カテゴリー「(007)小説No.151~175」の50件の記事

[No.175-2]ポストの前で

No.175-2

「それで、どうしたのよ?」

近くの学校に事情を話して、らしき女の子を探してもらった。
でも、該当する子は居なかった。

「100%、その学校とも断言できないしね」

拾得物として警察に預けようとも考えた。
ただ、預けた所で落とし主が現れることはない。

「だから・・・どうしていいか困ってる」
「開けてみたら?」
「ちょっと!それはできないよ」

確かに中を見れば、手がかりを見つけられる可能性はある。
そうしようかと、考えなかったわけでもない。

「その子が自分で入れても相手には届かないよ」

私の手に渡ったことは幸か不幸か・・・決断した。

それから数日後、奇跡的にその手紙の落ち着き先が判明した。
手紙は入院中の友達に宛てて書かれたものだった。
運良く中に病院名が書いてあった。
どうやら例の女の子は同じ病室に居た子らしい。

「直接言えば良かったのにね」
「言えないことだってあるでしょ?」
「・・・それで、手紙に託したわけか・・・」

本当は手渡しするつもりでいたのだろう。

「それはそれで、恥ずかしかった・・・ということね」

そんなものだから、ついそのまま出してしまったようだった。

(No.175完)

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[No.175-1]ポストの前で

No.175-1

通勤路に郵便ポストがひとつ立っている。
何の変哲もない、どこにでもある赤いポストだ。
そのポストの前で、ちょっとした事件に巻き込まれた。
A0830_000324
「事件・・・?尋常じゃないわね」
「ゴメン!大袈裟すぎた・・・ハプニングよ」

そのポストは小学校のすぐ近くにある。
そのためか、度々手紙を入れようとしている小学生達に出逢う。

「それ、低学年の子でしょ?」

事件・・・言葉の影響だろうか、友人が妙な推理を始めた。
しかし、ハズレていないところが、ちょっとくやしい。

「まだ、携帯は早いだろうし」
「で、事件・・・じゃなくて、そのハプニングってなに?」

一人の女の子が手紙を入れようとしていた。
けど、小さい彼女にとってはそれは難関だった。

「それで、代わりに入れてあげることにしたの」

手紙を受け取ると、その子はお礼を言って去って行った。

「いい話じゃない・・・どこにハプニングが?」
「何気なく手紙を見たらね・・・」
「うんうん」

友人が明らかに食い付いている。

「受取り人の名前以外、何も書かれてないの」
「それじゃ、届かないじゃん!」

それどころか、差出人に戻ることもない。
結局、ポストに入れられず、途方に暮れた。

(No.175-2へ続く)

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[No.174-2]心地よい

No.174-2

「前の続きなんだけどさ」

好き嫌いの話をした時に、言い忘れたことがあった。

「カルピスは好きだよ」

マヨネーズの原理で行けば、牛乳を連想させるには十分だ。
前とは矛盾する話をあえてした。

「でも、豆乳は苦手だな」
「どうして?」
「だって、牛乳を連想させるだろ?」

もはや矛盾のレベルではない。
単なるワガママにも近いと、自分でも感じる。

「それ、分かる」

嘘の話ではないが、かなり大暴投の話をしたつもりだ。
それを見事にキャッチした。
そんなものだから、馬が合うというより、もっと違う感じを受ける。
驚きもあるが、妙にしっくりくる。

それにしっかり、自分の話もしてくれる。
それがあるから、相槌のために適当に発言したとは思えない。

「そう言えば、干しぶどうもダメだな」
「それ、分かる・・・味じゃなくて、歯ごたえでしょ?」

結衣(ゆい)の言う通り“クチュ”とする、あの食感が苦手だ。

「こんなことばかり言ってる、俺って変かな?」
「そ・れ・も、分かってるよ」

私も同じだから・・・そんな表情が何とも心地よい。

(No.174完)

