それどころか、既読にすらならない。

「そうじゃないんだけど・・・」

極端に言えば、ケンカの最中でもスタンプは来ていたくらいだ。
だから、今回は異常事態とも言える。

「ごめん・・・話したくないなら」

二人の間に原因となるものはなかったはずだ。
だからこそ・・・あることが脳裏をよぎって聞けずにいた。

(No.768-2へ続く)

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[No.768-2]きっと届いてる

No.768-2

その気になれば、周りの人に聞くこともできた。
でも、あえてしなかった。

「誰にでも必ず巡ってくることよ」
「僕にも?」

彼女が大きくうなづいた。
やはり、僕が考えていた通りのようだ。

「ごめんね・・・隠すつもりはなかったんだけど」
「言うのも・・・ね」

気持ちは分かる。
進んで他人に話すようなことでもない。

「構わないさ」
「そんな気がおきないよな」

土日を挟んで数日間、会社を休んでいたことも知っていた。
だからこその結論だった。

「落ち着いた?」
「うん・・・もう、1ヶ月が過ぎたからね」

確かにいつもの彼女に戻りつつあった。

「じゃぁ、またスタンプでも」
「うん!今まで送らなかった分、まとめて送るからね!」
recycle
いつも通り、スタンプが飛んでくるようになった。
“ありがとう”のスタンプがやけに目立つ。

「きっと届いてるよ」

天から彼女を見守る人が、もうひとり増えた。
S768
(No.768完)
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[No.769-1]間一髪

No.769-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「えいぃ!」

閉まりかけたドアノブを、間一髪で掴んで引いた。

「な、なにしてるのよ!?」
「なにって、見たまんまよ」

もう少し遅ければ、完全に閉まっていた。

「分かってるけど・・・」
「そこまでしなくても」

「そうだけど・・・」

いちいちパーソナルカードをかざすのが面倒なだけだ。
今はどこもかしこもセキュリティがうるさい。

「閉まったら、開ければすむことじゃん!」

それでもつい体が反応してしまった。

「いつかケガするわよ」

確かに無理な体勢でドアノブに飛び付いた。

「もう・・・してたりして」

若干、腰をねじってしまった。
そのせいか、ゆるい痛みが走る。

「まったくもぉ・・・相変わらずというか・・・」

友人の呆れ顔も、これで何度目だろうか?

「以後、気をつけます!」

ただ、守れるかどうかは分からない。

(No.769-2へ続く)

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