カテゴリー「(036)小説No.876~900」の46件の記事

[No.898-2]見送る背中

No.898-2

「じゃぁ、俺も行くわ」

仕事の都合で今日から遠距離恋愛が始まる。

「見送りはいいから」
「・・・うん、分かった」

どこで見送られようが、場所は関係ない。
一秒でも一緒に・・・という時期は良い意味で過ぎている。

「向こうに着いたら連絡するよ」
「気をつけてね」

シチュエーションは違うが見送られるとはこういうことだ。
さっきの母親と同じように彼女もきっと・・・。

(もう少し歩いてから振り向いてみるか・・)

期待を膨らませて、さりげなく振り返る。

「・・・え・・・えぇ~!!」

そこに彼女の姿はなかった。
悲しいけど現実はこうなのかもしれない。

「いってらっしゃいぃ!!」

どこからともなく彼女の声が聞こえてきた。

「ここよ、ここ!」

マンションの廊下から彼女が手を振っている。

「ここからなら、遠くまで見送れるでしょ!」
S898
(No.898完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.898-1]見送る背中

No.898-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「いい光景ね」
「・・・そうだな」

とある母親が玄関先で、遠くを見つめている。
その視線の先は、多分、歩いている女の子だろう。

「中学生かしら?」
「そんな感じだね」

女の子は振り向きもせず、前を向いて歩いている。
母親のことは気付いているのだろうか・・・。

「難しい年頃だからね」
「逆に“ウザイ”って感じてるかも」

何となく自分の経験を重ねているように聞こえる。

「君もそうだった?」
「・・・どうだろうね」

女の子が曲がり角を曲がる。
それを見届けてから、母親は家に入っていった。

「いいお母さんね」

いつかその女の子も気付くだろう・・・。
そう言いたげな表情が印象的だ。

「あぁ・・・」

見守られているとは、まさにこんなことを言うのだろう。

「ふぅ~」

なぜだか、一度深呼吸したくなった。
今朝はやけに冷え込む・・・吐く息がいつにも増して白い。

(No.898-2へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.897-2]とぼけた顔して

No.897-2

「じゃぁ、どんなところ?」

やんわりと詰め寄ってくる。
こうなるともう話題を変えられない。

「そ、そうだなぁ・・・」

ただ幸いなことに、好きなところは山ほどある。
問題は何を選ぶかだ。

「早く言いなさいよ」

まず、気が強いところが挙げられる。
そのせいか良くも悪くも毎日にぎやかだ。

「そう、せかすなよ」

そんな性格でも、ユーモアに溢れている。
そこが一番好きなところかもしれない。

「じゃあ、言うけど・・・」

ちょっと古めだけど、有名な歌で試してみよう。

「とぼけた顔してババンバ~ン!」
「バンバンババババ・・・」

思った通り、僕の“フリ”に乗っかってきた。

「なによ!急に?」
「言ったよ、好きなところ」

僕が歌うと続けて歌い始める・・・そんなノリが好きだ。

「ケンカ売ってる?“とぼけた顔”が好きだなんて!」
S897
(No.897完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.897-1]とぼけた顔して

No.897-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「付き合って、もう5年になるわね」
「そ、そうだな・・・」

いずれ来るかとは思っていたが、今・・・来たようだ。
覚悟を決めよう。

「僕もそろそろかな・・・と」
「バカね・・・違うわよ」

どうやら、僕が考えているような話ではないらしい。

「てっきり、アノ話しかと・・・」
「その気なら、してもいいけど?」

いじわるく返してきた。

「勘弁してくれよ」
「まぁ、いいわ、今回は」

勘違いから思わぬ展開に発展しそうになった。
でも、いずれキチンと話したいとは思っている。

「ねぇ、私のどんなところが好き?」
「なんだよ・・・急に」

やましいことは何もないが、心の準備も必要だ。
男にとってこの手の質問は。

「何か問題でも?」
「そうじゃないけど・・・」

果たして、彼女が望んでいる答えになるのだろうか?
答えによっては面倒なことになる。

(No.897-2へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.896-2]グライコ

No.896-2

「・・・何よ?」
「鳩が豆鉄砲・・・みたいな顔をして」

(今、“グライコ”の話をしているよな?)

自分で自分に問い掛けてみた。

「い、いや・・・今さぁ・・・」
「グライコの話、してるよな?」

今度は口に出して確認してみた。

「最初から、そうでしょ?」
「・・・そ、そうだな」

何がなんだか分からなくなってきた。

「父親から譲り受けて」
「インテリアとして使ってたわ」

レトロ好きな彼女らしい。
必要以上の重厚感がいかにも“昔”だ。

「グライコ、知ってたんだ・・・」
「知らないと思ってたんでしょ?」

僕の思い込みが、話をややこしくしてしまった。

「で、そのグライコがなに?」
「・・・何だっけ・・・な」
S896
(No.896完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.896-1]グライコ