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[No.174-1]心地よい

No.174-1

「それ、分かる」

結衣(ゆい)から、度々発せられる言葉だ。
別に口癖を指摘したいわけではない

「私もね・・・・」

僕の話に同調してくれて、妙に気が合う部分が多い。
ただ、俗に言う“馬が合う”とはちょっと違う気がする。
それに、単に会話上手なわけでもない。

ある時、食べ物の好き嫌いの話をしたことがあった。

「牛乳とかチーズとか、とにかく乳製品がダメなんだ」
「じゃあ、ピザとかも?」

もちろん、“チーズべっとり”のピザは論外だ。
それに、そのイメ-ジは困った問題を引き起こす。

「チーズ抜きのピザがあってね」
「それなら、大丈夫でしょ?」

結衣が割り込むように、すかさず応えた。

「ピザの上にマヨネーズが掛けてあって・・・」
「それもダメなわけ?」

もちろんマヨネーズは嫌いじゃない、むしろ好きだ。
けど、生地と共に焼かれると、何となくチーズっぽくなる。
そう思い込むと、もはやそれはチーズ以外の何物でもない。

「変だとは思うけど、そうなんだよね」
「それ、分かる」
「私もね、同じような食べ物があるの」

最初は僕に気を遣ってくれているのかとも思った。
話を合わせてくれているのだと・・・。

(No.174-2へ続く)

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[No.173-2]イバラの道

No.173-2

尚子に話したのは、自分でもまだ迷っている証拠だ。
そうでなければ、もう突っ走っている。

「・・・少し向き合ってみる」

向き合うのは誰でもない・・・自分自身にだ。
彼に対する今の気持ちに、嘘はない。
ただ、そんな時こそ、冷静になる必要もある。

「そうだね、気持ち全てが嘘だってこともある」

嘘がないのではなく、全てが嘘だとしたら・・・。
私が私自身に騙されているとしたら・・・。

「ねぇ、いばらの道、進んだらどうなるのかな」
「経験がないから、分からないけど・・・」

前置きをしながらも、自分の想いを語ってくれた。
いばらの道・・・。
その道を行けば“勇者”と褒め称えられる。
けど、陰では“愚か者”と失笑をかう。

「あーあぁ・・・八方ふさがり!って感じだよ」

投げやりな気持ちではない。
行き場を失い、その場にしゃがみ込んでしまったような気分だ。

「あっ!痛い・・・」

どうやら、座り込んだ道にも、多少なりともトゲがあったようだ。
人生と言う道はどの道も少なからず、いばらの道なんだ。

(No.173完)

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[No.173-1]イバラの道

No.173-1

目の前に一本の道が続いている。
分かれ道でもないのに、進むのをためらってしまう。
なぜなら、その道は“いばらの道”だからだ。

いばらの道・・・。
その道を行かなければ“賢者”と褒め称えられる。
けど、陰では“臆病者”と失笑をかう。

尚子に今の心の内を話した。

「どうするつもりなの?」
「わかんない・・・」
「それにしても、面倒な人を好きになったわね」

いばらの道を進めば、ただでは済まないことは承知だ。
その名の通り、体よりも心が激しく傷付く。
それに、それは私だけに留まることもないだろう。

「進んじゃいけないって、分かってるんだ」
「だったら、どうして・・・」

だからこそ・・・いばらの道なんだ。
なぜか、人はその道の前に立ってしまう。

いばらの道・・・。
その道を行けばどうなるのだろう・・・。

「本当に進む気じゃないよね?」

尚子が確認するかのように聞いてきた。

(No.173-2へ続く)

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[No.172-2]一瞬の未来

No.172-2

「撮るって・・・未来を?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃん」

どうやら冗談ではないらしい。

「いつ、どこでよ?」
「そうね・・・今、ここでもいいけど」

そう言うと、友人がカメラを構える。

「わぁ!いきなりやめてよ」
「冗談よ・・・そうだ!吉田が好きだってさ」
「エッ・・・」
「はい!いただきぃー」

私がたじろいだ表情を見せた時に、シャッターが押された。

「今の、なしだよぉー!」

多分、有り得ない顔をしていたと思う。
いや・・・多分じゃなく、間違いなくそうだ。

「未来どころか、最悪の決定的瞬間じゃない!」
「そう?じゃ、次の写真展に出させてもらうから」

友人は見事、優秀賞を取り、そこで初めてあの時の写真を見た。
予想通り、有り得ない顔をした私が写っていた。
写真でもハッキリ分かるほど、赤ら顔の私が・・・。

受賞のコメントには、一言こう書かれてあった。

『彼女の未来を撮りました』

カメラはその一瞬を撮るのではない。
目の前の出来事から、ほんの一瞬先の未来が撮れるんだ。

(No.172完)

