カテゴリー「(036)小説No.876~900」の24件の記事

[No.887-2]水泳の時間

No.887-2

「・・・それにしても、地獄だったわね」
「うん・・・言えてる」

泳げない者にとっては、これほど嫌な時間はない。
単に恥ずかしいだけじゃないからだ。

「何度か溺れかけたよ」
「私も」

もちろん、足が付くから大事には至らない。
けど、ジタバタしている時はそのことすら忘れている。

「大笑いされるし、苦しいし・・・」
「ほんと、トラウマになってる」

それもあってか、海やプールに泳ぎに行くことはない。
今でも泳げないのは変わらないからだ。

「泳げる子がうらやましかったな・・・」

だからと言って、親に助けを求めたりしなかった。
別に親が嫌いとか反抗とかしているわけじゃなかったのに。

「まぁ、子供心に何か感じてたのかもね」
「そうね・・・心配かけまいと」

結局、無様だった水泳の時間を気合でやり過ごした。

「お陰で、心の強さだけは“カナヅチ”級ね!」
S887
(No.887完)
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[No.887-1]水泳の時間

No.887-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「水泳の時間は超・・・嫌だったな」
「・・・私も」

思わぬところで、意気投合した。
泳げない者同士のキズの舐め合いにも似ている。

「泳げないことよりも・・・」
「“なんでみんな泳げるの”でしょ?」
「そう!それそれ!」

根深い部分も同じみたいだった。

「親とかに教えてもらってたんだろうね」
「・・・多分ね」

当時、世にスイミングスクールがなかったわけじゃない。
だから断言は出来ないが。

「そう言えば、“見学組”は居なかった?」
「あぁー!いたいた!」

その子たちが、泳げないのかどうかは不明だ。

「あれは絶対、仮病よね!?」

時には見学どころか、学校を休む時さえあった。
よほど、水泳が嫌いなんだろう。

「私たちも見学すれば良かったね」

そうしなかったのは、褒めてもらいたいところだ。

(No.887-2へ続く)

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[No.886-2]不思議なエレベーター

No.886-2

「うぅん・・・・」

友人がそうなるのも理解できる。

「断定は出来ないけど」

ボタンが押された雰囲気もない。
もし押したのなら、ランプが付いているはずだ。

「ただ、タイミング的に」

1階に到着したので、消えてしまった可能性もある。
それを私が見ていないだけかもしれない。

「そうに決まってるよ!」

出来れば私もそう思いたい。

「・・・何か変な現象とかは?」
「それは全くないよ」

何かを見たとか、気配を感じるとか・・・そんなことは全くない。
扉がタイミングよく開いたに過ぎない。

「別に嫌な気分にわるわけじゃないし」
「・・・ある意味、便利よ」

不思議な現象だけで、実害はなにもない。

「ただ・・振り返るとね」

私が仕事でクタクタになっている時にそんなことが起きる。

「そう言えば、お母さんも・・・」

私が帰宅すると、玄関の扉を開けてくれたっけ。
S886
(No.886完)
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[No.886-1]不思議なエレベーター

No.886-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「・・・」

今年はこれで何回目だろうか?
相変わらず人影は見えない。
recycle
「・・・ちょっと、やめてよ」
「でも、事実なんだもん!」

こう何度も続くと、色々と考えたくもなる。

「誰かが呼んだんでしょ?」
「私も最初はそう思ってた」

エレベーターに向かうと、タイミングよく扉が開く。
まるで私を待っていたかのように。

「ポイントは“開く”ことなんだよね」

人が近づいたら自動で開く機能は付いていない。
それは普段使っていれば分かる。

「普通、呼ぶから開くじゃない?」
「まぁ・・・そうね」

だから、最初は誰かが呼んだものだと思っていた。

「で、呼んだのはいいけど」
「何かの事情でその場を離れてしまった・・・とか」

そう考えるのが妥当だ。

「けどね、一度も人が立ち去る所を見たことがなくて」

エレベーターはマンションの入り口のすぐそばにある。
決して人目に付き難い場所にあるわけじゃない。

(No.886-2へ続く)

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[No.885-2]100円ライター

No.885-2

「まぁ、一種の“あるある”かもしれないね」
「そう言ってくれたら助かるよ」

そしていつも手元に残るのは100円ライターだ。

「それに・・・ほら、みてみなよ」
「残り少ないだろ?」

無くすどころか、毎回使い切っている。

「・・・ほんとだ」

言い方はおかしいが、大事に使っているわけじゃない。
どちらかと言えば扱いはかなり雑だ。

「でも無くならないんだよな・・・」
「そういうものじゃない?」

大事にするほど、無くしてしまう。
逆に、どうでもいいモノは無くならない。

「なんか、人生と言うか・・・」
「そうね、言いたいことは分かるよ」

たばこの話が別の話になってしまった。

「じゃぁ、私は“大事にされてた”のかしら?」

何ともイジワルな質問だ。
そっちがその気なら・・・。

「一度だけ、無くしたモノが見つかったことがあるよ」
「・・・たった今」
S885
(No.885完)
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[No.885-1]100円ライター