No.896-1

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「なぁ、グライコって知ってる?」
「もちろん!」

彼女が元気よく答えた。
けど・・・多分、勘違いしているだろう。

「・・・どう思う?」

どうとでもとれる質問で確認してみた。

「どう・・・って、私は好きよ」
「あなたは?」

やはりそうだ。
ファストフードのアレと勘違いしている。

「僕も好きだよ」

今の時代、音楽はスマホで聴く時代だ。
ミニコンポどころかラジカセすら見かけない。

「同じでよかった!」

僕らの時代、“グライコ”は憧れの的だった。
特にバーが表示されるタイプはワクワクした。

「懐かしいね!」
「・・・懐かしい?」

確かアレは毎冬、販売していたと思うが・・・。

(No.896-2へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.895-2]消えた四千円

No.895-2

しばらく無言のまま手を合わせる。
神妙な時間がしばし流れた。

「・・・これでよし!・・・と」

彼女の充実した顔が微笑ましい。
自分のことのように考えてくれる。

「ちゃんとお願いした?」
「あっ、も、もちろん!」

もちろん、お願いした。
なんせ、今回は四千円もつぎ込んだのだから。

「そう・・・それならいいけど」

ただ、願い事は前と同じだ。

「かなうといいな」

昇進がどうでもいいわけじゃない。
けど、彼女はそれ以上の存在だ。

「確認するけど・・・」
「私の幸せなんて、願ってないよね?」

「えっ・・・い、いやぁ・・・そ、それは・・・」

慌てふためく僕を見て、察したらしい。

「もぉ!うれしいけど・・・」
「もう一回、入れるわよ」

財布の中から、また二千円が消えた。
S895
(No.895完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.895-1]消えた四千円

No.895-1     [No.756-1]出世の神様

登場人物
shadow男性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、早くぅ!」
「急いだって何も変わらないだろ?」

約二年ぶりにここに来た。

「こういうことは早いほうがいいの!」
「ほら、早く早く!」

前と同じように、僕の財布からお金を抜き取った。

「二千円!?」
「もちろん、私も出すわよ」

今回は額を二倍にした。

「少しは上乗せしておかないとね!」
「神様はお金じゃ動かないだろ?」

昇進試験に落ちたわけじゃない。
けど、色々と制限があり、一旦、その道が閉ざされていた。

「でも、これくらいは必要よ」

まさか、もう一度道が開かれるとは思っていなかった。
ある意味、お賽銭の効果だったのかもしれない。

「じゃ、入れるわね」

強引に見えても、僕以上に僕のことを心配している。
欲ではなく、純粋に僕を応援してくれている。

「あぁ、いいよ」

硬貨ではない分、いつもの軽快な音は聞こえなかった。

(No.895-2へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.894-2]雲の切れ間

No.894-2

「向こうで何かあった?」
「・・・だから、帰省したんでしょ?」

多分、そうだと思う。
他人事のような言い方になるが・・・。

「そうね・・・たぶん」

ただ、これと言った悩みや不安が見当たらない。
東京での生活も、そこそこ満喫できている。

「それが悩みなのかもしれないよ」
「・・・贅沢な悩み」

そうなのかもしれない。
なにもかも普通過ぎて、逆に充実感や達成感がない。

「思い切って、告白でもしてみたら?」
「好きな人くらいは居るんでしょ?」

確かに、居ないことはない。

「当たって砕けてみたら?」
「玉砕が前提!?」

けど、それもいいかもしれない。
もしかしたら、何かが変わる可能性がある。

「ほら・・・空だって」

雲の切れ間から、一筋の光が差し込んできた。

「“今がチャンス!”って言ってるみたいだよ」
S894
(No.894完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.894-1]雲の切れ間

No.894-1

登場人物
virgo女性=牽引役  virgo女性=相手
-----------------------------
天気と気持ちは同期しやすい。
けど、それは自分に対する言い訳だ。

「今日もどんよりしてるね・・・」
「いつものことでしょ?」

年末年始を北海道で過ごした。
帰省も兼ねて、古くからの友人を訪ねた。

「そうだっけ?」
「もぉ!すっかり、東京人なんだから」

年末年始の帰省は10年振りだ。
もちろん冬の北海道も。

「何だか気分も晴れないね」

特別、悩みごとがあるわけじゃない。
恋愛だって、悩みと言えば“相手がいない”くらいだ。

「天気に八つ当たり?」
「ち、違うわよ!」

でも、このどんよりした気持ちは、天気そのものだ。
加えて言えば、今にも泣き出しそうな空だ。

「でも、雨じゃなくて雪だけどね」

友人がチャチャを入れてくる。

「分かってるわよ!」

少しだけイラ付いている私が居る。

(No.894-2へ続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

(000)お知らせ | (001)小説No.01~25 | (002)小説No.26~50 | (003)小説No.51~75 | (004)小説No.76~100 | (005)小説No.101~125 | (006)小説No.126~150 | (007)小説No.151~175 | (008)小説No.176~200 | (009)小説No.201~225 | (010)小説No.226~250 | (011)小説No.251~275 | (012)小説No.276~300 | (013)小説No.301~325 | (014)小説No.326~350 | (015)小説No.351~375 | (016)小説No.376~400 | (017)小説No.401~425 | (018)小説No.426~450 | (019)小説No.451~475 | (020)小説No.476~500 | (021)小説No.501~525 | (022)小説No.526~550 | (023)小説No.551~575 | (024)小説No.576~600 | (025)小説No.601~625 | (026)小説No.626~650 | (027)小説No.651~675 | (028)小説No.676~700 | (029)小説No.701~725 | (030)小説No.726~750 | (031)小説No.751~775 | (032)小説No.776~800 | (033)小説No.801~825 | (034)小説No.826~850 | (035)小説No.851~875 | (036)小説No.876~900 | (100)通信No.001~025 | (101)通信No.026~050 | (102)通信No.051~075 | (103)通信No.076~100 | (104)通信No.101~125 | (105)通信No.126~150 | (106)通信No.151~175 | (107)通信No.176~200 | (108)通信No.201~225 | (109)通信No.226~250 | (110)通信No.251~275 | (111)通信No.276~300 | (112)通信No.301~325 | (113)通信No.326~350 | (114)通信No.351~375 | (115)通信No.376~400 | (200)VホNo.001~025 | (S01)せいじゅうろう