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[No.172-1]一瞬の未来

No.172-1

『未来を“先撮り”するカメラ』

とあるデジカメに付けられたキャッチコピーだった。
先取りと先撮りをかけている。
いわゆる次世代の高性能カメラ・・・ということらしい。

「なんか、いい写真が撮れそうでしょ?」

何か嫌な予感をさせる、友人の弁だ。

「もちろん、腕前があってのことだけどね」
「・・・で、そのカメラがそうなんだ?」
「分かっちゃった?でさぁ・・・・」

分かるも何も、明らかにそのつもりで話題を振ってきている。
確かに、友人の腕前は認める。
ただ、学校の写真部という、ごく限られた範囲での話だ。

(未来を・・・か・・・)

キャッチコピーではなく、それが本当なら・・・つい空想してしまう。
カメラは今まさに、その一瞬を切り取る。
過去でもなく、未来でもない、その一瞬を。

「ねぇ・・・ちょっと聞いてる?」
「ん?なに・・・」
「頭の中、写真に撮ろうか?」

つい空想にふけってしまい、友人の自慢話が耳に入らなかった。

「本当に未来が撮れるカメラ、想像してたんでしょ?」
「えへへ・・・アタリ・・・」
「じゃ、撮ってあげる」
「えっ!」

何を言われたのか、しばらく理解できなかった。

(No.172-2へ続く)

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[No.171-2]りゅうとりゅうた

No.171-2

たまに実家に帰っても、都合良く、りゅうやりゅうたの姿はない。
爪とぎやトイレが置いあることで間接的に存在を感じる。
そして、しばらくすれば彼らは帰ってくる。

「あれ、どこからか見てるんじゃない?」

まさしく絶妙なタイミングであることが多かった。
それから、体をスリスリしてから、また出掛けて行く。

「一応、あいさつしてるつもりなのかな」

犬と違って、我が道を行くのが彼らだ。
そんな彼らでも、多少、私のことを気遣う所が面白い。

「ほら、けんかしてた時さぁ・・・」
「そうそう!私達が顔を出すと、急に強気になるよね」
「さっきまで『負けてたくせに!』って、言いたくなる」

ある時、実家に帰ると爪とぎやトイレが無くなっていた。
それがどう言う意味か聞くまでもなかった。
知らせがなかったことは特別、気にしてはいない。
気付けば、積み上げられた石が、もうひとつ増えていた。

「それにしても、以前のままにしてるんだ・・・」

テレビと冷蔵庫の上には、何ひとつ物が置かれていない。
整理整頓が行き届いている・・・とは違う。

「彼らのお気に入りの場所だったもんね」

それを意識して、今もそうしてるのだろう。

「なんで、そう言えるのよ?」
「ほら、ここも、あそこも・・・」

戸やドアを少しだけ開ける、そのクセが抜けていないからだ。

(No.171完)

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[No.171-1]りゅうとりゅうた

No.171-1

実家の庭の隅に、小さな石が積み上げられている。
ふたつ、ひっそりと・・・。

「ねぇ、もう何年になるかな・・・」
「どっちから数えて?」

私が高校生の時に、まず“りゅう”が家に来た。
足取りもおぼつかない小さな体に、大きな目が印象的だった。

「りゅうから数えたら、10年は経つのかな」

それから私が実家を離れた後に、“りゅうた”がやって来た。
初対面の頃には、すでに大きな体だった。
でも、どっちも茶トラ猫で、見た目もそっくりだった。

「違い・・・って、覚えてる?」

そっくりとは言え、違いがないわけではない。
りゅうたの方が尻尾がやや短く、白い部分が多い。

「気性はりゅうたの方が激しかったよね?」

訪問客にそれとなく近付き、多少本気で噛み付いていた。

「私にはそれ、無かったんだよね」

初対面の時は甘い声で、じゃれ付いてくるほどだった。
その仕草は、りゅうと見間違えるほどだった。

「何となく分かるんじゃないの?」
「身内なのか、そうじゃないのか、ってね」

確かにそうかもしれない。
事実、今でも特別猫が好きってわけじゃない。
りゅうもりゅうたも家族の一員・・・そんな感じだった。
A0016_000168
(No.171-2へ続く)

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