No.885-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「・・・たばこ止めてないんだ?」

最近、何かと風当たりが強いのは理解している。
それに金銭的にも楽ではない。

「それなら、止めればいいのに」
「そう簡単に行かないよ」

同窓会に来てまで、元カノの小言を聞く羽目になった。
相変わらずの性格だ。

「私がプレゼントしたライターはどうしたの?」
「えっ!?あ、あれは・・・」

まず、覚えていることに驚いた。
とっくに忘れているものだと思った。

「そう、驚かないでよ」
「無くした?それとも・・・捨てた?」

後者の言葉が、やや強めだったのが気になる。

「ごめん、無くした・・・」

この場を逃れるための嘘ではない。
本当に無くした。

「そう・・・」
「で、でも君からもらったモノだけじゃなくて・・・」

なぜか、100円ライター以外のモノを無くしてしまう。
逆に言えば、100円ライターは無くさない。

「自分で買ったライターも・・・」

気付けば無くなっている。
置き忘れたのかどうかさえ分からない。

(No.885-2へ続く)

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[No.884-2]なげる

No.884-2

「もしかして、“なげる”ですか・・・」
「もしかしなくても、そうよ」

意味不明な方言ではない分、余計に混乱していた。
それ自体は、一般的な言葉だからだ。

「ほら、この前・・・」

ダンボール箱を彼女に捨てるようお願いしたことがあった。
その時・・・

「元気良く、“なげてきます!”って言ったじゃない?」
「ストレスでも溜まってるのかと思ったよ」

放り投げて、それでスッキリするのなら・・・と思ったくらいだ。

「す、すみません・・・全然気付かなくて」
「北海道弁?」

彼女が小さくうなづいた。

「ごめんね、指摘しちゃって」

彼女も営業の職に付く。
取引先に勘違いさせるわけにも行かない。

「本当に“投げられたら”大変ですよね」
「そういうこと」

標準語と方言を使い分けてこそ社会人だ。

「あの・・・」
「なに?」

彼女が恐る恐る質問してきた。

「先輩の・・・ってどういう意味でしょうか?」
S884
(No.884完)
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[No.884-1]なげる

No.884-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「これ、どうすればいい?」
「なげておいて頂ければ」

以前から、疑問に思っていた。
彼女には悪いが、ちょっと試させてもらった。

「どこに?」
「・・・そこのゴミ箱でいいですけど」

どうやら、ゴミ箱に入れればいいようだ。

「じゃ、捨てておくね」
「お願いします」

彼女は今年の新人だ。
長い研修期間を経て、うちの部署に配属されてきた。

「やっぱりね!」

思わず、口に出てしまった。
やはり、思っていた通りだった。

「えっ!?な、なにがですか・・・」

彼女がキョトンとした顔をする。

「ごめん、ごめん」
「前から疑問に思っててさぁ・・・」

彼女に事情を話した。

「さっきも、“なげる”って言ってたじゃない?」
「あっ・・・はい」

当の本人は何のことだか分かっていないだろう。
方言とはそんなものだ。

「通じないわよ、それ」

今度はハッとした顔をした。

(No.884-2へ続く)

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[No.883-2]人待ち顔の猫

No.883-2

「もしかして、人待ちなのかな?」

ちゃっかり、エサにありつけているのかもしれない。
なにせ、学校の近くだ。

「誰かエサでもあげてるんじゃないのかな~」
「私もそう思うんだけど」

ただ、ひとつ引っ掛かることがある。
私の登校時間は結構遅い方だ。

「どういうこと?」
「だって、ほとんどの生徒は登校済でしょ?」

もし、私より前に登校する人がエサをあげているとしたら・・・
もう待つ必要はないはずだ。

「見事な推理ね」
「だから、私より遅い人・・・ってことね」

もちろん、学生じゃない可能性もある。
けど、あの時間、あの場所ならそう考えるのが妥当だ。

「そう思わない?」

あんな薄汚い猫にかかわるくらいだ。
よほど猫好きで遅刻寸前に教室飛び込んでくるやつだろう。

「どう私の推理は?」
「・・・あれ?・・・そう言えば・・・」
S883
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[No.883-1]人待ち顔の猫

No.883-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
(仲間でも待ってるのかな?)

気になりつつも、かまっている時間はない。
recycle
「知ってるよ」

学校の近くに、半年前から一匹の猫が棲みついている。
そいつには悪いが、かなり薄汚い。

「何かあったの?」
「ううん、逆に何もないんだけど・・・」

ここ数日、毎日のように顔を合わせるようになった。

「なんか、落ち着かないんだよね」
「あんたが?」
「そう!・・・って、違うわよ!」

一応、ノリツッコミで返した。
落ち着かないのはその猫の方だ。

「な~んだ」
「あのね・・・」

何かを待っているのだろうか?
私には、キョロキョロしているように見える。

「へぇ~そうなんだ」
「仲間でも待ってるのかな?」

とは言え、他の野良猫を見掛けたことがない。

(No.883-2へ続く)

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