カテゴリー「(037)小説No.901~925」の50件の記事

[No.925-2]ロンサム・シーズンⅡ

No.925-2

俗に言う自然消滅だったと思う。
少しずつ距離が遠のいていった。

「そうなのかな?」
「何だよ・・・違うのか?」

別にケンカをしたわけでもない。
それに少なくとも僕は彼女のことを嫌いになっていない。

「私だってあなたのことを嫌いになったわけじゃない」

気付けば、1ヵ月が過ぎ、さらに半年が過ぎていった。
その内、これに慣れてしまった自分が居た。

「言い方がよくないけど・・・」
「何だか、肩の荷が下りたというか・・・」

言いようのない不思議な安堵感がそこにあった。

「そう・・・」
「・・・ごめん」

とは言え、結局別れた理由にはなっていない。

「言っとくけど、別によりを戻そうというわけじゃないのよ」
「・・・分かってるさ」

もちろん共通の友達もそれをも見越した計らいだ。

「でもね・・・」

そう言ったまま、しばらく考え込んでしまった。

「・・・何だよ、はっきり言っていいぞ」
「曲が始まってから53秒後が私の言いたかったこと!」

何の曲だよ?

(No.925完)
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[No.925-1]ロンサム・シーズンⅡ

No.925-1      [No.428-1]ロンサム・シーズン

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ひ、久しぶり・・・」
「こちらこそ!」

こういう場面になると、女性の方が堂々としている。

「何年振りかしら?」
「あまり、変わってないね!」

たじろぐ僕を尻目に、話をどんどん先に進めてくる。

「そ、そうかな・・・」
「そうよ!」

学生時代に付き合っていた彼女と会うことになった。
ただ、二人きりではない。

「会ってくれないと思ってたよ」
「それはこっちのセリフだよ」

共通の友達を通じて、この場が設けられた。
あまり乗り気じゃなかったのが、正直な気持ちだ。

「私たち、どうして別れたんだっけ?」
「・・・それは・・・」

ある意味、返答に困る。
口にしたくない理由があるからではない。

「僕の・・・せい?」

恐る恐る聞いてみた。
お互い明確な“別れ”を口にしたことはなかったはずだ。

「・・・どうだろう?」

彼女も考え始めてしまった。

(No.925-2へ続く)

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[No.924-2]さっきのグー

No.924-2

「今回はね・・・すごいよ!」
「・・・な、なにが・・・」

今回はいつものパターンとは違う。

「セミのように息も絶え絶えじゃなくて・・・」
「元気そのもの!」

誤って、建物の中に迷い込んできたらしい。
でも、いつも不思議に思うことがある。

「不思議?」
「うん、私、7階に住んでるから・・・」

飛ぶことができる彼らには、7階もわけないとは思う。
けど、ここまで飛んでくる必要もないだろう。

「壁を登ってきたとも思えないし」
「・・・それより、話の続きは?」

随分と脱線してしまった。

「ごめん、ごめん!」

バッタは元気そのものだった。
でも、ここに居たらそう長くは生きられない。

「手をグーにして、その中に入ってもらったの」

その名残が、さっきのグーだ。

「元気だから、くすぐったくて」
「・・・私には無理!」

そのまま一階に降りて、適当な草むらで手放した。
力強いキックで草むらに消えたバッタの感触が手に残っている。
S924
(No.924完)
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[No.924-1]さっきのグー

No.924-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・あれ?)

今年は・・・いつもの年と違うかもしれない。

「やっと、出会いがあったわよ」

出勤するなり、仲の良い同僚に報告した。

「そう・・・やっぱり、セミ?」
「なんで、そうなるのよ!?」

とは言え、悲しいかな“モノ”は違うが方向性は当たっている。
私の顔にそう書いてあるのだろうか?

「ほら、その手?」
「・・・手がどうした・・・」

言い掛けて気付いた。
無意識のうちに、手が“グー”の形を作っている。

「また、“その中に”居たんでしょ?」
「・・・で、セミなわけ?」
「ううん・・・今回は違うの」

なぜかしら、エレベーターを待っていると彼らと出会う。

「今回はセミじゃなくて、バッタだったの」
「ちょっと、小さめの・・・」

薄いグレーのような茶色のような・・・そんなやつだ。
メジャーな緑のやつじゃない。

「バッタ!?」
「・・・ほんと、躊躇なくさわれるよね?」

それに関しては否定しない。
でも、だからと言って虫が好きなわけじゃない。

(No.924-2へ続く)

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[No.923-2]虹の彼方へ

No.923-2

「えーなんでぇ・・・」

もともと消えかかっていたとは言え、薄情すぎる。
自然現象に文句を言っても仕方ないけど・・・。

「ごめん・・・消えちゃった」
「別に謝ることでもないだろう?」

せっかくなので、彼と一緒に虹を見たかった。

「もう少し早く気付いてたら・・・」

スマホかざした時点でそうそうに気付くべきだった。

「相変わらず、真面目と言うか・・・」
「自然現象だろ?」
「・・・うん」

ただ、逃した魚は大きい。
例え話が適切ではないが、そんな気分だ。

「君は見たんだろ?」
「えっ・・・うん」

うっすらだった分、目には焼き付かなかった。
でも、心にはしっかりと焼き付いた。

「なら、それでいいよ」
「聞かせてくれよ、どんなだったか」

虹にどんなもへったくれもない。
けど、話したいことは山ほどあった。
S923
(No.923完)
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[No.923-1]虹の彼方へ

No.923-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
(・・・ん?)

向こうから来た人が、スマホを空にかざし始めた。

「・・・なに挙動不審な行動をしてるんだよ?」
「えっ!?わたし?」

何かあると思い、キョロキョロしたのが失敗だった。

「ほら、あの人・・・」

空になにかあるらしい。
あらためて、その方向に視線を向けた。

「・・・あっ!」

うっすらだが、虹が大きな弧を描いていた。
かなり久しぶりに見た気がする。

「ほら、見て見て!」
「いてて・・・何だよ、急に!?」

つい、彼の肩を強く、叩いてしまった。
興奮覚めやらぬうちに、彼にも見て欲しい。

「虹よ!に・・・じ・・・」

叫んでいる最中にも、さらに虹が薄くなっている。
消えるのも時間の問題といったところだ。

「虹?どこだよ」

彼が振り向いた時には、完全に消えてなくなっていた。

(No.923-2へ続く)

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[No.922-2]それと同じ

No.922-2

「事情を知ってるからじゃないの?」
「色々説明しなくても・・・」

確かにそれは言える。
父親に届けていることも、写真から想像できたくらいだ。

「想像?」
「ある日、バス停の時刻表の写真が送られてきて」

“日に数本しかない”とのメッセージが添えられていた。
最初は、その意味が分からずにいた。

「プチ旅行かな・・・と思ってた」

その内、バス停と料理の写真が同時に送られてくるようになった。

「・・・それで気付いたんだ」

彼女の実家の住所も何となく知っていたからだ。
最初の内は、料理自慢か、ノロケ話を想像していた。

「気付いて欲しかったのかもね?」

最近では週末に大量のLNEが届くのが恒例になった。

「でもさぁ、何で僕なんだろうね?」
「好意を持たれているとは思えないけど」

それが嬉しい勘違いであってほしい気持ちもある。

「まぁ、女子ってそんな所があるかもね」
「なんだよ、“そんな所”って」

全く・・・相談した意味がない。

「じゃぁ、聞くけど・・・」
「どうして、私に相談したの?」
S922
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[No.922-1]それと同じ

No.922-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「君ならどう思う?」

こんな話題は同姓に相談するのに限る。

「そうねぇ・・・」

とある女子社員から時々、LINEが入る。
特別親しい関係ではない。

「僕が人畜無害だから?」
「・・・そうねぇ」

二年間ほど、同じ職場で働いたことがあった。
同郷と言うこともあり、自然と会話するようになった。

「一度に大量の写真が来るときもあるんだよな」

特に多いのが料理の写真だ。

「別々に暮らす、父親へのお届けものだって」

母親が数年前に急死した。
そのため、週末だけ作って届けているらしい。

「いいことじゃない!」

だから、皿ではなく、小さなタッパに盛られている。
そこに“色気”は全く感じられない。

「だけどさ、それを僕に送るのは正解なの?」

もちろん、女友達に送るのもどうかと思う。
ある意味、返信し難いだろうし。

「そうねぇ・・・」

さすがに同姓でも考え込んでいる。
さっきから同じ返事を繰り返している。

(No.922-2へ続く)

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[No.921-2]セミと私

No.921-2

「まだ・・・だよ」
「随分、答えに時間が掛かったわね?」

それに関しては私のせいじゃない。
最初から、そう言ってくれれば十数秒で終わる話だ。

「とにかく・・・それは残念ね」
「残念?」

確かに毎年、何かしらのネタを提供してくれる。
ただ、決して笑える話ではない。

「だって、そこそこいい話を持ってくるじゃん!」
「・・・あっ・・・そ、そうなんだ」

意外な答えだった。
間違いなく茶化されると思っていたからだ。

「セミの一生って、長いと思う?」
「それとも短いと思う?」

これまた唐突に哲学っぽいことを言い始めた。

「あなたは直接、命に触れたわけだから」
「それはそうだけど・・・」

ここ数年、今まさに命の火が消えそうなセミを手にしている。

「その前に、どうしたのよ?朝からマジメな話をして・・・」

いつもの同僚らしくない。

「・・・何か悩み事でも?」

もしかしたら遠回しに相談を持ち掛けられているのかもしれない。

「私も・・・デビューしちゃったみたい」
S921
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[No.921-1]セミと私

No.921-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今年はまだ?」

同僚が唐突に聞いてきた。

「・・・何よ、まだって?」

とは言え、あれこれ頭をよぎる。
心当たりがないわけじゃない。

「今時期、まだと言ったらアレしかないでしょ!?」
「あのね・・・クイズ形式はいいから・・・」

このまま進められたら面倒だ。
さっさと結論を求めた方が良いだろう。

「ユーモアが通じない人ね!」
「それって関係あるの!?」

いわゆる言い掛かりの典型的な例だ。
今風に言えば、逆ギレだ。

「アレと言えば、セミと私でしょ!」
「・・・あっ!私って言っても、あなたのことよ?」

出来ればこんな話は昼間にして欲しい。
朝は、心も体も本調子じゃない。

「で、そのセミと私がどうしたって・・・」
「・・・あっ」

言い終えて気付いた。
そう・・・今年はまだだった。

(No.921-2へ続く)

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